脳血管性認知症でも対応が可能な施設特集
脳血管性認知症の介護は再発予防と対症療法がカギ

脳の血管障害や、脳梗塞、脳出血が原因で脳の一部の部分に限定して障害が起こる脳血管性認知症は、障害が起こった場所によって症状が異なります。再発予防のためにも高血圧や糖尿病、心疾患などに充分注意した生活が必要であるとともに、病変部の治療やリハビリ指導によって症状の改善につながることも少なくありません。その点でも、介護施設での適切なケアや体調管理のもと生活することは、脳血管性認知症患者にとっておすすめと言えます。
脳血管性認知症の方の老人ホーム選びについて
脳血管性認知症は、脳梗塞や脳出血が原因で発症する認知症です。アルツハイマー型認知症のつぎに患者数が多いとされています。
脳梗塞や脳出血が起きると必ず脳血管性認知症になるわけではなく、障害をうけたエリアが小さいと、認知症を発症しないこともあります。脳卒中の後遺症として100%、認知症になるわけではありません。ただ大きな障害を受けると、後遺症が残る可能性が高くなります。そのため意識不明になるほど大きな脳卒中が起きたあとに、脳血管性認知症になる可能性はかなり高いと言えるのです。この病気は女性よりも男性の方が発症しやすいと言われており60歳をすぎたあたりから患者数が増えることから、60歳以上の男性はとくに注意すべきです。
脳血管性認知症を発症すると、障害が起きた部位によってさまざまな症状ができます。ただアルツハイマー型認知症とは違い、認知機能全般が低下するよりも「計算能力や理解力はあるが、急に泣きはじめたり喜んだりと、感情の起伏が激しい」「感情は安定しているが実行力が低下している」というように、特定の症状だけがあらわれる「まだら認知症」になりやすい傾向です。脳血管性認知症の患者が老人ホームに入所する際は、施設が「脳血管性認知症患者の受け入れ可能」であるかどうか、そしてすでに患者の受け入れ実績があり、介護・看護スタッフに認知症の知識が十分あるかどうか、トラブルが起きたときにすぐに対応できるかどうかを入所前にしっかり確認しましょう。
ただ、患者本人の症状によっては(暴力や暴言、徘徊)入居を断られる可能性もあります。
脳血管性認知症とは?その原因、症状について
人間の脳内には脳神経細胞が1,000億個以上あると言われています。脳神経細胞は軸索とよばれる電線のようなものを伸ばし、巨大な脳神経細胞のネットワークを形成しています。脳神経細胞に電気信号や化学信号が加わることで、言葉や物事を理解し、思考を言葉や文章で表現し、体を動かして日常生活をおくることができるのです。
ところが脳梗塞や脳出血が起きると、大事な脳神経細胞に酸素や栄養を送ることができなくなります。脳梗塞は脳の動脈がつまる病気です。血管のつまり方によって「脳血栓」「脳塞栓」の2種類にわけられます。動脈硬化などで血管自体が細くなっている部分に、少しずつ血の塊がたまっていくことで血流が完全にふさがれる状態を「脳血栓」とよびます。「脳塞栓」は主に心臓などでうまれた血栓が血流にのり脳へと流れ、脳の動脈をつまらせる状態をいいます。
脳出血は出血がおきる場所により「脳内出血」や「くも膜下出血」などに大別されています。この脳出血は60歳以上の高齢者に多くみられます。脳内の血管が破れて出血する病気で、原因は加齢、高血圧、動脈硬化、脂質異常症と言われています。生活習慣病が脳出血や脳梗塞と関連しているのです。
このような脳血管の病気になると、血管が損傷することで大事な脳神経細胞に酸素や栄養分を供給することができなくなり、脳神経細胞は死滅していきます。脳神経細胞がダメージを受けた部分により、さまざまな認知症の症状があらわれます。「記憶力にはあまり問題がないが、判断力に異常がみられる」「抑うつ症状やせん妄がみられるが、記憶力には問題がない」など、ある特定の症状だけがあらわれ、それ以外の面には大きな問題がない、というケース(まだら認知症)も見られます。
この脳血管性認知症の割合を見てみると、アルツハイマー型認知症の55%についで脳血管性認知症が19%と、脳血管性認知症はアルツハイマー型認知症のつぎに多いタイプとなっています。ただし、なかにはアルツハイマー型認知症と脳血管性認知症の混合型の患者もいるため、2つの病気の症状が同時にでる場合も。医師の診察を受け、医師の指示のもとで治療をおこないましょう。患者本人や家族が勝手に病気を判断しないことです。
アルツハイマー認知症(55%) | |
レビー小体型認知症(18%) | |
脳血管性認知症(19%) | |
その他の認知症(8%) |
脳血管性認知症の場合、比較的多くみられる症状としては、感情失禁やせん妄、抑うつ症状や、神経障害(嚥下障害、運動障害、尿失禁、便失禁)などがあげられます。先ほどもご説明しましたように、特定の症状が出るのも血管性認知症の特徴です。脳梗塞や脳出血をおこすとさらに症状が悪化するため、できるだけ脳血管の病気を再発させないために食事の内容を見直し、喫煙や過度の飲酒を避けるようにしましょう。ストレスや運動不足もリスクファクターとなるため、適度な運動やストレスの少ない暮らしを心がけましょう。
脳血管性認知症の方の老人ホームの受入れについて
脳血管性認知症の患者の受け入れが可能な老人ホームでは、認知症に関する知識をもった介護・看護スタッフがきちんと対応するため安心できますが、認知症患者の介護経験のない施設では、介護や看護のノウハウがないため断られるケースも。できるだけ脳血管性認知症患者の受け入れが可能な施設を選んで、入所できるかどうかの問いあわせをおこないましょう。施設を探す方法としては担当のケアマネージャーに探してもらう、ネットの老人ホーム情報を探して直接問い合わせる、などの方法があります。
脳血管型認知症の初期には、患者本人に病識があることが多く「これはおかしい」「なぜ以前できたことができないのだろう」と気持ちが落ちこむことも。「なぜできないのですか?」「もっとしっかりしてください」と叱ることで本人のプライドを傷つけ、さらに落ち込ませることになります。このような言動をする介護施設ではいけません。入所後の対応なども考え、介護・看護スタッフが認知症患者の気持ちやプライドを尊重してくれる老人ホームを選びましょう。脳血管性認知症の場合、病気の原因が脳卒中(脳梗塞や脳出血、くも膜下終結の総称)であることがほとんどです。そのため認知症の症状以外にも、嚥下障害や歩行障害、尿失禁などの神経障害があらわれていることも。これら神経障害にも適切に対応できる老人ホームでなければ、入所できません。
重介護者を介護するケースもあるため、入浴施設など老人ホームの設備がしっかりしていなければ入所できないことも。グループホームでは比較的症状の軽い認知症患者の受け入れは可能ですが、重介護者になると入所ができないことも。事前の話し合いが重要です。
脳血管性認知症の方の対応方法
脳血管性認知症患者は、まだら認知症を発症しやすく、感情の起伏が激しく患者によってはうつ症状がでる場合もあります。老人ホームではこれらの特徴を把握したうえで適切に対処します。
感情失禁はさっきまでニコニコ笑って機嫌がよくても、急に怒りをあわらにするなど感情変化が激しいことを言います。このような感情失禁が起きたときは冷静に対処する、怒りや喜びに共感して話しを聞く、またある程度距離をとるなどいくつかの対処法があります。患者が感情的になっているからといって、介護者も感情的に対応するとトラブルがさらに大きくなり、お互いに嫌な思いをしてしまいます。老人ホームの介護・看護スタッフは認知症患者の対応について教育を受けているため、患者の感情やプライドを傷つけるような言動は決してとりません。
うつ症状は自発性がなくなる状態です。物事に対して「頑張って取りくもう」という意欲が低下してしまうため、一日中ぼんやりと過ごす、寝たままの状態になることも。このうつ症状は認知症によるものなのか、それともうつ病や躁うつ病によるものなのか判断つかないこともあるため、医療機関で診断をくだしてもらわなければなりません。もし、うつ病や躁うつ病を発症している場合、薬によって治療が可能です。
脳血管性認知症の場合、これらの症状以外にも失語(言葉がでてこない)や神経障害(尿失禁や嚥下障害、運動障害)、着衣失行(季節に合わない洋服を着る、上下逆さまに服を着るなど)、箸の使い方がわからなくなるなどさまざまな症状がでるケースも。朝はしっかり自分で洋服を着用できても、午後になるとそれができなくなるなど症状が出たり消えたりするのも特徴です。患者の症状にあわせて柔軟に対応、介護をすることが基本となります。
要支援1とは?

要支援1とは、介護保険制度の要介護度の中でも最も軽度な状態です。
食事やトイレ、身支度をはじめ、日常生活の基本的なことは他者の助けを借りなくても一人でこなせます。
しかし、調理や掃除などの家事、服薬といった一部の生活動作については、一人でできない場合があります。
自立・要支援2との違い
日常生活の基本的な動作が自力ででき、身の回りのことも一人で行える状態を「自立」といいます。
一方、「自立」以外の人で介護や介助が必要な場合があります。
中でも、自分一人で日常生活を送ることができるものの、家事や外出など一部で支援が必要な状態が「要支援」です。
要支援2は、要支援1に比べて日常生活での支援を必要とする範囲が広がります。
家事や身の回りのことを行うとき、基本的に見守りや手助けが必要です。また、立ち上がりや歩行時には支えを必要とします。

要支援1で在宅介護はできる?
要支援1の人を家族が自宅で介護することは十分に可能です。
要介護度認定のうち最も軽度な要支援1は、一人暮らしができる状態でもあるため、家族による在宅介護で暮らしているケースはよく見られます。
本人自身の力で生活の多くをこなせる状態なので、日常生活で家族による見守りや手助けが必要な場面はそれほど多くありません。
しかし、家族の介護負担を軽くするためにも、必要に応じてデイサービスや訪問介護などの介護サービスを利用すると良いでしょう。
現在は特に不自由なく自宅で暮らしていても、心身機能の衰えや病気や怪我などをきっかけに、要介護度が高くなる可能性も考えられます。
したがって、要支援1は在宅での介護が十分に可能な状態ですが、「一人の時間帯が長く、体調の急変時が心配」「家族が遠方で暮らしていて、将来が不安」といった声は少なくありません。
安心して暮らすために、老人ホームに入居するのもおすすめです。
要支援1で入居できる老人ホームは?

元気なうちに老人ホームへの入居を早めに考えておきたい場合、要支援1でも老人ホームによっては入居が可能です。
ただし、老人ホームによっては要介護以上の方でないと入居ができない場合もあるため、老人ホームごとに調べる必要があります。
要支援1でも入居ができる老人ホームは、「サ高住」や「ケアハウス」がオススメです。
サ高住
サービス付き高齢者向け住宅、略してサ高住(さこうじゅう)は、民間が運営するシニア向けの賃貸マンションです。
単身の高齢者や夫婦が安心して暮らせる環境が整備されています。
サ高住の大きな特徴は、バリアフリー設計とシニアに配慮したサービスです。
居室にはトイレや浴室、キッチンが用意されていて、移動しやすいように段差がなく手すりを設置しています。
また、廊下の幅も広いので、入居者がゆったり行き交うことが可能です。また、館内にはスタッフが常駐していて、見守りサービスや生活相談を受け付けています。
緊急時対応もしてくれるので、体調の急変時にも安心です。
また、介護や介助が必要な方は、外部の介護事業者と契約しましょう。
介護保険サービスの訪問介護やデイサービスなどを必要に応じて利用できます。
暮らしやすい生活環境とスタッフの行き届いたサポートによって、自宅で暮らしているような感覚で生活が送れます。
サ高住は実際に、自立の方をはじめ要支援や要介護1・2といった比較的要介護度の低い方が多く暮らしている老人ホームです。
ケアハウス
ケアハウスは、家族との同居が難しい高齢者が自治体の助成を受けて利用するのが特徴です。
要支援1で一人暮らしに不安のある高齢者には、「一般型(自立型)」と呼ばれるタイプがおすすめです。
一般型のポイントは、「自立状態であること」「介護が必要になったときは外部の介護事業者と契約して介護サービスが受けられること」の2つです。
主に訪問介護やデイサービスなどの介護保険サービスを利用しながら生活をします。
ケアハウスのメリットは、初期費用が安く抑えられることです。
一般型の場合、保証金として入居時に30万円程度がかかります。また、月額費用の目安は7万〜13万円程度です。なかには、初期費用のないケースもあるなど、初期費用にまとまった金額がかかる民間の有料老人ホームと比較して経済的な負担が軽く済みます。