統合失調症でも対応が可能な施設特集
高齢者の統合失調症ケアには周囲の理解が大切

一般的に20代から40代の若い世代で発症することが多い統合失調症は、老年期の場合症状や治療ケアにおいて若年層とは少し違った考え方が必要です。老年期統失調症の特徴として、妄想は主題が現実的・具体的であることが多く、人格の崩れなどもあまりみられません。治療においては、本人の感じる不安などの感情に寄り添って薬物療法に取り組むことが大切ですので、介護施設選びにおいても家族、本人と信頼関係を築けるかどうかがカギとなります。
統合失調症の方の老人ホーム選びについて
統合失調症の発症率は、男性や女性、地域差、民族などに一切関係なく1%と言われています。つまり100人に1人が統合失調症を発症することになります。この割合をみると、決して珍しい病気ではないことがお分かりいただけると思います。日本には100万人もの患者がいることになりますが、2011年・厚生労働省の発表による「統合失調症患者数」では患者数は約70万人となっています。統合失調症を発症しているにもかかわらず患者本人が気づいていない、また病気であることを隠したい方もいるようです。
悪性新生物(1526千人) | |
糖尿病(2700千人) | |
統合失調症、統合失調症型障害及び妄想性障害(713千人) | |
脳血管疾患(1235千人) | |
喘息(1045千人) |
この病気の好発年齢は思春期から30代まで。割合若い方が多く発症しています。若い人に多い病気ですが高齢者が絶対に発症しないとは言えないため、普段と違う言動(幻聴や幻視・妄想・暴力)がみられたときは、注意が必要です。統合失調症の原因は遺伝やストレス、本人の性格・気質、胎児期のウイルス感染や栄養不良などいくつか言われていますが、はっきりしたことはわかっていません。
統合失調症を発症すると、幻覚や幻聴、妄想、興奮、暴力などの症状がでる「陽性反応」や意欲低下、集中力低下、感情の消失などの「陰性症状」。そして状況に素早く、臨機応変に適応できない「認知機能障害」などの症状がでます。医療機関を受診し「統合失調症」の診断がくだされると治療薬が処方され、服薬することで病気の治療をおこないます。
統合失調症の高齢者が老人ホームへの入所を希望される場合、陽性症状(暴力や幻聴、幻覚)や陰性症状(意欲低下、感情の消失)がどの程度なのかを、あらかじめ施設側のスタッフに説明する必要があります。暴力や暴言が激しい場合は入所を断わられるケースも。その場合は服薬治療で、本人の症状がある程度落ちつくまで様子をみる方がよいでしょう。
老人ホームの選定では、統合失調患者の受け入れが可能な施設を選ぶのが基本です。統合失調症患者の受け入れ可能な老人ホームはサービス付き高齢者向け住宅、住宅型有料老人ホーム、高齢者住宅、グループホームとさまざま。医療機関(精神科クリニック等)と連携した老人ホームなら、もしものときにも安心です。
統合失調症とは? その原因・症状・治療法を解説
統合失調症の原因は、いまだによくわかっていません。専門医のなかには「脳内神経伝達物質」とよばれる、脳神経ネットワーク構築に欠かせない物質がかかわっている、と主張している方もいますが、脳内神経伝達物質がどのようにこの病気を発症させているのか、その詳しいプロセスなどはよくわかっていません。この病気は遺伝するという指摘もされていますが、病気そのものが遺伝するのではなく「統合失調症になりやすい要因」が遺伝すると考えられています。つまり病気になりやすい気質や性格、脳のトラブルが遺伝子、さらにストレスの多い環境、ライフイベント、ほかの病気などの要素がかさなることで発症するのではないかと推測されているのです。
統合失調症は大きくわけて4つの経過をたどるといわれています。
- 前兆期
- 急性期
- 回復期
- 安定期
前兆期は気持ちの落ちこみや不安、憔悴、集中力低下、精神的に不安定になるなどうつ病に似た症状がでます。この前兆期を過ぎると、つぎは幻覚や幻聴、妄想、幻視・暴力、暴言といった統合失調症独特の症状がみられます。幻覚や妄想の具体的な内容は患者によって違いますが「クラスメートが私の悪口を言っている」「隣人が私を24時間見張っている」など、患者本人を精神的に追いつめる、また不快にさせる、混乱させる妄想が多い傾向です。妄想や幻覚症状であることは第三者からみればあきらかなのですが、本人にとっては生々しい感覚があるため、現実のものであると信じこんでしまい、周囲の人たちとのコミュニケーションがうまくいかなくなる、不安で夜も眠れず昼夜逆転の生活をする、興奮して暴れるなどの症状がみられます。
回復期は治療によりだんだん精神的に落ち着く時期です。急性期でパワーを放出しているため、元気がなくなり一日中横になることも珍しくありません。この時期に「一日中寝ているなんて怠け者」と言うと精神的に不安定になりますし、病気の回復にも影響します。しずかに見守りましょう。安定期になると徐々に元気を取りもどし、リハビリテーションや薬物治療で社会に復帰していく時期となります。ただこの時期に無理をすると1番の前兆期にもどり、また再発してしまうことも。「早く病気を治して仕事をしなさい」などの言葉で本人をせかさず、ゆっくり見守ることです。
病気の治療は主に服薬とカウンセリングです。服薬では抗精神薬が有効とされています。今は第2世代(非定型)抗精神薬とよばれるエビリファイやジプレキサなどの薬が登場し、副作用が少なく安全な薬がふえました。副作用としては高血糖や口が勝手に動く、筋肉がこわばる、そわそわしてじっとしていられないなどの症状がみられます。副作用が出た場合、すぐに主治医に相談して薬を変えてもらいましょう。抗精神薬以外にも睡眠薬や抗うつ薬、抗不安薬などが必要に応じて処方されます。
統合失調症の高齢者が起こしがちなトラブルとは?
統合失調症の患者は幻覚や幻聴、妄想などの症状がつねにあらわれ、精神的に不安定ではないかと思われるかもしれませんが、きちんと医療機関で治療を受け、決められた量の薬を飲んで症状をおさえていれば大きな問題を起こすことはありません。精神的に安定していれば、老人ホームに入所していても問題はありません。自分の勝手な判断で薬を飲まなくなり、再発した場合が問題となります。
前兆期の症状を見逃すと、妄想・幻覚・幻視などの症状がでる急性期になり、人によっては暴力や暴言などで周囲の人たちに迷惑をかけることも。一度妄想が始まると患者自身もそれをコントロールすることができません。もしも老人ホームに入所していれば「隣の部屋のAさんが私の部屋に盗聴器を仕掛けた」「介護職員のBさんが私の食事に毒を盛っている」など、ありもしない妄想に悩むことになりますし、妄想が現実であると思いこんでいることから人間関係も悪化します。暴力や暴言で入所者や介護スタッフを傷つけるようであれば、通院や入院などの治療が必要です。入所者に迷惑をかける行為は、集団生活である老人ホーム内では許されません。
統合失調症は患者本人に「今、私は病気になっている」という病識がもてない病気です。患者は「ほかの入所者からいじめられている」と思いこむとそれが本人のなかで現実になってしまい、暴力や暴言など過激な行動に走ることも。妄想や幻視、幻覚の症状がみられるときは、すみやかに医療機関を受診し適切な治療を受けるのが基本です。
統合失調症の方の老人ホームの受け入れ状況は?
みんなの介護で紹介されている老人ホームは約9,000施設ありますが、統合失調症の高齢者受け入れ可能な施設は3,722か所と、全体の約半数となっています。統合失調症の患者が老人ホームに入所する場合、精神疾患の患者の受け入れが可能な施設を選ぶのは基本ですが、入所者が幻覚や妄想で暴れたときに介護・看護スタッフがいかに迅速に、そして適切に対応できるかどうか、そして家族がすぐに駆けつけられるかどうかも重要です。介護施設が遠いと気軽に面会もできませんので、施設の立地は事前によく確認しておきましょう。統合失調症患者の受け入れ実績や介護ノウハウのある老人ホームなら安心です。
統合失調症患者は服薬で落ち着いていても、やはり精神的に不安定な面がありますし、他人の動向を気にする方もいるようです。老人ホームに入居するのであれば、できるだけ個室がそなわった施設が良いでしょう。同室の入所者の顔色や言葉に気をつかい、精神的に消耗すると病気の再発も心配です。精神的に不安定になると、衝動的に老人ホームを飛びだしてしまうことも。入所者が簡単に逃げだせないように、見守りや巡回のしっかりした施設を選びましょう。
生活保護受給者でも入れる施設特集

生活保護を受けている人でも入居できる介護施設はあり、介護付有料老人ホームなども、最近は生活保護者を受け入れる所が増えてきした。
「入居できても利用料が払えないのでは?」と心配する人もいると思いますが、入居後も住宅扶助や生活扶助などの保護費が受けられるので、施設の月額利用料が保護費や年金収入内で収まれば、毎月の支払いも可能です。
さらに、自治体や介護施設によっては減額措置をとってくれる所もあります。そういった情報は生活保護担当のケースワーカーや地域包括支援センターのケアマネージャーが持っていることが多いので、入居の相談をしてみると良いでしょう。
費用負担の上限額はどのくらいか
費用の上限金額はその人の収入などによって違うため、一概には言えません。生活保護者が介護施設に入居する場合は、住宅扶助などの保護費と、年金収入で費用をまかないます。
毎月もらえる年金額も人によって違いますので、生活保護を受けている人は、市町村の生活保護担当者やケースワーカーなどに自分の費用上限額を計算してもらうと良いでしょう。
生活保護を受けている人は介護保険サービスの利用料が免除されますので、実際に負担する費用は安く抑えられることが多いようです。
年金受給額と老後の費用
年金の受給額は平均どのくらい?
定年退職後の年金受給額は、厚生年金や国民年金を納付した額によって決まります。2016年の厚生労働省の調査によると、大学卒業後すぐに就職してから60歳の退職まで厚生年金を納付し続けた人の場合、年金の平均受給額は、国民年金が毎月5万5,000円ほど、厚生年金が毎月14万5,000円ほど。すなわち毎月20万円ほど年金をもらえる計算です。
しかしこれは一般的な金額であり、もらえる年金は納付していた年数にもより、ずっと自営業を営んでいた人は国民年金のみの給付となります。さらに、障害年金をもらっている人は国民年金を受給できませんので、人によって毎月の年金受給額には差が発生します。区役所の年金課などに行けば概算をしてもらえますので、自分の受給額を教えてもらうと良いでしょう。
老後にはどのくらいのお金が必要か

総務省の資料によると、老後に必要なお金は退職前の生活費の7割ほどとなるようです。例えば月20万使っていた人は、退職後は14万円ほどで生活している人が多い、という統計が出ているのです。
すなわち、年収500万円もらっていた人が60歳で定年退職し、90歳まで生きた場合、500万円×0.7=350万円が1年間の費用となります。月に換算すると、毎月約29万2,000円。一概には言えませんが、毎月の年金額は20万円程度ですので、年金だけではやや現実的とは言えなさそうです。
年金と老人ホーム入居
価格が安い老人ホームは競争が激しい
一般的な有料老人ホームの月額利用料は6万円~20万円程度。厚生年金をしっかりと納付した人なら年金を20万円程度もらえますので、何とか支払える金額ですが、国民年金のみ受給している人は厳しいでしょう。
今の日本では、厚生年金をあまりもらえていない人、国民年金だけの人が多いという現状。さらに、もらえる額も徐々に下がっており、年金だけで老人ホームに入居するのは難しいのも事実です。そのため、ケアハウスのような低価格の施設の競争率がますます激しくなっています。
年金のみでの老人ホーム利用は可能?
年金だけでは厳しいといっても、退職後に年金以外の収入がある人はあまりいないでしょう。年金だけで老人ホームに入居するためには、ケアハウス(軽費老人ホーム)のような格安の施設を選ぶか、生活保護を利用します。生活保護が適用されると月額利用料の中の家賃や介護保険サービス代などが控除されますので、老人ホームでの生活も現実的となります。
一方で、おむつ代などの日用品の費用や、病気の際の病院代などは別途かかるため、年金の収入のみで老人ホームへの入居を考えている人は、しっかりと必要な費用額を計算した上で入居を考える必要がありそうです。
生活保護受給者が老人ホームを探すときに注意するポイント

生活保護の受給金額は、市区町村の家賃相場や物価、世帯人数や収入などによって変わるため、一人ひとり違います。そのため、あくまで一般的な話になりますが、一人暮らしの方の場合、家賃扶助と生活扶助を合わせると、月額は概ね8万2,000円~12万9,000円程度。
特に市町村によって生活保護の扶助額の上限が違いますので、お住まいの場所と違う市町村で老人ホームを探す場合は、上限などを確認しておきましょう。万が一、老人ホームの入居を決めた後にもらえる保護金の限度額が違っていたら、入居を断念せざるを得ないといったケースも存在するようです。
一般的には都心部の方が毎月の費用は高く、郊外や山間部の老人ホームの方が格安な場合が多いです。生活保護受給者が入居できそうな老人ホームを探す場合、都心から離れたエリアで探した方が、入居先が見つかる可能性が高まります。
最近はホームページなどに「生活保護OK」と明記している老人ホームも増えました。書いていない場合も、地域包括支援センターのケアマネージャーに相談することは一考でしょう。