病院・クリニック併設の施設特集
持病がある方や健康に不安がある方こそ、病院・クリニック併設の施設は大きなメリット

高齢になればなるほど、持病があったり、健康状態に不安を抱えたりする方が増えるのは当然のこと。介護施設への入居にあたって、健康に関するサポート体制の充実した施設選びをしたいなら、病院やクリニックを併設した施設がオススメです。日常的にドクターによる治療や看護師によるケアを受けることができ、いざ容態が急変した場合も迅速に処置してもらえるというメリットがあります。緊急時の対応だけでなく、日々の健康管理や診療、治療などにも便利な病院・クリニック併設タイプの施設なら、医療面でのサポートも充実しているので安心して毎日を過ごせます。
定期的な検診だけでなく、万が一のときにもすぐに受診できる
高齢になるとなにかしらの持病を抱えているケースが多く、普段から病院やクリニックに定期的に通院していることも決してめずらしくはありません。持病が糖尿病だけの場合もあれば、糖尿病に高血圧、腎臓病(人工透析)など複数の病気をもっていることも。持病が増えれば増えるだけ健康管理にはかなりの注意が必要です。
高齢者の健康上の問題点は持病だけではありません。一度脳梗塞を起こした方のなかには、再び同じ場所で脳梗塞が発生することもあります。高血圧であれば血管系の病気を起こす可能性も高まります。健康面に不安をもつ高齢者にとって、老人ホームに病院やクリニックが併設されていることは大きな安心につながります。
認知症を発症し、自身で健康管理がきちんとできない高齢者も、病院・クリニック併設の老人ホームに入居すれば問題点も解消できます。定期的に健康診断を受けることで医師や看護師が小さな変化に気付き、早めに対応可能です。認知機能の低下で本人の病気の自覚がなくても、血液検査やMRI検査で病気の早期発見も期待でき、早めに治療をはじめることもできます。急変時にはそのつど医師が診察をおこない、適切に対応してくれる安心感はやはり格別です。
病院・クリニック併設の老人ホームは、老人ホームと同じ建物内に病院が開設されているケース、また病院と老人ホームが渡り廊下でつながっているケース、老人ホームと同じ敷地内に病院が開設されている場合など、入居者がすぐに診察や定期健康診断を受診できるように配慮されています。渡り廊下でつながっている場合は、夜中でも雨や雪の日でも、さらに車椅子やストレッチャーを利用した場合であってもスムーズに病院に搬送できるメリットがあります。クリニックは日曜日や祝日がおやすみのところがほとんどですが、病床数の多い大規模総合病院と老人ホームが提携していれば24時間365日、いつでも診察が受けられる安心感があります。
病院・クリニック併設の老人ホームは医療法人が運営していることが多く、医療面はかなり充実しています。そのかわり、ほかの老人ホームにくらべて、月額利用料や入居一時金が割高になっていることが多い傾向です。安心して暮らすための対価として考えるべきでしょう。
老人ホームに併設された病院に入院していた患者が、退院後にすぐに併設の老人ホームに入居できるのも、医療体制が強化された老人ホームの魅力であり強みです。病院を退院したあと、入居できそうな老人ホームを見つけることができずに病院を転々とする例もありますが、病院と老人ホームが相互に提携していれば「退院後の行き先がない」と心配することも少なくなります。これは精神的な安定につながります。
総合病院と提携している老人ホームなら、人工呼吸器や人工透析、中心静脈栄養(IVH)患者、筋萎縮性側索硬化症(ALS)患者など、一般的な老人ホームでは受け入れがむずかしい高齢者も、安心して入居できます。
病院・クリニック併設の介護施設は少ないのが現状!?
医療面での安心感がとても大きな病院・クリニック併設の介護施設。やはり大きなメリットは、入居者の急な体調変化に対して迅速に対応できることでしょう。高齢者の場合、昨日は体調が良くほかの入所者と元気にレクリエーションを楽しんでいたとしても、明日は急に体調を崩し、ベッドで一日中横になることもあります。そんなとき、病院やクリニックが併設されていれば、医師が本人の居室を訪問して診察してくれることも可能です。さらに容体が悪いようなら、施設の整った大きな病院に検査や入院ができるようにすぐに手配してくれます。健康面に不安を抱えている高齢者にとって、医療面が充実した老人ホームはとてもありがたいものです。
老人ホームは3大介護(食事・入浴・排泄)と生活支援を行っていればいい、という時代もありましたが、今は利用者も増えてニーズも広がり、さまざまなケースに柔軟に対応できなければ生き残れなくなりました。身体介護と生活支援だけではなく、手厚い医療面のケア、心のケア、生きがいづくり、ほかの入所者との触れあいなど、プラスアルファのサービスを加え、老人ホームの特徴や魅力を発信していかなければほかの事業所との競合に勝てません。老人ホームの運営側にとっては厳しい時代となっています。「費用は少々高くなってもいいから、医療面を充実させてほしい」というニーズも当然ありますので、その声ににこたえるべく誕生したのが病院・クリニック併設の老人ホームなのです。
では医療体制の充実した老人ホームは、一体どれくらいあるのでしょうか?
全国に9,000か所以上ある老人ホームのうち、病院・クリニック併設の介護施設は約563か所。全体の6%程度にとどまります。そのなかでもとくに病院・クリニック併設の老人ホームが多いのが大阪府の60か所。つぎが東京都の49か所、神奈川県の47か所、福岡県の42か所、愛知県の30か所、千葉県の27か所、埼玉県の25か所、北海道の22か所とつづきます。政令指定都市のある地域(人口の多い場所)には病院・クリニック併設の老人ホームが多く開設している傾向です。都市部に住んでいる方には喜ばしい状況ですが、裏がえして考えれば、地方には医療体制のととのった老人ホームが少ないということにもなります。
病院やクリニックが併設された老人ホームだけではなく、距離は少し遠くても提携する病院があり、入所者が急変した場合にすぐにオンコールで医師や看護師が駆けつけてくれる老人ホームも安心して入居できます。特定の持病をもつ高齢者は、老人ホームの入居前にどこまで医療面の対応が可能かを、じっくり打ち合わせると安心です。
人工呼吸器、簡易人工呼吸器の患者は受け入れ不可でも、在宅酸素療法の患者は受け入れ可能な施設もあります。一般には受け入れがむずかしい人工透析患者や中心静脈栄養(IVH)患者、筋萎縮性側索硬化症(ALS)患者も、提携しているクリニックや病院で治療が受けられる場合は入居できる場合ももちろんあります。「人工呼吸器の患者だから……、人工透析だから……」と老人ホームへの入居をあきらめる必要はありません。
日常的な医療行為が必要な高齢者こそ病院併設の老人ホーム選びを
高齢になると糖尿病や高血圧症、腎臓病、床ずれ、結核、肝炎、認知症、パーキンソン病、うつ病、統合失調症、リウマチ・関節症、骨粗しょう症、心臓病、狭心症、動脈硬化など、さまざまな持病をもつ可能性が高くなります。このなかでも日常的な医療行為が必要な高齢者には、きめ細かい医療ケアサービスが受けられる「病院・クリニック併設型の老人ホーム」がおすすめです。
糖尿病でも服薬と通院で血糖値をコントロールできる患者と、インスリン注射を1日に3回注射しなければならないうえに、認知症を発症しており自分で注射が打てない患者とでは、その深刻さにも違いがあります。後者の方がより医療・看護体制のととのった老人ホームを選択しなければなりません。
糖尿病以外にもさまざまな病気があり、とくに人工透析患者やストーマ(人工肛門・人工膀胱)を造設しているオストメイト、筋萎縮性側索硬化症(ALS)患者、中心静脈栄養(IVH)患者、人工呼吸器を使用している患者、結核、疥癬、鼻腔・経管栄養の患者は受け入れ可能な老人ホームが少ない傾向にあります。高い医療技術や管理が必要なのです。
病院やクリニックが併設された老人ホームなら、一般的に受け入れがむずかしい病気を患っていても、施設で対応できる可能性が高くなります。医療機関が同じ建物にある、渡り廊下で通える、歩いて数分の場所にあれば介護職員や看護師、家族が病院へ付き添いをする負担もかなり軽減されます。
介護施設の利用者が通院する場合、ひとりで外出できなければ介護職員や看護師に付き添ってもらうケースもあり、これを外出解除と呼んでいます。この外出介助も無料ではなく、介護保険でお願いしなければなりません。場合によっては介護保険の適用外になります。もし片道1時間以上かかる病院への通院を希望すると、看護にかかる時間を超えてしまい契約時間を完全にオーバーしてしまいます。外出介助にかかる時間を短縮するために、より老人ホームに近い病院へ変更してもらうこともあり得ます。
病院やクリニック併設の老人ホーム、提携病院が近くにある老人ホームなら、外出介助にかかる時間がゼロ、またはかなり短くなります。外出介助にかかる費用を心配し、病院を変更する必要はありません。この点でも病院・クリニック併設の老人ホームは有利と言えます。
胃ろうへの対応が可能な施設特集
手厚い看護サービスが待っています

胃ろうとは、物を食べたり飲んだりすることができない、または難しいといった「摂食嚥下障がい」を持つ人が、栄養を補給するために胃に開ける穴のこと。数カ月おきにカテーテルを交換する必要がある胃ろうでは、医師や看護師による定期的なケアが必要不可欠です。また、例えば認知症患者では、自分で胃ろうを引き抜いてしまったり…といったトラブルもあるため、24時間看護サービスを導入している施設がほとんど。ここでご紹介するのは、そうした手厚いサービスが受けられる施設ばかりなので、胃ろうをしている方でも安心して入居をご検討ください。
胃ろう対応可の施設では手厚い介護・看護が
胃ろう(PEG:Percutaneous Endoscopic Gastrostomy)とは、病気や障害などで口から食事が摂れない方、または食事を気管につまらせやすく、誤嚥性肺炎を起こす可能性の高い方に対して行う「長期栄養管理法」です。
内視鏡を使い胃に小さな穴をあけて、そこに栄養を送るための胃ろうカテーテルを取りつけます。胃ろうカテーテルはお腹の皮膚と胃壁をつないでいるので、外部からカテーテルをとおして、直接胃のなかに栄養を送ることが可能となっています。この方法なら食事を飲みこむことができない、また誤嚥性肺炎を起こしやすい方でも安心して生活することが可能です。肺炎は高齢者の死因第3位。じつは高齢者にとって怖い病気です。できるだけリスクを避けてほしいという観点から、医師や介護スタッフが胃ろう造設をすすめる場合もあります。
従来は鼻からチューブをとおして胃に直接栄養を送っていましたが、患者が苦痛を感じることや介護者の負担が重いことが課題でした。今は、胃やお腹の皮膚に穴をあけ外から栄養を送ることで喉にチューブを入れる必要がなくなり、嚥下訓練や発声練習がしやすくなっています。胃ろうを造設しても食事は口から摂取可能です。胃ろうの必要がなくなった場合は、取り外すこともできます。胃は再生力の高い臓器なので「ろう孔」はすぐに回復するのです。
胃ろうの手術は大がかりなものを想像してしまいますが、大きな出血もなく5~10分程度で終わります。傷もほとんど目立ちませんしお風呂に入ることも問題ありません。できるだけ清潔にすることが望ましいため、PEG周辺部は石けんでよく洗い、きれいにしておくことが推奨されています。
こちらの表は「胃ろう造設者数」をまとめたものです。一般病院(一般病院・療養病棟・精神・結核・感染症病床)には16万9,543人の方が入院しています。さらに特別養護老人ホームや介護老人保健施設、訪問看護では25万6,555人もの方が胃ろう造設をされています。かなりの数の方が胃に直接栄養を流しこむ栄養摂取法で生活されています。つまり胃ろうはそれだけ安全な方法なのです。今後もさらなる高齢化により、胃ろう患者が増えることが予想されます。
<全国の胃ろう造設者数の推計結果>
胃ろう増設者数の推計 | 一般病院 | ||||
---|---|---|---|---|---|
合計 | 急性期 病院 |
慢性期 病院 |
ケアミックス 病院 |
||
一般病床 | 75445人 | 25866人 | - | 49579人 | |
療養病床 | 医療保険 | 60137人 | - | 28406人 | 31731人 |
介護保険 | 30954人 | - | 14643人 | 16311人 | |
精神・結核・感染症 | 3008人 | - | - | 3008人 | |
一般病院での合計 | 169543人 | 25866人 | 43049人 | 100629人 | |
特別養護老人ホーム | 36667人 | ||||
介護老人保健施設 | 21475人 | ||||
訪問看護 | 医療保険 | 9168人 | |||
介護保険 | 19702人 | ||||
合計 | 256555人 |
胃ろう造設した高齢者が老人ホームに入居する場合「胃ろうである」ことを理由に拒否されることは、以前にくらべて少なくなりました。胃ろうに対応できる老人ホームのスタッフが看護師だけだったため、胃ろう対応可能な老人ホームが少なかったのことが問題視されていました。今は研修を行えば介護職員でも対応可能となっています。
もし不安な場合は、老人ホームのパンフレットに医療・看護体制が明記されていますのでそちらを参考にしてください。もしわからないなら直接老人ホームに「胃ろうに対応できるかどうか」と確認すると安心です。老人ホームによっては、介護職員が研修を受けていない、看護師が常駐していないなどの理由で入居を断られる可能性があるため注意が必要です。
胃ろうに対応できる老人ホームを調査してみましたが、医療・看護体制がある程度ととのっているという共通点があります。看護師が日中、または24時間体制で勤務している、介護士が24時間体制で施設に常駐しているのがその特徴です。胃ろう対応可の介護施設なら、手厚い介護・看護サービスが期待できます。
老人ホームにおける胃ろう患者の受け入れ条件は?
2012年から、所定の研修を受けた介護職員が胃ろう患者に対応できるようになったため、以前よりも胃ろう患者受け入れ可能な老人ホームが増えました。しかし、受け入れ条件によっては入居ができない事例もあります。わかりやすくまとめていますので、ご参考にしてください。
1.認知症を発症した胃ろう患者は、受け入れがむずかしい……胃に直接栄養を送っている間は、できるだけベッドに横になり安静にしなければなりません。ところ認知症を発症するとソワソワと落ち着かなくなり、居室や共用部、また居室へと移動してまわる多動の症状がでるケースも。その場合、胃に確実に栄養が落としこまれているかどうかが確認できませんし、患者が認知症でアチコチ動きまわると栄養剤が逆流する可能性もあります。お腹につくられた胃ろうカテーテルは痛みやかゆみを感じることもあり、興味本位でいじるとカテーテルが抜ける場合もあります。患者の安全が確保できない場合は、胃ろうによる治療ができません。胃ろう治療が必要なうえに認知症を発症している場合、入居前に老人ホーム側との十分な話し合いが必要です。
2.たん吸引を行うかどうか……喉や口のなかに分泌物(痰など)を自力で外に吐きだすことができない高齢者は、看護師や研修をうけた介護スタッフにより機械を使って吸いとる必要があります。放置していると誤嚥性肺炎を引きおこす可能性も。嚥下状態(飲みこむ力)に問題のある高齢者は、吐きだす力も弱い傾向にあります。そのため胃ろう患者は、同時にたん吸引が必要なケースもあるとされており、これら異常行為が可能な看護師や介護スタッフが常駐する老人ホームでなければ対応できません。入居後に問題とならないように、入居前に施設側と話しをしておく必要があります。
3.介護スタッフが胃ろうの研修を受けているかどうか……胃ろうは医療行為のひとつなので、ずっと看護師のおこなう仕事とされてきました。ところが最近は、研修を受けた介護職員であれば胃ろう患者に対応できるようになり、以前にくらべて患者の受け入れが可能な老人ホームが増えています。ところが介護職員が研修を受けていない、看護師が日中、また24時間常駐していない、安全性を十分確保できない施設では入居を断られるケースもあるため、注意が必要です。
延命治療としての胃ろうをどう考える?施設入居前に考えてみよう
「胃ろう」は何らかの理由があり、口からの栄養摂取ができなくなった方に対して行われる医療行為です。口から栄養が摂れなくなる原因としては、口腔内のガンにより痛みで食事が摂れない、喉頭ガンや咽頭ガンにより食事がのどを通らない、脳卒中やALS、パーキンソン病などの神経性の難病により食事を食べることができない、また食べても吐き出してしまうなどがあります。このような嚥下障害により、胃ろうを造設することは純粋な「医療行為」です。腎臓の機能が低下した場合、人工透析を受けることになりますし、糖尿病の患者はインスリン注射で血糖値のコントロールをすることもあります。これら医療行為と胃ろうとは、まったく同じ医療処置のはずです。
ところが胃ろうに関してだけは「医療行為」や「医療処置」ではなく「延命治療」であるという認識をもつ方も多く、人によっては「胃ろうは不要」と口にする方もいます。なぜ胃ろうが延命治療と考えられてしまうのでしょうか。胃ろうを必要としている方のなかには、ある日突然脳梗塞や脳出血で倒れ、判断力や理解力が回復しないまま家族の意向によって胃ろうを造設する場合があります。認知症になり自分の意志で食事が摂れなくなった場合、胃に直接栄養を送る方法を採用するケースも。脳卒中で意識がなくなったり認知症で正しい判断がくだせない状況になったにも関わらず、胃ろうによって命をつないでいる状況が傍目には「延命治療をさせられている」ようにうつってしまうのです。
たとえ脳卒中で意識不明になってもその後回復し、嚥下リハビリで食事を摂取できるようになる方や、リハビリやレクリエーションで認知症の症状が緩和した場合、自分の意志で食事が摂れるようになった方もいます。胃ろうは、いつか回復するであろう嚥下機能回復までのつなぎでしかありません。もちろんなかには病状が回復しないまま、長期間栄養を外部から補給し続けることもあります。だからといって「無意味な延命処置、医療費のムダ遣い」とは言えません。治療として必要なものだと判断されたものに対して第三者が「ムダ」とは言えないはずです。
ただ胃ろうに関しては賛否両論ある現実を考え、脳卒中や認知症になる前に自ら「食事を経口摂取できなくなったときは、胃ろうを希望します」または「希望しません」と、ハッキリ意思を示しておくことが重要です。本人の気持ちがあらかじめ示されているなら、家族もその意向を優先させることができます。本人のしっかりした意思がベースにある以上「胃ろうはムダ」という議論が起きることもありません。
老人ホームに入居後、なんらかの事情で胃ろう造設が必要になることもあります。そのとき、本人がしっかりと状況を理解、判断、決断できればいいのですが、そうではない場合は家族が戸惑うことになります。あらかじめ「胃ろうは必要」「不要」という意思を、家族に伝えておきましょう。
胃ろうの処置は医療行為じゃなくなった!?老人ホームにおける介護士の役割とは?
胃ろうの処置は医療行為とされており、老人ホームでは看護師しかできないとされてきました。ところが看護師がいない時間帯に胃ろうの処置が必要なケースで、違法と知りつつ介護職員が胃ろうの処置を行う事例が起きていました。違法であっても必要に迫られて対処していたのですが、やはり問題があるということで介護士や看護師から「介護職員も胃ろうの処置ができるようにしてほしい」という声があがったのです。
そこで2012年から、一定の条件を満たした介護スタッフも胃ろうやたん吸引ができるようになりました。ある一定の条件を満たすその「条件」とは、定められた研修を定められた事業所で受講することです。受講時間は約50時間で、座学と実技がからなります。実技では実際に看護師から直接、胃ろうやたん吸引の技術や注意点を学びます。座学と実技でとくに問題がなければ、受講者(介護士)による胃ろうとたん吸引が可能となります。胃ろうとたん吸引はセットで研修を受けるように指導されています。
介護職員がこれら医療行為を行いやすい理由は、看護師よりも長い時間老人ホームに勤務していることがあげられます。看護師が24時間勤務する老人ホームは少なく、これが「胃ろう患者が介護施設に入所できない大きな理由」となっていました。ところが介護職員が一部の医療行為を行うことにより、入所者にとって大きなメリットがうまれます。痰がのどや口腔内にいつまでも残っていると誤嚥性肺炎を起こす可能性が高くなりますが、常勤介護士がすぐにたん吸引で処理できれば誤嚥性肺炎のリスクも低減され、入所者にとっても安心です。
老人ホームを選ぶときには介護士がきちんと研修を受けているかどうか、そして24時間胃ろうやたん吸引に対応できるかどうかを確認しておくとよいでしょう。