観光資源を活かした高級な老人ホームもちらほら

山梨県は、日本を代表する山地です。
南に富士山、西に南アルプス、北に八ヶ岳、東に奥秩父山地…と標高が2000mを超える山に囲まれているため、面積は全国で32位ですが、その8割が山地のために可住面積は全国45位となっています。
そのためか、老人ホームの数も多くなく、人口10万人あたり44.2となっており、指標値の48.6を下回っているというのが現状。
今後、新たな老人ホームの開設に期待がかかっています。
人口自体もそれほど多くなく、総人口は2023年現在で約81万人となっています。
そのうち65歳以上の高齢者は約25万人で、高齢化率は31.7%。
これは全国平均とまったく同じ数字で、2035年に見込まれている高齢化率の35.3%も平均的。
いわば、日本の高齢化の指標とも言える県で、それだけに県としても早くから対策に動いています。
1985年3月、全国先駆けて「山梨県高齢化社会モデル」を策定し、2003年からは「健康長寿やまなしプラン」のもとに、地域リハビリテーションの支援体制を強化しています。
高齢者にとっては、健康で、安心して過ごせる体制が充実していると言えるでしょう。
老人ホームの種類に目を向けると、介護付き有料老人ホームや住宅型有料老人ホーム、特別養護老人ホームなど形態はさまざまですが、グループホームや高齢者住宅が多いことも特徴的です。
その背景には、そもそも山梨県には海がなく、険しい山々に囲まれているが故に耕地面積が少なく、経済的に厳しい暮らしを送ってきたという過去があります。
県民は人と人とのつながりを大事にしながら、お互いに助けあって生きてきたという県民性が由来しているのでしょう。
費用面は平均的で、入居一時金0~数十万円、月額利用料10~15万円ほどという老人ホームが多いようです。
一方で、多くの温泉地を抱える山梨県ですから、そうした観光資源も活かした高級な老人ホームもあります。
入居一時金が数百万円や1,000万円オーバー、月額利用料20万円以上といったところでは、医療・介護体制だけでなく、地元の食材を使った美味しい食事、日々の楽しいイベント開催など、充実したサービスが提供されています。
とはいえ、数はそれほど多くなく、空き室も多くはないので、興味のある人は早めに資料請求や現地見学など行動に移した方が良いでしょう。
総人口が減少する一方で増え続ける高齢者数
山梨県の高齢者人口は、1998年時点では16万3,838人でしたが、2000年に17万2,103人、2005年に19万1,308人、2010年に21万1,888人、2015年に23万3,649人と年々増加してきました。
高齢者人口を前期高齢者(65~74歳)と後期高齢者(75歳以上)に分けてその推移を見ると、当初は前期高齢者人口の方が割合としては多かったのですが、2006年を境に逆転し、その後も後期高齢者人口の割合がどんどん増加しつつあります。
団塊の世代が後期高齢者となる2025年にかけて、さらにその割合が急増していくと見られています。
高齢化率の推移を見ると、2000年時点では15.5%、2005年では21.9%、2010年では24.6%、2015年で28.4%、2023年に31.7%と推移しています。

国立社会保障・人口問題研究所「日本の地域別将来推計人口(令和5(2023)年推計)」
同時期の全国平均は2000年17.4%、2005年20.2%、2010年23.0%、2015年26.7%、2023年29.1%ですから、山梨県は全国平均よりも0.7~1.7ポイントほど高い値で推移していることになります。
山梨県は2001年に総人口90万1,548人を記録して以降、年々人口が減少。
2010年には88万160人、2015年には85万1,205人、2023年に79万5,284人となっています。
総人口が減少する中で高齢者人口、特に後期高齢者人口数が増加しつつあり、高齢化率は今後も上昇していくと予想されます。
老健の利用数が際立つ山梨県の介護サービス利用数

山梨県の要介護認定者数の推移を見ると、2010年の2万8,661人から右肩上がりで増加し、2015年に3万4,283人、2020年に3万9,284人、2024年に4万1,165人と増加しています。
「健やか山梨21」で健康維持を啓発している

山梨県では県民の介護予防を促進すべく、「高齢者に対する健康づくりの啓発活動」と「市町村が取り組む介護予防事業をサポートする」の2つの方針のもと施策が進められています。
高齢者に対する健康づくりの啓発活動としては、
- 健康診査、歯科健康検診の受診率の向上のための周知活動。
- 県民の健康維持のために県が進めている「健やか山梨21」(がん検診の受診率の向上など、県民の体の健康状態に関わる具体的な数値目標を設定しその達成を目指す)の理念と目的を普及する。
- ロコモティブシンドロームを予防するための啓発活動、そのための運動を指導する指導者を養成する。
- 食生活(減塩メニュー、栄養バランスの取れた食事の摂取)、口腔ケアの大切さを高齢者に認知してもらうための啓発活動。
- 地域内で取り組めるウォーキング、体操等のスポーツ活動の推進を図る。
といったことに力が入れられています。
また、市町村が取り組む介護予防事業をサポートするという点では、以下の点に特徴があります。
- 地域内の介護予防に関わる関係団体、市町村が協議する場を提供し、介護予防への取り組み体制をより強化。
- 地域包括センターなど介護予防事業に関わる職員の能力向上のために研修を行う。
- 地域におけるサポートのニーズと地域内の社会資源との調整を行う「生活支援コーディネーター」の育成。
- 介護予防支援ソフトの「介護予防ナビゲータ」、及び高齢者が自分の現在の様子や医療及び介護関係者に自分の想いを伝えるために使う「私の暮らしのシート」を活用するよう市町村に働きかける。
- 優れた取り組みをしている市町村を分析し、その取り組みの普及を図る。
県として市町村に働きかけること高齢者の生活をサポートする地域包括ケアシステム
山梨県では、高齢者が長年住み続けてきた場所で引き続き安心、安全に生活できるように、「地域包括ケアシステム」の構築を目指しています。
山梨県の地域包括ケアの取り組みの特徴としては、病院や診療所などの「医療」と、各種介護事業所の「介護」の連携体制の整備に特に力を入れている、ということが挙げられます。

高齢者が病院、リハビリ病院、介護老人保健施設等を退院・退所して自宅に戻ったとき、在宅での生活を支えるのは介護サービスと在宅医療。
その際、介護サービスについて高齢者本人・家族に助言を行う「居宅介護支援事業所(ケアマネージャー)」と、在宅医療を支える「かかりつけ医」の連携が不可欠となります。
山梨県ではこれまで、県レベルにおける各種機関への働きかけ、調整を行い、医療分野と介護分野の連携に力を入れてきました。
しかし今後は、市町村レベルにおいても、地域内の医療関係の団体・組織(地区の医師会など)と地域内の介護関連の団体・組織とが協働関係を構築できるよう取り組みを進めています。
多職種間連携の調整の担い手を県レベルから市町村レベルへと移行させ、より地域の実情にあった医療分野と介護分野の連携を実現するというのが、県が目指す地域包括ケアのあり方です。
その際に中心的な役割を果たすのが、市町村内にある地域包括支援センター。
地域内の医療分野、介護分野の専門職が集まる「地域ケア会議」を開催し、地域内の医療分野と介護分野の連携を行います。
山梨県福祉サービス運営適正化委員会とは?

山梨県では、福祉サービスの利用者の苦情を受け付ける機関として「山梨県福祉サービス運営適正化委員会」が設置されています。
福祉、医療、法律の分野における専門家が委員となり、公正、中立な視点から、苦情に関わる問題の解決に当たってくれます。
福祉サービスに対する苦情は、まずはサービス提供者である事業者に訴え出るのが通例です。
ホームヘルパーに対する苦情であれば所属する訪問介護事業所、老人ホームの利用における苦情であれば、施設長や施設で用意している苦情相談窓口に訴え出ます。
福祉サービスを提供する事業者には、苦情に対応する担当者、責任者を設けることが義務付けられています。
また苦情に対して客観的な立場から対応するために、第三者委員を設置している事業者も多いです。
それらの窓口や苦情受付先に相談を申し出ることで解決を図ります。
それでも解決に至らない場合は、運営適正化委員会に相談を持ち掛けるという形になります。
ただ、事業者への相談をしてからでなければ利用できないということはなく、事業者に直接苦情を訴えるのは気が引けるという場合は、事業者への相談をせずに、いきなり運営適正化委員会に相談を持ち掛けることもできます。
事務局は山梨県の社会福祉協議会内にあります。
相談方法は電話、ファックス、手紙にて受け付けています。直接事務局に訪問する場合は、事前に電話で連絡が必要です。