在宅酸素療法への対応が可能な施設特集
介護・看護スタッフによる日常的な体調管理も万全です

酸素ボンベを居宅に持ち込み、酸素吸入を行う在宅酸素療法。介護施設では、「自分で管理できること」「人工呼吸器や簡易式人工呼吸器を使っていないこと」などいくつかの条件を満たすケースで入居が認められます。そのため、それほど数が多くないというのが実情ですが、逆に、ここでご紹介するような入居可能な施設では、スタッフが「息苦しくはないか」「動悸や発熱といった体調の変化がないか」など、ご入居者様の体調をしっかり管理してくれるので安心です。
在宅酸素療法の患者でも老人ホームの入居はOK。その入居条件とは
在宅酸素療法(Home Oxygen Therapy:ホーム・オキシゲン・セラピー 略してHOT)は、何らかの病気で体のなかに十分な酸素が取り込まれなくなった患者に対して、酸素吸入を行う療法のことです。酸素不足を引きおこす病気には気道が狭くなる、または気胞が壊れるCOPD(Chronic Obstructive Pulmonary Disease:慢性閉塞性肺疾患)や、肺が膨らみにくくなる肺結核後遺症、肺線維症(間質性肺炎)などがあります。酸素吸入は数時間~数日程度の一時的なものではなく、長期間にわたって適切な濃度の酸素を吸入します。
ところで、なぜ人間には酸素が必要なのでしょうか。人間の体は消化器官から摂取した栄養と呼吸器から取りこんだ酸素によってエネルギーを産生し、活動をしていますが、十分な酸素が取りこめなくなると体にさまざまな症状があらわれます。酸素不足も症状が軽いうちは頭痛やだるさ、あくび、だるさ、息切れ、動悸、眠気、集中力の低下、眠気など、日常でも良く経験するものにとどまりますが、酸素濃度が急激に低下すると顔面蒼白、嘔吐、意識消失、昏睡、呼吸停止と深刻な状態におちいります。在宅酸素療法を行っている患者の場合は「慢性呼吸器不全」と診断され治療の対象となっていますので、酸素不足で意識消失や昏睡状態にならないように適切な濃度の酸素が供給され、管理されています。
慢性的な酸素不足と聞いても「たいしたことはなさそう」と感じる方がいるかもしれません。ところが酸素不足が長期間続くと、呼吸器以外の臓器にかなり負担がかかります。酸素を多く消費するのは脳ですので、脳に与えるダメージは少なくありません。酸素不足の状態が長くつづけば「認知症」の発症リスクが高まる可能性があります。さらに脳卒中や高血圧、心不全、狭心症など脳や心臓といった重要な臓器に致命的なダメージが及ぶことがあります。これらの病気を防ぐためにも、そしてQOL向上のためにも酸素量のコントロールが必要です。在宅でも患者本人、または家族の助けにより酸素吸入をおこなうのが「在宅酸素療法」と呼ばれます。
在宅酸素療法をおこなうには酸素供給装置(酸素ボンベ)が必要です。この酸素ボンベには「液体酸素装置」と「酸素濃縮装置」があり、外出や移動時に便利なポータブルタイプのものもあります。ポータブルタイプの酸素供給装置は小さめで、ボンベを腰のベルトに固定させ、ボンベから鼻腔までは「カニューラ」と呼ばれる細いチューブを鼻に装着して酸素を送ります。
在宅酸素療法をおこなう患者が、老人ホームに入居することは可能なのでしょうか。在宅酸素療法は医療行為のため、できるだけ老人ホームに看護師が勤務している方が安心ですし、在宅酸素療法受け入れ可能な施設を調査すると、日中看護師が常駐している老人ホームが多めになっています。ただ酸素ボンベの管理など、治療にかかわることを介護職員が行うことはできません。万一のことがあれば業務上過失があったとされ、責任をとることになります。看護師が常勤する老人ホーム、さらに医師と24時間いつでも連絡がとれる体制がなければ受け入れがむずかしいのが現実ですが、それはなによりも入居者の安全を考慮してのことです。
在宅酸素療法をおこなう患者が老人ホームに入居するための条件としては「在宅酸素の管理が患者自身でできる」ことや「持ちこめる酸素ボンベの量や本数に制限がある」こと、「酸素ボンベの設置位置に制限がある」ことなどがあげられます。酸素ボンベの取り扱いにはとくにむずかしいものはありませんが、火気の近くには設置しないこと、という決まりがあります。ボンベの設置場所を老人ホーム側から指定される可能性もあります。また人工呼吸器や簡易人工呼吸器の患者は在宅酸素療法とくらべてかなり厳しい医療的管理が必要であることから、老人ホームへの入居を断られる可能性が高くなります。
ほかにも入居者の身体状況(認知症を発症している、酸素療法以外にも持病があるなど)によっては入居を断られるケースもありますし、施設によっては受け入れが可能な場合もあります。入居者の身体状況によって個別判断となります。入居を希望する老人ホームがあれば、施設の担当者にまずは問い合わせを。
在宅酸素療法とはどんな治療法?
人の体にとって酸素は必要不可欠です。酸素がなければ生命を維持していくことができません。高山病は低酸素環境症候群と呼ばれており、頭痛、めまい、食欲不振、呼吸困難などの症状がでます。体のなかに酸素が取りこめなくなると平地にいても頭痛やめまい、眠気、あくび、息切れ、集中力の低下といった症状に苦しむことになります。慢性呼吸器疾患の患者は、体内に十分な酸素を供給することができないため、上記のような症状がでやすくなります。
低酸素状態が長期間つづけば、脳や心臓に致命的なダメージを与える脳卒中や急性心筋梗塞、心不全などの重篤な病気になるリスクが高まります。また少し歩くだけでも息切れがする、めまいがして外に出られない、集中力低下で仕事や家事が長続きしない等の症状では日常生活に支障がでます。そのためQOL(Quality Of Life)向上のために在宅で酸素を吸入し、血中の酸素濃度を高めます。濃度の高い酸素を体に取りこむことにより「息切れしなくなり散歩が楽しめるようになった」「頭痛が解消した」「家事に集中できる」といった声が聞かれます。以前はできなかった散歩や家事を楽しみ、苦痛なく日常生活がおくれることはQOL向上になります。在宅酸素療法は脳や心臓の病気を防ぐだけではなく、豊かな生活のために役立つことがおわかりいただけると思います。
在宅酸素療法は液体酸素装置か酸素濃縮装置から酸素の供給をうけ、長さ調整可能な専用のチューブ(カニューラ)から酸素を体内に吸いこみます。体内の酸素濃度はパルスオキシメータにより測定可能です。これは指にポンとはめて測定するだけで血液中の酸素飽和度がすぐにわかる、便利な計測器です。液体酸素装置は子機と呼ばれるポータブルサイズのものがあり、腰にぶら下げて簡単に移動ができます。酸素濃縮装置はカートに設置し、移動時はつねに引っ張って歩かなければならず負担が重くなります。ポータブル型に変えることで気軽に外に出られるようになったという喜びの声も。
ここで在宅酸素療法患者数の推移をみてみましょう。1985年に在宅酸素療法に保険が適用されるようになった頃は患者数約2,000人でした。ところが2001年には患者数は116,000人となり現在の患者数は推定160,000人を超えているとされています。右肩上がりで患者数が増加しています。
1983年(3百人) | |
1993年(363百人) | |
2003年(1250百人) | |
2013年(予想)(1590百人) |
在宅酸素療法の原因となる基礎疾患の割合、第1位はCOPD(慢性閉塞性肺疾患)です。この病気は喫煙と関連が深いと言われており、呼吸器系の患者は禁煙が必要と言われる所以となっています。第2位は肺結核後遺症、そして第3位は肺線維症・間質性肺炎・じん肺・膠原病・農夫肺となっていますが、これらの疾病は年々増加傾向となっています。
COPD(慢性閉塞性肺疾患)(45%) | |
肺結核後遺症(12%) | |
肺がん(6%) | |
肺線維症、間質性肺炎、じん肺、膠原病、農夫肺(18%) | |
その他(19%) |
長期にわたり在宅酸素療法が必要な場合、その症状の重さによっては呼吸器機能障害となり身体障害者手帳が交付されることがあります。1級・3級・4級に該当すると思われるときは、主治医と相談のうえで手帳交付の申請をおこなってください。身障者として認定されると障害者医療費助成や税金の軽減・減免、タクシーやバス、JRなどの公共料金の割引等、さまざまな援助を受けることができます。
在宅酸素療法では居室内でも使用法に注意!
酸素供給装置(酸素ボンベ)は頑丈につくられており、とくに扱いがむずかしいものではありませんが「火気の近くには設置しないように」と厚生労働省から発表されています。酸素は火の燃焼を助長させる気体です。酸素ボンベの近くにストーブやガスコンロ、タバコなど火をつかった機器があると火事が発生する可能性が高くなります。
2003年12月から2014年12月までの間に死亡件数50件、重症2件の酸素ボンベによる事故が起こっています。原因はタバコやストーブ、漏電によるものです。2015年以降も毎年必ず火災による死亡事故が発生しており、厚生労働省では啓発リーフレットを作成し、注意喚起をおこなっています。
リーフレットによると、酸素ボンベの周囲2メートル以内には、ガスコンロやストーブなど火を使う機器の設置は禁止されています。またボンベの近くでタバコを吸うのは大変危険な行為です。ボンベから漏れた酸素によりチューブ(カニューラ)や衣類が燃え、火事が起こる可能性があります。チューブは燃えやすい素材でできているので、火がつくと顔を火傷することにもなり大変危険です。
ライターやマッチの火、お線香、ろうそくも厳禁です。在宅酸素療法で治療を受けている患者は健康面からも禁煙が望ましいため、できるだけタバコは吸わないようにしましょう。
液体酸素装置を使用している場合は窓をあけて換気につとめ、万一のことを考えて消火器も近くに設置しておくと安心です。酸素ボンベは日当たりのよい場所に置くのも避け、ボンベ自体が熱くならないような配慮も必要です。酸素ボンベ自体は安全な装置なのですが、その設置場所をよく選定する必要があります。
生活保護受給者でも入れる施設特集

生活保護を受けている人でも入居できる介護施設はあり、介護付有料老人ホームなども、最近は生活保護者を受け入れる所が増えてきした。
「入居できても利用料が払えないのでは?」と心配する人もいると思いますが、入居後も住宅扶助や生活扶助などの保護費が受けられるので、施設の月額利用料が保護費や年金収入内で収まれば、毎月の支払いも可能です。
さらに、自治体や介護施設によっては減額措置をとってくれる所もあります。そういった情報は生活保護担当のケースワーカーや地域包括支援センターのケアマネージャーが持っていることが多いので、入居の相談をしてみると良いでしょう。
費用負担の上限額はどのくらいか
費用の上限金額はその人の収入などによって違うため、一概には言えません。生活保護者が介護施設に入居する場合は、住宅扶助などの保護費と、年金収入で費用をまかないます。
毎月もらえる年金額も人によって違いますので、生活保護を受けている人は、市町村の生活保護担当者やケースワーカーなどに自分の費用上限額を計算してもらうと良いでしょう。
生活保護を受けている人は介護保険サービスの利用料が免除されますので、実際に負担する費用は安く抑えられることが多いようです。
年金受給額と老後の費用
年金の受給額は平均どのくらい?
定年退職後の年金受給額は、厚生年金や国民年金を納付した額によって決まります。2016年の厚生労働省の調査によると、大学卒業後すぐに就職してから60歳の退職まで厚生年金を納付し続けた人の場合、年金の平均受給額は、国民年金が毎月5万5,000円ほど、厚生年金が毎月14万5,000円ほど。すなわち毎月20万円ほど年金をもらえる計算です。
しかしこれは一般的な金額であり、もらえる年金は納付していた年数にもより、ずっと自営業を営んでいた人は国民年金のみの給付となります。さらに、障害年金をもらっている人は国民年金を受給できませんので、人によって毎月の年金受給額には差が発生します。区役所の年金課などに行けば概算をしてもらえますので、自分の受給額を教えてもらうと良いでしょう。
老後にはどのくらいのお金が必要か

総務省の資料によると、老後に必要なお金は退職前の生活費の7割ほどとなるようです。例えば月20万使っていた人は、退職後は14万円ほどで生活している人が多い、という統計が出ているのです。
すなわち、年収500万円もらっていた人が60歳で定年退職し、90歳まで生きた場合、500万円×0.7=350万円が1年間の費用となります。月に換算すると、毎月約29万2,000円。一概には言えませんが、毎月の年金額は20万円程度ですので、年金だけではやや現実的とは言えなさそうです。
年金と老人ホーム入居
価格が安い老人ホームは競争が激しい
一般的な有料老人ホームの月額利用料は6万円~20万円程度。厚生年金をしっかりと納付した人なら年金を20万円程度もらえますので、何とか支払える金額ですが、国民年金のみ受給している人は厳しいでしょう。
今の日本では、厚生年金をあまりもらえていない人、国民年金だけの人が多いという現状。さらに、もらえる額も徐々に下がっており、年金だけで老人ホームに入居するのは難しいのも事実です。そのため、ケアハウスのような低価格の施設の競争率がますます激しくなっています。
年金のみでの老人ホーム利用は可能?
年金だけでは厳しいといっても、退職後に年金以外の収入がある人はあまりいないでしょう。年金だけで老人ホームに入居するためには、ケアハウス(軽費老人ホーム)のような格安の施設を選ぶか、生活保護を利用します。生活保護が適用されると月額利用料の中の家賃や介護保険サービス代などが控除されますので、老人ホームでの生活も現実的となります。
一方で、おむつ代などの日用品の費用や、病気の際の病院代などは別途かかるため、年金の収入のみで老人ホームへの入居を考えている人は、しっかりと必要な費用額を計算した上で入居を考える必要がありそうです。
生活保護受給者が老人ホームを探すときに注意するポイント

生活保護の受給金額は、市区町村の家賃相場や物価、世帯人数や収入などによって変わるため、一人ひとり違います。そのため、あくまで一般的な話になりますが、一人暮らしの方の場合、家賃扶助と生活扶助を合わせると、月額は概ね8万2,000円~12万9,000円程度。
特に市町村によって生活保護の扶助額の上限が違いますので、お住まいの場所と違う市町村で老人ホームを探す場合は、上限などを確認しておきましょう。万が一、老人ホームの入居を決めた後にもらえる保護金の限度額が違っていたら、入居を断念せざるを得ないといったケースも存在するようです。
一般的には都心部の方が毎月の費用は高く、郊外や山間部の老人ホームの方が格安な場合が多いです。生活保護受給者が入居できそうな老人ホームを探す場合、都心から離れたエリアで探した方が、入居先が見つかる可能性が高まります。
最近はホームページなどに「生活保護OK」と明記している老人ホームも増えました。書いていない場合も、地域包括支援センターのケアマネージャーに相談することは一考でしょう。