看取り・終末期・ターミナルケアの対応が可能な施設特集
QOLを重視した医療ケアも万全の施設です

例えば末期がんの患者などは、それ以上の治療を行わないというケースもあるでしょう。そんな時こそ、終末期対応可・ターミナルケアのある施設への入居を考えてみてはいかがでしょう? 「介護・看護に関して24時間体制が整っているか」「すぐに連絡が取れる提携の医療機関があるか」。この2点を確認しておけば、ある程度は施設側の姿勢も見えてくるもの。医療ケアがしっかりとした施設ばかりで、来るべき日までの生活を、どれだけ自分らしく送れるかという“クオリティ・オブ・ライフ”を重視しているため、きっと充実した余生を送れるはずですよ。
看取りに対応した老人ホーム・介護施設は、QOLを重視した介護が特長です
最期を迎えたい場所として一番多かったのが「自宅」の54.6%であるというアンケート結果が、内閣府が全国55歳以上の男女を対象にしておこなった「高齢者の健康に関する意識調査(平成24年度)」によって明らかになりました。ついで「病院などの医療施設」が27.7%、「特別養護老人ホームなどの福祉施設」が4.5%、「高齢者向けのケア付き住宅」が4.1%となっています。多くの方が自宅で最期を迎えたいと望んでいるにも関わらず、実際にその希望がかなえられるケースは少なく、ほとんどの方が病院などの医療施設で亡くなっています。
日本人の死因は悪性新生物(がん)や心疾患、肺炎、脳血管疾患が多くを占めており、全体の約64%もの方々が病気によってこの世を去っています。自宅で安らかな死を迎えたいと願っても医療施設で最期を迎えざるを得ない状況です。
最近は介護福祉施設で最期を迎えたいと望む方が増えています。この背景には「看取り・ターミナルケア対応」の老人ホームが増加していることがあげられます。
平成18年に介護報酬が改定され「看取り加算」が可能になったことから、一部の老人ホームでは看取りの定義やケアの方針をしっかり定めたうえで看取りを希望する入居者を受け入れています。看取り・ターミナルケア対応の老人ホームでは、入居者の人生の質(QOL)を充実させ、より満足できる生活を送ってもらうことを重視しています。看取り可能な老人ホームでは治療を受けても病気回復の見込みがない入居者に対して、穏やかな死を迎えられるようにさまざまな取り組みを行っています。
ある看取り対応の老人ホームでは、入所者の好きな音楽を流したり、栄養摂取に時間をかける、職員が業務の合間にできるだけ本人に語りかけ寂しい思いをさせないなどの配慮を行っています。看取り・ターミナルケアが可能な老人ホームでは看取りのための介護スタッフ研修が定期的に実施され、看取りに対する心構えや必要な措置を学んでいます。看取り期にあらわれる入居者の変化(急変時ふくむ)に適切に対応し、安心して生活してもらうために各老人ホームで努力していますので、安心して利用して頂きたいと思います。
看取り可能な老人ホーム・介護施設で受けることができる介護サポート
看取り可能な施設では、終末期をむかえた入居者に対して手厚い介護がおこなわれます。その具体的な例をあげてご紹介しましょう。
まずはボディケアです。これは安らかな死を迎えるために環境を整えることから始まります。相部屋であれば、家族との面会がしやすい個室に移動することもあります。利用者が過ごしやすいように室温を調整し、お花を飾ったり好きな音楽を流す、好みの絵画を飾るなどして過ごしやすい環境にします。終末期には食事量が減っていく傾向が見られますが、できるだけ好きなメニューを提供し食べやすいようにとろみをつけて時間をかけ、栄養摂取を心がけます。体を清潔にすることも重要です。ただ蒸しタオルで体を拭くだけではなく、できる限りお風呂に入ってもらうことを心がける老人ホームもあります。体がきれいになることで気持ちもさっぱりするものです。ほかにも病気を患った入居者への疼痛緩和のためのマッサージや温シップ、排泄介助などさまざまなものがあります。
ボディケア以外にも入居者へのメンタルケアも行います。終末期は入居者の精神的な苦痛をとりのぞくために、できる限り本人に話しかけ、寂しい思いをさせないようにします。手を握ったりマッサージを行うなどのスキンシップで寄り添うことを重視した介護サービスを提供。また職員同士の連絡を密にして、夜間の急変時にそなえます。
終末期にはメンタルケアだけではなく、入居者への医療ケアも必要です。医師の指導のもと、酸素吸入や点滴、疼痛緩和のための処置などを行います。看護職員は医師や介護スタッフと連携して、入居者の体調変化や容体の急変に対応します。
看取りケアでは本人だけではなく、家族への精神的ケアにも対応しています。この先入居者がどのような経過をたどるのか、現状に対してスタッフがどのように対処していくのかを説明し、看取りへの不安を解消できるように努めます。家族と入居者の面会時間をできるだけ長くとれるように配慮し、最期のときを家族も心穏やかにともに過ごせるように、介護・看護スタッフが24時間体制で介護や見守りを行います。家族としては先の見えない状況で不安や迷いがあるかと思いますが、分からないことがあれば介護スタッフに声をかけ、その都度解消していくことが精神的な安定につながります。
どのように看取りを行うか?老人ホーム・介護施設入居前には同意書への確認を!
看取り・ターミナルケア対応の老人ホームでは、まず入居時に家族に対して「本人の容体が急変したときには救急搬送を行うのか、それとも何もしないのか」ということを確認します。高齢者は急に体調を崩してしまうこともあるため、入居時に家族の看取りに対する気持ちを確認します。
このとき「緊急時に病院搬送してほしい」という要望であれば医療施設での看取りになる可能性が高くなります。看取り対応の老人ホームであっても、こちらを希望して構いません。また「緊急時に病院搬送しないでほしい」ということであれば、老人ホーム内でできることとできないことなどを施設側が説明します。老人ホーム内でできる医療行為には限界があり、積極的に治療することはできません。その点をよく頭にいれ、急変時の対応を決めていきましょう。入居時には「病院搬送しないでほしい」と伝えたとしても、その後、本人や家族の気持ちに変化があれば老人ホーム側は柔軟に対応しますので安心してください。
老人ホームへの入居後、入居者が終末期にあると医師が判断した場合、また食事の量が少なくなる、元気がなくなった頃に老人ホーム側から「看取り看護・介護についての同意書」へのサインを求められることになります。書面で看取りの意志を確認すると、老人ホーム側では医師の指導を仰ぎながら生活相談員や看護師、介護士、管理栄養士、理学療法士などのスタッフと連携し「看取り介護計画書」を作成。この計画書は老人ホームが一方的に作成するものではなく、入居者本人やご家族の意向や要望も反映されます。
一旦作成された看取り介護計画書ですが、入居者本人の健康状態や意思の変化などにより適宜見直しを行うことができます。不安なことや疑問、迷いがあるときは遠慮なく老人ホームの介護スタッフに相談しましょう。
施設への報酬となる「看取り介護加算」と家族の「同意書」の関連とは?
老人ホーム側の報酬となる介護保険での「看取り介護加算」ですが、どのような施設や状況であっても加算がとれるわけではありません。いくつか条件があります。
まず看取りに関する職員研修を行うこと、常勤の看護師を1名配置すること、看護職員と24時間いつでも連絡がとれる体制を整えること。これらの条件は看取りに関する職員教育や看護体制についてのものです。職員が看取りや看護のことについて無知では、安心して家族をあずけることができません。個室、または静養室を設置した老人ホームであることも条件です。多床室だけの老人ホームでは、本人や家族も落ち着きません。
また看取りに関する指針を定め、入居者やその家族に対して指針の内容を事前に十分確認し、同意を得られているかどうかも重要です。老人ホームの看取り方針に同意できた場合「看取り看護・介護についての同意書」へ入居者と家族(身元引受人)がサインをします。この同意書を受領してから4~30日以内は144単位の看取り介護加算となり、死亡日の前日及び前々日は680単位、さらに死亡日は1日につき1,280単位を加算すると介護保険で定められています。つまり介護・看護スタッフの教育や配置が十分であっても「同意書」がなければ看取り介護加算をとることができないのです。
このときの看取り介護加算額に対し、一部が入居者の自費費用となります。自費費用分に対しては事前に老人ホーム側から説明があります。あとで揉めないためにも話の内容をきちんとメモし、わからない部分は遠慮なく質問して頭にいれておきましょう。
在宅酸素療法への対応が可能な施設特集
介護・看護スタッフによる日常的な体調管理も万全です

酸素ボンベを居宅に持ち込み、酸素吸入を行う在宅酸素療法。介護施設では、「自分で管理できること」「人工呼吸器や簡易式人工呼吸器を使っていないこと」などいくつかの条件を満たすケースで入居が認められます。そのため、それほど数が多くないというのが実情ですが、逆に、ここでご紹介するような入居可能な施設では、スタッフが「息苦しくはないか」「動悸や発熱といった体調の変化がないか」など、ご入居者様の体調をしっかり管理してくれるので安心です。
在宅酸素療法の患者でも老人ホームの入居はOK。その入居条件とは
在宅酸素療法(Home Oxygen Therapy:ホーム・オキシゲン・セラピー 略してHOT)は、何らかの病気で体のなかに十分な酸素が取り込まれなくなった患者に対して、酸素吸入を行う療法のことです。酸素不足を引きおこす病気には気道が狭くなる、または気胞が壊れるCOPD(Chronic Obstructive Pulmonary Disease:慢性閉塞性肺疾患)や、肺が膨らみにくくなる肺結核後遺症、肺線維症(間質性肺炎)などがあります。酸素吸入は数時間~数日程度の一時的なものではなく、長期間にわたって適切な濃度の酸素を吸入します。
ところで、なぜ人間には酸素が必要なのでしょうか。人間の体は消化器官から摂取した栄養と呼吸器から取りこんだ酸素によってエネルギーを産生し、活動をしていますが、十分な酸素が取りこめなくなると体にさまざまな症状があらわれます。酸素不足も症状が軽いうちは頭痛やだるさ、あくび、だるさ、息切れ、動悸、眠気、集中力の低下、眠気など、日常でも良く経験するものにとどまりますが、酸素濃度が急激に低下すると顔面蒼白、嘔吐、意識消失、昏睡、呼吸停止と深刻な状態におちいります。在宅酸素療法を行っている患者の場合は「慢性呼吸器不全」と診断され治療の対象となっていますので、酸素不足で意識消失や昏睡状態にならないように適切な濃度の酸素が供給され、管理されています。
慢性的な酸素不足と聞いても「たいしたことはなさそう」と感じる方がいるかもしれません。ところが酸素不足が長期間続くと、呼吸器以外の臓器にかなり負担がかかります。酸素を多く消費するのは脳ですので、脳に与えるダメージは少なくありません。酸素不足の状態が長くつづけば「認知症」の発症リスクが高まる可能性があります。さらに脳卒中や高血圧、心不全、狭心症など脳や心臓といった重要な臓器に致命的なダメージが及ぶことがあります。これらの病気を防ぐためにも、そしてQOL向上のためにも酸素量のコントロールが必要です。在宅でも患者本人、または家族の助けにより酸素吸入をおこなうのが「在宅酸素療法」と呼ばれます。
在宅酸素療法をおこなうには酸素供給装置(酸素ボンベ)が必要です。この酸素ボンベには「液体酸素装置」と「酸素濃縮装置」があり、外出や移動時に便利なポータブルタイプのものもあります。ポータブルタイプの酸素供給装置は小さめで、ボンベを腰のベルトに固定させ、ボンベから鼻腔までは「カニューラ」と呼ばれる細いチューブを鼻に装着して酸素を送ります。
在宅酸素療法をおこなう患者が、老人ホームに入居することは可能なのでしょうか。在宅酸素療法は医療行為のため、できるだけ老人ホームに看護師が勤務している方が安心ですし、在宅酸素療法受け入れ可能な施設を調査すると、日中看護師が常駐している老人ホームが多めになっています。ただ酸素ボンベの管理など、治療にかかわることを介護職員が行うことはできません。万一のことがあれば業務上過失があったとされ、責任をとることになります。看護師が常勤する老人ホーム、さらに医師と24時間いつでも連絡がとれる体制がなければ受け入れがむずかしいのが現実ですが、それはなによりも入居者の安全を考慮してのことです。
在宅酸素療法をおこなう患者が老人ホームに入居するための条件としては「在宅酸素の管理が患者自身でできる」ことや「持ちこめる酸素ボンベの量や本数に制限がある」こと、「酸素ボンベの設置位置に制限がある」ことなどがあげられます。酸素ボンベの取り扱いにはとくにむずかしいものはありませんが、火気の近くには設置しないこと、という決まりがあります。ボンベの設置場所を老人ホーム側から指定される可能性もあります。また人工呼吸器や簡易人工呼吸器の患者は在宅酸素療法とくらべてかなり厳しい医療的管理が必要であることから、老人ホームへの入居を断られる可能性が高くなります。
ほかにも入居者の身体状況(認知症を発症している、酸素療法以外にも持病があるなど)によっては入居を断られるケースもありますし、施設によっては受け入れが可能な場合もあります。入居者の身体状況によって個別判断となります。入居を希望する老人ホームがあれば、施設の担当者にまずは問い合わせを。
在宅酸素療法とはどんな治療法?
人の体にとって酸素は必要不可欠です。酸素がなければ生命を維持していくことができません。高山病は低酸素環境症候群と呼ばれており、頭痛、めまい、食欲不振、呼吸困難などの症状がでます。体のなかに酸素が取りこめなくなると平地にいても頭痛やめまい、眠気、あくび、息切れ、集中力の低下といった症状に苦しむことになります。慢性呼吸器疾患の患者は、体内に十分な酸素を供給することができないため、上記のような症状がでやすくなります。
低酸素状態が長期間つづけば、脳や心臓に致命的なダメージを与える脳卒中や急性心筋梗塞、心不全などの重篤な病気になるリスクが高まります。また少し歩くだけでも息切れがする、めまいがして外に出られない、集中力低下で仕事や家事が長続きしない等の症状では日常生活に支障がでます。そのためQOL(Quality Of Life)向上のために在宅で酸素を吸入し、血中の酸素濃度を高めます。濃度の高い酸素を体に取りこむことにより「息切れしなくなり散歩が楽しめるようになった」「頭痛が解消した」「家事に集中できる」といった声が聞かれます。以前はできなかった散歩や家事を楽しみ、苦痛なく日常生活がおくれることはQOL向上になります。在宅酸素療法は脳や心臓の病気を防ぐだけではなく、豊かな生活のために役立つことがおわかりいただけると思います。
在宅酸素療法は液体酸素装置か酸素濃縮装置から酸素の供給をうけ、長さ調整可能な専用のチューブ(カニューラ)から酸素を体内に吸いこみます。体内の酸素濃度はパルスオキシメータにより測定可能です。これは指にポンとはめて測定するだけで血液中の酸素飽和度がすぐにわかる、便利な計測器です。液体酸素装置は子機と呼ばれるポータブルサイズのものがあり、腰にぶら下げて簡単に移動ができます。酸素濃縮装置はカートに設置し、移動時はつねに引っ張って歩かなければならず負担が重くなります。ポータブル型に変えることで気軽に外に出られるようになったという喜びの声も。
ここで在宅酸素療法患者数の推移をみてみましょう。1985年に在宅酸素療法に保険が適用されるようになった頃は患者数約2,000人でした。ところが2001年には患者数は116,000人となり現在の患者数は推定160,000人を超えているとされています。右肩上がりで患者数が増加しています。
1983年(3百人) | |
1993年(363百人) | |
2003年(1250百人) | |
2013年(予想)(1590百人) |
在宅酸素療法の原因となる基礎疾患の割合、第1位はCOPD(慢性閉塞性肺疾患)です。この病気は喫煙と関連が深いと言われており、呼吸器系の患者は禁煙が必要と言われる所以となっています。第2位は肺結核後遺症、そして第3位は肺線維症・間質性肺炎・じん肺・膠原病・農夫肺となっていますが、これらの疾病は年々増加傾向となっています。
COPD(慢性閉塞性肺疾患)(45%) | |
肺結核後遺症(12%) | |
肺がん(6%) | |
肺線維症、間質性肺炎、じん肺、膠原病、農夫肺(18%) | |
その他(19%) |
長期にわたり在宅酸素療法が必要な場合、その症状の重さによっては呼吸器機能障害となり身体障害者手帳が交付されることがあります。1級・3級・4級に該当すると思われるときは、主治医と相談のうえで手帳交付の申請をおこなってください。身障者として認定されると障害者医療費助成や税金の軽減・減免、タクシーやバス、JRなどの公共料金の割引等、さまざまな援助を受けることができます。
在宅酸素療法では居室内でも使用法に注意!
酸素供給装置(酸素ボンベ)は頑丈につくられており、とくに扱いがむずかしいものではありませんが「火気の近くには設置しないように」と厚生労働省から発表されています。酸素は火の燃焼を助長させる気体です。酸素ボンベの近くにストーブやガスコンロ、タバコなど火をつかった機器があると火事が発生する可能性が高くなります。
2003年12月から2014年12月までの間に死亡件数50件、重症2件の酸素ボンベによる事故が起こっています。原因はタバコやストーブ、漏電によるものです。2015年以降も毎年必ず火災による死亡事故が発生しており、厚生労働省では啓発リーフレットを作成し、注意喚起をおこなっています。
リーフレットによると、酸素ボンベの周囲2メートル以内には、ガスコンロやストーブなど火を使う機器の設置は禁止されています。またボンベの近くでタバコを吸うのは大変危険な行為です。ボンベから漏れた酸素によりチューブ(カニューラ)や衣類が燃え、火事が起こる可能性があります。チューブは燃えやすい素材でできているので、火がつくと顔を火傷することにもなり大変危険です。
ライターやマッチの火、お線香、ろうそくも厳禁です。在宅酸素療法で治療を受けている患者は健康面からも禁煙が望ましいため、できるだけタバコは吸わないようにしましょう。
液体酸素装置を使用している場合は窓をあけて換気につとめ、万一のことを考えて消火器も近くに設置しておくと安心です。酸素ボンベは日当たりのよい場所に置くのも避け、ボンベ自体が熱くならないような配慮も必要です。酸素ボンベ自体は安全な装置なのですが、その設置場所をよく選定する必要があります。