作業療法士(OT)がいる施設特集
介護リハビリのスペシャリスト作業療法士(OT)による指導で身体と心の生活サポートを

園芸や手芸など、個々の持つ能力に合わせて適切な作業をすることで身体機能や精神機能の改善を目指すプログラムを提供する「作業療法士(OT)」は、介護リハビリのスペシャリストとも言える存在です。確かな専門性によって自立した生活を援助し支援してくれる作業療法に対するニーズは近年高まっており、音楽療法や園芸療法など新しい分野での民間資格も続々と誕生しています。自立した暮らしを送りたいと望む方にとっては、リハビリテーションに力を入れた施設かどうかを見極めるのも、入居にあたってとても大切なポイントです。
生活リハビリによって楽しみながら身体機能の回復を
リハビリテーションの国家資格の中でも、作業療法士(OT)は日常生活に必要となる動作訓練や園芸、手芸などを通じて身体と心のリハビリテーションを行う専門家です。
同じリハビリテーションの専門家として、理学療法士(PT)がありますが、理学療法士は寝返りや起きる・座る・立つと言った基本動作を行うための機能回復を行うための専門家。身体機能の向上や維持を目的としたリハビリを行うのが理学療法士の仕事です。
作業療法士は理学療法士と比べてまだまだ人数が少ないため、作業療法士を配置している老人ホームなどの高齢者施設はそれほど多くありません。
作業療法士によるリハビリは、身体的・精神的なものとなり、「お箸を持つ」「ドアを開ける」「服を着る、脱ぐ」などの食事、排泄、入浴など日常生活で必要になる具体的な動作を訓練していくことが主な目的となります。
また、生活を送る上で楽しみながら取り組むことができるよう、洗濯物を干す、料理をするなど日常的な動作に加えて木工や書道、園芸、体操など趣味を楽しみながらおこねるリハビリ訓練があることも多いです。
一人ひとりの日常的な動作を分析しながら、適切なリハビリを生活に取り入れていくことが大切な作業療法士の仕事と言えるでしょう。
作業療法士(OT)の対応で老人ホームの生活が快適に!
作業療法士(OT)によるリハビリテーションは、リハビリに取り組む方の趣味嗜好、生活スタイルに合わせた内容となることが多いのが特徴です。
日常的な動作を基本に考え、実際の日常生活動作を行う練習をするだけでなく、木工や書道など趣味活動を取り入れながらリハビリテーションにつなげていることも多く、適度な負担を身体にかけながらスムーズに目的となる動作ができるようになることを目標としています。
作業療法士によるリハビリテーションを行う際には、リハビリニーズのある方の日常生活動作や希望、趣味・嗜好などを把握し、個別のリハビリテーション計画が作成されます。
その人らしい毎日を送ることが目的となるため、趣味など楽しみを感じてもらえる内容が用意されていることも多いと言えます。
また、設備面での環境整備も大切な作業療法士の仕事の一つとなっており、具体的に入居者の方のベッドや車椅子、手すりなどの配置に対するアドバイス、調整なども行なっていきます。
毎日の生活をスムーズに送れるような環境づくり、楽しみながら取り組める日常生活を快適にするための動作訓練が受けられる作業療法士(OT)の配置された施設は、様々な疾病により日常動作に不自由を感じる方への環境整備や適切なリハビリなどが期待できるといえるでしょう。
作業療法士(OT)によるリハビリが効果的な疾患は?
日常生活動作をスムーズに行い、快適な生活を送れるようリハビリを通じてサポートをする作業療法士がいる施設では、日常的な動作をスムーズに行うためのケア体制が充実しています。
特に、脳血管障害や、パーキンソン病、大腿骨頸部骨折、腰椎圧迫骨折、脊柱管狭窄症、変形性関節症などにより、身体的に動作に不自由がある方は、その方の症状や動作に合わせた作業療法が受けられるため、作業療法士のいる施設に入所するメリットが大きいと言えます。
また、糖尿病、認知症などの方にとっても適切なサポートのもとでリハビリに取り組むことができるため、安心。日常生活での活動量が低下し、寝たきりになる要因とも言える廃用性症候群を予防するためにも、適切なリハビリテーションはとても大切なものとなります。
趣味を楽しみながら動作をスムーズに行えるようサポートする作業療法では、手芸や園芸のような内容もあり、単純な作業を行うよりも、リハビリに参加される方が判断力や記憶力を使って取り組むことができるため、認知症予防につながることも。
一人ひとりの個別リハビリプログラムもありますし、数人のグループで取り組む場合もありますが、作業療法士はお一人おひとりの動作に合わせてどうやって日々の生活をリハビリにつなげていくかを考え、リハビリ計画に取り入れてくれます。
作業療法士(OT)がいる老人ホームの一日の流れ
作業療法士(OT)が勤務している老人ホームなどの介護施設で働く作業療法士の人たちは、どのようなスケジュールで入居者の生活をさせているのでしょうか?
施設によっては、作業療法士が1週間に1日や2日勤務など毎日常駐していない場合もありますが、ここでは作業療法士が1日中勤務していることを想定して、1日の流れを見ていきましょう。
8:30 | ミーティング |
---|---|
9:00 | 個別リハビリテーション、集団レクリエーション、食事時の姿勢の確認など |
12:00 | 休憩 |
13:00 | 個別リハビリテーション、集団リハビリテーション |
16:30 | 記録 |
17:00 | 退勤 |
作業療法士の主な介護施設での仕事は、「個別リハビリテーションの実施」「集団リハビリテーションの実施」「集団レクリエーションの実施」「嚥下体操」「介助時の姿勢確認」などが挙げられます。
また、リハビリに取り組まれる方の動作や望むライフスタイルをヒアリングし、作業療法プログラムに取り入れるための個別リハビリ計画を作成することもあります。
個別リハビリテーションでは、具体的に「食事の際にお箸が持てるようにするため」や「トイレを一人で行うために手すりにつかまり立ち座りができるようにする」など、個々のリハビリニーズに応じた目標動作ができるような作業療法を実施します。
また、集団リハビリテーションや集団レクリエーションでは園芸や習字、クラフト、ゲームなど楽しみながら取り組めるプログラムのもとで、さまざまな身体状況の参加者が体を動かし、認知機能を刺激することができる時間作りを行っています。
もう一つ、大切な作業療法士の仕事が、食事など日常生活をおくる際の介助をより安全に、そして利用者が快適に受けられるようになるための姿勢のポジショニングや環境づくりです。例えばお食事シーンでは、リハビリニーズのある方が、ご自身で食事を食べられるように自助具を作成することもあります。
朝のミーティングから、午前・午後のリハビリテーション、昼食など食事シーンでの介助や姿勢の確認など忙しく働く作業療法士(OT)は、毎日の仕事を通じて、入居者の方たちがより快適な生活を送れるようサポートしてくれています。
理学療法士(PT)がいる施設特集
自立した生活を支援する専属の理学療法士(PT)がいる施設で質の高いリハビリを

医学的リハビリテーションの専門家「理学療法士(PT)」は、自立、要支援、要介護に限らず年齢や病気によって身体機能に障害がある方、障害が出る恐れのある方に適切なリハビリプログラムを提供してくれる頼もしい存在です。日常生活における自立など明確な目標を持つことで機能改善にもつながり、イキイキとした人生につながるからこそ、専属の理学療法士がいる施設は魅力的。昨今では、個々に合ったリハビリプログラムを実践することを売りにしている介護施設も多く見受けられます。ここでは理学療法士をスタッフとして抱える施設をご紹介します。
理学療法士(PT)によるリハビリで寝たきり防止にも
一般的に老人ホームなど高齢者施設で行われるリハビリテーションは自立した生活を支援するために、身体機能の維持と向上を目的としています。
急性期病院や、回復期リハビリ病院などでは、患者さんの回復に向けたリハビリが主となるためリハビリテーションの頻度や内容も充実していますが、高齢者施設においては若干頻度、内容などが少なくなる可能性があります。
ただ、最近は施設の特色としてリハビリ専門職である理学療法士(PT)を配置し、充実したリハビリテーションを実施する施設も見つけられるようになりました。
理学療法士は、リハビリテーションについて専門的知識と経験を持った国家資格保有者です。
施設での生活を通じて入居者の方が自立した生活を送れるように支援するだけでなく、身体機能を維持し、より良い生活を送るためのサポートをリハビリを通じて行う理学療法し(PT)がいる施設は、他の施設と比べて質の高いリハビリが期待できることから「在宅復帰を目指したい」「前のような生活をまたできるようになりたい」という方にオススメです。
理学療法士がいる施設を選ぶメリットは、安全にリハビリに取り組めるだけでなく、適切な運動を通じて寝たきり予防につながる生活を送れる点も挙げられます。
運動前・運動後にマッサージをしてくれる場合もありますので怪我の防止に。さらに、寝たきりの方にとっても、マッサージなどを通じて血行を良くし、体を健康な状態に保つ助けとなります。
「理学療法士(PT)がいる」と言っても、毎日常駐している施設から、週に2~3日のみ勤務している施設もありますので、どのくらいのリハビリが必要なのかを考えながら、理学療法士のいる頻度やリハビリ頻度についても確認を。
理学療法士(PT)がいる施設では、入所者だけでなく、デイサービス・デイケアなどの通所サービスを提供しているところもありますので、どんなリハビリが行われるのか、通所サービスを利用しながらチェックすることもできるかもしれません。
理学療法士(PT)は老人ホームでどんな仕事をしている?
介護施設に勤務する理学療法士は、リハビリテーションの中でも立つ・座る・歩くなどの基本動作の回復や維持などを目的とした運動療法や物理療法を通じて自立ある暮らしを送れるようにサポートすることを専門としています。
リハビリの国家資格取得者として高い専門知識を持ってリハビリ指導にあたってくれる理学療法士(PT)がいる施設は、入居者に対するリハビリプログラムが充実していると考えられます。
介護施設など高齢者施設で行われるリハビリの大きな目的は、「機能・動作レベルの維持と向上」です。理学療法士(PT)の人たちは、安全にリハビリを行うための環境づくりや指導を行う中で、入居者の方の自宅復帰を目指したり、介護度が高い方の自立度向上などを目指してリハビリを実施しています。
介護施設に勤務する理学療法士の場合、リハビリ指導に加えて、介護スタッフに対する介助方法のアドバイスや、施設内で使っている福祉用具選びや設備の調整なども大切な仕事です。
また、自宅復帰を目指している入居者の方に対しては、自宅へ戻られる際にケアマネージャーと情報を交換し合いながら、自宅での生活を送る上で必要な介護サービスや車椅子など福祉用具の選定に関するアドバイスもしてくれます。自立ある暮らしを送るためのアドバイザーとして理学療法士がいることがわかりますよね。
回復期リハビリ病院などに比べて、理学療法士が勤務している施設でも、リハビリの頻度や時間は少ない傾向にありますが、こうした環境面の整備なども含めて、理学療法士の人たちは毎日を忙しく働いています。
8:30 | 毎朝のミーティングによってユニットごとに利用者の体調などを把握しながら、その日に行うリハビリの準備を行います。 |
---|---|
9:00 | リハビリ開始。介護スタッフなどと連携をとって介助方法のアドバイスを行ったり、実際にリハビリテーション指導やサポートが主な業務となります。 |
12:00 | 休憩 |
13:00 | リハビリ開始 |
17:15 | リハビリ内容を記録し、次回のリハビリにつなげるなど、一人一人の体の状態に合わせたリハビリ計画を立てています。 |
17:30 | 退勤 |
認知症や脳血管疾患などさまざまな理由から身体的に日常生活を送ることが難しくなった入居者や利用者の方を支える理学療法士。リハビリの実施だけでなく、介助方法のアドバイスや設備など環境面での整備を進める大切な役割を担っています。
個別リハビリと集団リハビリ、そのメリット・デメリットとは?
理学療法士が介護施設で行うリハビリテーションは、大きく分けて個別リハビリと集団リハビリに分けられます。
それぞれのリハビリテーションは、利用者や入居者の方たちの身体機能の維持・回復・向上を図るという点では目的は同じですが、方法が異なるためにメリットとデメリットがあります。
まず、個別リハビリは、要介護者の一人一人の身体機能に合わせて個別プログラムを作成するところから始まります。
例えば車椅子を使っている方が、歩行器を使って歩けるようになるように、など具体的に目標を設定し、個別プログラムに合わせて目標に合わせたリハビリテーションを行うのが個別プログラムです。
理学療法士が、一人ひとりの目標に合わせて、実際のリハビリテーションをサポートしながら、状況によってプログラム内容を変えていきます。
個別リハビリのメリットは、理学療法士などのリハビリスタッフが個別に利用者に付き添い、集中して目標に向けたリハビリプログラムを実施するため、その日の体調などに合わせてリハビリ内容を調整ことができる点がまず挙げられます。また、理学療法士などの専門スタッフが一緒に目標に向けてリハビリをサポートしてくれるので、リハビリテーションに対するモチベーションも高くなりやすいと言えます。
逆に、個別リハビリのデメリットは一人ひとりに対して行うため、介護施設では実施が難しい点があります。理学療法士の人数が限られている施設では一人ひとりに対する個別リハビリテーションの時間を確保することが難しく、個別リハビリの充実している施設は少ないといえるでしょう。
集団リハビリは、10名程度のグループで行うリハビリです。脳機能(認知機能)、筋力、柔軟性、体力の維持や活性化に加えて、レクリエーション的な要素が強く、生きがいづくりや体を動かすことのモチベーションアップなどが主な目的です。
ゲーム的な要素を取り入れたり、体操を行うなど楽しみながら取り組めるプログラムが多く、集団で行うことによりコミュニケーションが生まれるという点が大きなメリットとして挙げられます。また、楽しみながら行えることから、参加者の意欲が高くなりやすいのもメリットといえるでしょう。
デメリットとしては、大人数で行うために一人ひとりの身体機能に個別対応することが難しく、特定の機能を維持・高めたい場合には向いていないといえます。
それぞれのメリット・デメリットがある個別リハビリと集団リハビリ。入居する施設探しをする際に、理学療法士の有無を条件としてあげる場合には、入居される方の身体状況や目的にあったリハビリが実施されているかどうかもしっかりと確認しましょう。
理学療法士(PT)が常駐する老人ホームに入居したい!その費用相場は?
理学療法士が常駐する老人ホームなどの高齢者施設は、入院中のリハビリから継続してリハビリに取り組みたい場合や、自宅復帰を目指す方にとって、適切なリハビリテーションが受けられるというメリットがあります。
リハビリを受けられる施設としては、介護老人保健施設がまず考えられます。介護老人保健施設は、医療や介護・リハビリテーションを必要とする人に対して、身体機能の向上を目指したケアが受けられる点が魅力です。ただし、入居期間が3ヶ月など限られているため、長期の入居には適していないと言えます。
また、その他の施設としては有料老人ホームが考えられますが、理学療法士が常駐する施設は一般的に理学療法士の人件費や設備投資などにお金がかかっていることから、月額利用料などの費用相場が高くなる傾向にあります。
また、充実したリハビリを施設側が提供したいと思っても、理学療法士など有資格スタッフを雇用したくても資格保有者が少ないことなどが影響し、なかなかスタッフを雇用できないという実態もあると言われています。
こうした状況から、入居者側のリハビリニーズが高い一方で、有料老人ホームなどの高齢者施設ではリハビリプログラムを十分に実施できない状況にあると言えるでしょう。
理学療法士や作業療法士が勤務している施設を探すにあたっては、施設探しの地域を広げて探すのも一つの方法です。
また、デイサービスを併設し、そちらに理学療法士などのリハビリ専門スタッフを配置しているところもありますから、住宅型有料老人ホームやサービス付き高齢者向け住宅であれば、デイサービス併設型の中でもリハビリが充実したデイサービスを併設しているところを探してみるといいでしょう。
言語聴覚士(ST)がいる施設特集
言語機能が低下した方などは、言語聴覚士による回復訓練が受けられる施設を

失語症や聴覚障がい、嚥下機能の低下などの障がいを持つ方の生活を、障がいを持つ前に近い状態に改善できるよう支援する専門家である「言語聴覚士(ST)」。専門領域である“口”の持つ機能に特化したケアを受けられる介護施設は先進的なケアに対する考え方とサービスの充実を図っている施設であると言えるでしょう。嚥下機能障がいや言葉によるコミュニケーションに問題がある方が施設入居を検討する方にとって、こうしたリハビリを受けられる施設はまだまだそれほど多くなく、とても魅力的です。
言語聴覚士がいる老人ホームは貴重な物件!?
言語聴覚士(ST)は、理学療法士や作業療法士と並び、リハビリの専門知識を持つ国家資格保有者です。
例えば、脳卒中など脳血管性疾患により「うまく話せない」などの言語障害を持つ方やこう頭ガンなどで声帯を失い声を出すことが難しい音声障害を持つ方といった言葉によるコミュニケーションに問題がある方だけでなく、筋力低下などにより上手に噛む・飲み込むなどの動作ができない嚥下機能障害を持つ方などが言語聴覚士のリハビリ対象となっています。
「話す」「聞く」「食べる」など言葉によるコミュニケーションや摂食・嚥下に関するリハビリテーションが専門分野となる言語聴覚士は、介護施設はもちろんのこと、医療機関や教育機関でも活躍する専門職と言えますが、まだまだ人数が少ないのが現状です。2016年時点で言語聴覚士の国家資格保有者は2万7,274人。理学療法士が2016年3月末時点で13万9,203人いることを考えると、その数の少なさは一目瞭然です。
1999年(4003人) | |
2003年(7767人) | |
2007年(12564人) | |
2011年(18960人) | |
2016年(27274人) |
医療(69.7%) | |
老健・特養(8.0%) | |
福祉(7.2%) | |
養成校(1.7%) | |
学校教育(1.9%) | |
研究・教育機関(1.1%) | |
その他(1.4%) | |
不明(9.0%) |
そのため、介護施設でもまだまだリハビリ専門職としての言語聴覚士(ST)は数が少ないのが現状で、今後ますますニーズが高まってくると言える仕事です。
介護現場では貴重な存在とも言える言語聴覚士(ST)ですが、その専門分野は、介護現場でこそ必要とされていると言えるでしょう。
理学療法士や作業療法士が言語聴覚士の資格を併せて保有している場合もあるなど、人によってはより幅広いリハビリニーズに対応するために言語聴覚士の資格を取得する人が増えつつあるとも言われていますから、理学療法士や作業療法士がいる施設でも、併せて言語聴覚士の資格を持つスタッフがいるのかを確認してみるといいかもしれません。
会話や食べる障害がある高齢者には言語聴覚士(ST)のサポートが最適
言語聴覚士(ST)が専門とするのは、「話す」「食べる」と言った口を使うことに対するリハビリです。
国家資格である言語聴覚士の仕事は、一人ひとりのリハビリニーズのある方に対して、適切なリハビリテーション計画を立て、それに基づいたリハビリや生活環境の整備を行うこと。もともと言語聴覚士を指すSTは「Speech Language Hearting Therapist」の略。会話やコミュニケーションに関するリハビリをセラピストとしての立場から行っていく専門職です。
また、会話以外にも読み書きや、口を使って行う「食べる」こともリハビリの大切な要素の一つです。
そのため、例えば脳卒中により失語症や聴覚障害などが見られた方や、老化により嚥下機能が低下した方など高齢者介護の分野でもとても大切な役割を担っっているのです。
会話に障害がある方に対しては、本人への直接的なリハビリテーションはもちろんのこと、家族や介護者がコミュニケーションを取れるように文字盤を使ったコミュニケーション方法を提案することもある言語聴覚士(ST)。食事の際に安全に飲み込む動作ができるよう設備を調整し、姿勢をセッティングするなど設備面での環境づくりといったことは言語聴覚士が活躍する分野です。
そのため、会話や食べることに障害を持つ方は、言語聴覚士がいる介護施設などを選ぶことで、適切なリハビリテーションが受けられることが期待できます。
言語聴覚士(ST)によるリハビリが効果的な疾患は?
「話す」「読む」「聞く」「食べる」など生活に欠かせない動作を改善することを主な目的としている言語聴覚士(ST)によるリハビリは、主に医療機関やリハビリ専門病院などで受けることができますが、近年介護施設でもとてもニーズが高まっています。
言語聴覚士によるリハビリが効果的な疾患例としては事故の後遺症や脳卒中、喉頭がんなどで言語麻痺・摂食障害・嚥下機能低下などが見られる患者さんです。当然ながら、介護施設へ入居する方の中にもこうした疾患をお持ちの方は少なくなく、必然的に言語聴覚士の活躍の場として注目されているのです。
例えば「食べること」に関する障害では具体的に食べ物がうまく飲み込めない、むせてしまう、食べ物が口からこぼれてしまうなどそれぞれの事象に対して原因を特定し、必要に合わせた器官の訓練などを行なっていきます。
また、成人言語障害という、認知症や脳卒中、事故などが原因となる言語機能障害は、患者さん一人ひとりでその原因が異なります。それぞれの障害の発生メカニズムや症状などを加味しながら、適したリハビリ計画を策定し、リハビリが行われる言語聴覚士はまさにコミュニケーションと摂食に関するリハビリの専門家と言えるのです。
言語聴覚士(ST)がいる老人ホームの一日の流れ
実際に言語聴覚士(ST)がいる介護施設ではどのようなリハビリテーションやサポートが受けられるのでしょうか。言語聴覚士の1日を通じて、具体的に言語聴覚士によって受けられるサポートを見ていきましょう。
例えば、朝9:30から始まる失語症の治療では、絵が描かれたカードを使いながら、カードにあるものの名前を言っていくリハビリが行われます。失語症とは、脳卒中などにより言葉を理解したり使うことが困難になってしまう障害です。認知症や脳卒中などにより引き起こされることの多い失語症の症状は、人によって現れ方がそれぞれ異なります。そのため、治療には一人ひとりの入居者の方に合わせた失語症が行われることも少なくありません。
その他にも唇や舌を使って声を出すための構音障害に対するリハビリや、食べることを訓練する摂食・嚥下障害のリハビリ、高次脳機能障害のリハビリなど、多様なニーズに合わせてリハビリを実施します。
なかでも、高次脳機能障害は、脳腫瘍や脳血管障害などによって脳が損傷することで問題が生じた状態を指します。失語症や記憶障害、判断力の低下、時間や場所の感覚がなくなる見当識障害など認知症とよく似ています。認知症と高次脳機能障害の違いは、認知症の場合は進行性であるのに対して、高次脳機能障害の場合早期リハビリにより障害が回復する可能性がある点です。
8:40~8:50 | 朝のミーティング |
---|---|
9:00~10:00 | 失語症の治療 |
10:30~11:30 | 構音障害の治療 |
13:30~14:30 | 摂食・嚥下障害の治療 |
15:00~16:30 | 高次脳機能障害の治療 |
16:30~17:00 | 記録の作成 |
17:30~18:00 | 勉強会 |
介護現場でも混同されやすい高次脳機能障害に対して、適切なリハビリを行える言語聴覚士(ST)の存在は、適切なケアを行うためにもとても大切な存在ということがわかりますよね。
介護スタッフと相談しながら、入居者の方が食事しやすい姿勢を維持するためのアドバイスや、入居者の方とのコミュニケーションをよりスムーズにするための提案なども行う言語聴覚士(ST)。
言語聴覚士を配置している老人ホームではより専門的なリハビリが受けられますが、まだまだ数が少ないのも現状です。今後ますます言語聴覚士が介護現場で活躍していくことが期待されます。