疥癬(かいせん)でも入居可能な施設特集
疥癬の集団感染事例もあり!?清潔に保つことが何よりの予防に

疥癬(かいせん)とは、ヒゼンダニと呼ばれる小さな虫が皮ふに寄生し、とても強い痒みから、掻いて傷口を作り、感染症や炎症を引き起こす病気。特に免疫力や抵抗力が低下した高齢者が感染しやすく、介護施設での集団感染事例が過去にいくつも報告されています。こう聞くと怖い病気のように思えますが、感染経路が皮ふ同士の接触など限られているので、寝具や衣類の共用を避けるといった予防法が効果的。そんな対策を取っている介護施設をご紹介します。
疥癬に感染した高齢者の老人ホームへの入居は?
疥癬(かいせん)とは、人間の目にはほとんどみえない小さなダニ「ヒゼンダニ」に感染することでおきる皮膚病です。この病気は「通常疥癬」と「角化型疥癬(ノルウェー疥癬)」の2種類がありますが、より感染力が強く症状が重くなるのは「角化型疥癬(ノルウェー疥癬)」と言われています。
通常疥癬で感染するヒゼンダニの数は数十匹程度なのに対し、角化型疥癬では100~2,000万引きものヒゼンダニが感染しています。おなじヒゼンダニによる感染病なのですが、なぜこのような差がうまれるのでしょうか。角化型疥癬は免疫力の低下した高齢者や免疫不全の患者、ガン患者などに起こりやすく、とくに最近は老人ホームでの集団感染が発生しています。老人ホームでは免疫力の弱くなった高齢者が多数入所しているため、感染予防には細心の注意を払わなければなりません。
通常疥癬のおもな症状としては皮膚上に赤いブツブツとした丘疹や、手のひらや指、手首などに赤い発疹がみられること。この赤い発疹は「疥癬トンネル」と言われ、疥癬独特の症状です。この疥癬トンネルは、メスのヒゼンダニが卵を産みながら皮膚の内部を前進するもので、激しいかゆみを感じます。一方角化型疥癬は角質が増殖するため、体の表面のあかが増えたような状態になります。かゆみに関しては、不定となっており、なかには一切かゆみを感じない患者も。
感染経路に関しても違いがあります。通常疥癬の場合は、皮膚と皮膚が直接接触しないかぎり感染することはありませんが、角化型感染はシーツやまくらカバーについた患者の角質に触れただけでも感染してしまいます。そのため老人ホームへの入居を希望する場合は、疥癬対策のしっかりした介護施設を選ばなければなりません。
疥癬とは?
疥癬とは、先ほども少しご説明しましたが、ヒゼンダニと呼ばれるダニの一種が皮膚に感染することによっておきる皮膚病です。同じヒゼンダニの感染であっても、健康な人が感染すれば「通常疥癬」となり、体の抵抗力が落ちた方が感染すると「角化型疥癬」となります。通常疥癬では首から上に症状があらわれることはありませんが、角化型になると顔にも症状があらわれます。免疫力や抵抗力が低下することにより、体全体に症状がでるようです。
疥癬の患者はおもに体の抵抗力がおちた高齢者に多くみられますが、若い方でも油断はできません。年間に8~15万人の患者が発生しているのではないか、と推測されていますが、正確な感染者数は把握されていません。ただ患者数は減少傾向とは言えないため、とくに高齢者が多い病院や介護施設などでは十分な感染対策が必要です。
この疥癬、人から人へと感染するのが特徴です。感染経路ですが、まず通常感染の場合は長時間患者の肌に触れることで感染します。患者の肌に少し触った程度では感染は起こりません。まれに疥癬患者の使った寝具で眠ると、病気感染するケースもあります。潜伏期間は1~2か月と長く、感染に気づかずにほかの方へどんどん感染させる恐れがあります。これに対し角質化疥癬では患者の体についたヒゼンダニの数が多いため、直接体にさわる以外にも、ヒゼンダニが感染した角質にさわるだけでも感染します。こちらは全幅期間が短く、4~5日で発症するケースも。健康な方にヒゼンダニが感染すると、まずは「通常疥癬」の症状から始まります。
老人ホームや病院に角化型疥癬患者が入所している場合は注意が必要です。角質化疥癬は非常に感染力が強いため、病院はもちろん老人ホームでも患者を隔離することが望まれます。徹底した管理が必要です。
この病気は強いかゆみをともないます。とくに通常疥癬では激しいかゆみを感じるため、皮膚を掻きむしりさらに病気を悪化させるという悪循環が。治療については内服薬と外用薬がありますが、副作用の心配もあるため、医療機関を受診し医師の指示にしたがってください。
老人ホームに望まれる疥癬の感染予防対策とは?
老人ホームに望まれる疥癬の感染予防にはどのような対策があるのでしょうか?
通常疥癬と角質化疥癬とでは感染力に大きな違いがあるため、対応も変わってきます。まず隔離の有無ですが、通常疥癬では必要ありませんが、角質化疥癬は感染力が強いため隔離が必要です。隔離期間は治療開始後1~2週間程度となり、隔離には患者の人権に配慮する必要があります。
身体介護については、手洗いの励行は感染防止の基本となるため、通常疥癬でも角質化疥癬でも同じようにおこないます。予防衣や手袋は通常疥癬の場合は必要ありませんが、角質化疥癬は感染力の強さに配慮して、隔離中のみ着用します。使用した予防衣や手袋は患者の角質が落ちないよう、ポリ袋に入れて処分します。
リネン類の管理は通常疥癬の場合、シーツ・寝具・衣類の交換は通常どおりですが、角質化疥癬では毎日取り換えます。洗濯も通常疥癬の場合はとくにこれといった特殊な方法をとることはありませんが、角質化疥癬の場合は、50℃のお湯に10分間洗濯物をつけた後に洗濯をおこないます。洗濯が終わったあとは乾燥機を使用し、衣類についたヒゼンダニを完全に除去します。居室・環境整備については通常疥癬の場合、頻繁に消毒をおこなう必要はありません。角質化疥癬の場合は患者のいた居室に殺虫剤を散布することや、患者の立ち寄った場所に殺虫剤を一度散布するなど、さまざまな対策が必要です。
老人ホームでは通常型疥癬であれば、それほど厳しい管理は必要ありませんが、角質化疥癬の場合は患者の隔離や殺虫剤の散布、掃除の徹底、リネン類、洗濯物の処理などにかなりの手間がかかります。現在、疥癬に感染している方で老人ホームに入居を希望される場合は、きちんと対応できる老人ホームを選んで入居する必要があります。
疥癬に感染した高齢者を受け入れている老人ホームでは、予防対策を要確認
老人ホームには多くの方が入居しており、集団生活をおくっているという側面も。集団生活の場に感染症の患者が入居してくると、免疫力の落ちた高齢者につぎつぎと感染する恐れがあります。一度大量感染すると入居者だけではなく、施設スタッフにも感染するリスクがあり、施設スタッフから家族へとどんどん広がる可能性も。
そこで老人ホームでは、疥癬患者が入所を希望する場合「感染に治療してから」という条件をつけることもあります。これは施設内での大量感染を防ぐためです。疥癬は外用薬や内服薬をつかい、完治させることができる病気なので、しっかり治療し、ほかの入所者に迷惑をかけないよう準備をととのえて入所するのが一般的です。
みんなの介護では約9,000もの老人ホームが紹介されていますが、そのうち疥癬の患者の受け入れが可能な施設は約867か所となっており、全体の約1割程度となっています。受け入れ可能な施設が少ないのは、感染対策のむずかしさがあるのでしょう。有料老人ホーム内で感染し、大量発生した事例があるため、受け入れに難色を示す施設も少なくありません。
もちろん入居不可の老人ホームだけではなく、疥癬患者の入所を受け入れている老人ホームも。その場合は、施設内でどのような感染予防対策をおこなっているのか、事前にしっかり聞いておくとよいでしょう。疥癬患者の受け入れ実績があり、しっかり対応できる老人ホームであれば安心です。入所先をしっかり選定するのが重要です。