アルツハイマー型認知症でも対応が可能な施設特集
アルツハイマー型認知症患者の方は認知症ケアが充実した施設選びを

認知症が進行し、日常生活での見守りや徘徊、夜間眠れないなどの症状が出てくると、ご家族が在宅で介護を続けるのにも大きな負担が出てきます。介護施設の中には、認知症ケアのノウハウが充実した専門的ケアを提供する施設も多くあり、こうした施設で適切なケアのもと生活することは症状の緩和につながるケースも。ご本人が老人ホームへの入所を嫌がる場合もありますので、じっくりと本人が安心できる環境を整えた施設探しをしていきましょう。
アルツハイマー型認知症患者が老人ホームで介護を受けたほうが良い3つの理由
アルツハイマー型認知症は、脳神経細胞が減少し脳が委縮する病気です。脳が縮んで小さくなることにより、さまざまな症状があらわれます。
記憶障害(即時・短期・長期)・判断力低下・見当識障害・実行機能の低下・失語・失行・失認などの症状は、認知症患者全般にみられることから「中核症状」とよばれています。これに対して徘徊や暴言、異食、過食、暴力、介護抵抗は周辺症状のなかでも行動障害とよばれ、さらに妄想や幻覚、憔悴、不安、抗うつ、睡眠障害は周辺症状でも精神症状と、2種類に分類されています。これら周辺症状は、必ず表面化する症状ではありません。どのような周辺症状が出てくるかは、患者本人がもつ気質、歩んできた人生などによってひとりひとり変わってきます。
在宅で認知症高齢者を介護する場合、もの忘れや判断力低下などの中核症状よりも、妄想や徘徊、暴言、暴力、異食といった周辺症状に悩まれる方ケースが非常に多いようです。自宅で介護を続けていても暴力や徘徊、妄想などの症状がひどくなり、老人ホームへの入所を決断される方も少なくありません。尿失禁や便失禁などの症状がでることで、在宅介護を断念するケースもみられます。
アルツハイマー型認知症は脳が委縮する病気で、今の医療レベルでは完治できない病気です。病気の根本治療がないため、現状、認知症の進行を遅らせる、ゆるやかにさせることしかできません。認知症の進行を遅らせるためには「脳に刺激を与えること」が有効であると言われています。つまり認知症患者は家のなかに閉じこもるのではなく、できるだけ外に出て外部からの刺激を受ける方が良いのです。
老人ホームは集団生活であるため、周囲にいる入所者と協調していく必要があります。掃除や洗濯、料理などの家事を分担しておこなうことが生活リハビリになりますし、体を適度に動かすことが脳への良い刺激になります。外出もひとりではなく、介護スタッフや他の入所者とある程度の集団でおこなうことで交通事故などのリスクがさがります。
老人ホーム内は集団生活なので、本人の体調や様子を必ず誰かが観察することになります。異常があればすぐに介護スタッフが対応できますし、認知症の症状変化や薬の効き方なども観察できます。認知症高齢者を自宅でひとり生活させるより、安全であることは間違いありません。
認知症高齢者が老人ホームで介護を受けた方がよい理由は3つ。
- レクリエーション等で脳への適度な刺激が期待できる
- 老人ホームで集団生活をすることで、生活リハビリができる
- 介護士がつねに本人の体調を把握できる
認知症高齢者が入所できる老人ホームには、特別養護老人ホーム、介護老人保健施設、介護療養型医療施設、グループホーム(認知症対応型共同生活介護)などがあります。とくにグループホームは認知症高齢者のための共同生活施設という位置づけになっており、勤務する介護・医療スタッフは認知症患者の症状や対処法について勉強されています。老人ホームへの入所を考えるなら、施設が「認知症高齢者受け入れ可能」であるかどうか、そして受け入れ実績の有無、介護スタッフに認知症の知識があるかどうかを確認するとよいでしょう。
アルツハイマー型認知症とは?その原因、症状について
「認知症」とは、ある特定の病名をさす言葉ではなく、脳神経細胞がなんらかの原因によって破壊され、その機能がうしなわれ、もの忘れや生活動作困難、判断力の低下などの症状がでる病気をいいます。認知症のなかでももっとも患者数が多いのがアルツハイマー型認知症で全体の約55%、つぎが脳血管性認知症の19%、そしてレビー小体型認知症の18%、その他の原因で発症するタイプが8%となっています。
アルツハイマー認知症(55%) | |
レビー小体型認知症(18%) | |
脳血管性認知症(19%) | |
その他の認知症(8%) |
アルツハイマー型認知症の発症原因はいまだによくわかっていませんが、高齢になるほど発症しやすいことから、「加齢」がリスクファクターのひとつであると言われています。遺伝や特定の病気が原因であると指摘されていますが、詳しいことはまだよくわかっていません。
アルツハイマー型認知症は脳にβアミロイドとよばれる特殊なたんぱく質が蓄積することがわかっています。βアミロイドが集まったものはβアミロイドプラーク(老人斑)とよばれ、アルツハイマー型認知症患者の脳内に大量に出現。脳神経細胞をつなぐシナプスネットワークを切断し、脳に大きなダメージを与えます。
さらにタウと呼ばれるたんぱく質が過剰にリン酸化され、からみあう「神経原線維変化(もつれ)」もアルツハイマー型認知症を悪化させます。これらの異変を察知した脳内にある掃除役・ミクログリア細胞が掃除体勢から攻撃モードへと変化し炎症を起こすことで、正常な脳神経細胞まで破壊されていきます。認知症は急性の病気ではなく、20年ほどかけてゆっくり進行しています。病気を自覚するかなり前から、脳内にはβアミロイドの沈着や神経原線維変化がはじまっているのです。40代・50代からの認知症予防が重要ですね。
アルツハイマー型認知症を発症すると、どのような症状があらわれるのでしょうか。前項でも少しご説明しましたが、中核症状と周辺症状とよばれる2種類の症状が出現します。中核症状は認知症患者全般にみられるものですが、周辺症状は患者の性格や気質、それまで歩いてきた人生経験などによって変化します。
おもな中核症状はもの忘れです。高齢になると記憶力の衰えがみられますが、それでも家族の存在を忘れるようなことはありません。ところが認知症患者の場合、脳の記憶にかかわる脳神経細胞が侵されることにより、家族のことはもちろん自分自身のことまで忘れてしまう場合があります。もの忘れと言っても通常のものと認知症によるものとでは、その深刻さが違うのです。
ほかにも「自分が今、どこにいるのかわからない」「今の季節がわからない」「仕事(家事)の手順がわからない」「注意力が低下し、鍋をこがす」「洗濯したことを忘れて、なんども洗濯機をまわす」などの症状が出てきます。これらの症状はアルツハイマー型認知症患者全般的にみられるものです。
さらに徘徊や、異食(洗剤などを食べる)、暴力、暴言、妄想、不安、抗うつなどの周辺症状がみられることも。これらの症状が介護する側に大きな負担となり、要介護者の老人ホーム入所を決断させる要因となっています。
認知症の種類は主に3つ
認知症の種類は主に3つあげられます。
まずはもっとも患者数が多い「アルツハイマー型認知症」そして脳卒中を発症することで、脳神経細胞に酸素や栄養が送られずに認知症を発症する「脳血管性認知症」、脳全体にレビー小体という特殊なたんぱく質が蓄積して起きる「レビー小体型認知症」です。これ以外にも前頭側頭型認知症・ピック病もあります。主な認知症の種類は、先ほどあげた3種類になります。
認知症の種類 | 症状の特徴 |
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アルツハイマー型認知症 | 脳の神経細胞が死滅することによって脳の機能障害をきたし、認知症状を起こす。高齢者の認知症では最も頻度が高い疾患で、全体の50~60%を占める |
血管性認知症 | 高血圧、脂質異常症、糖尿病などによって血管障害をきたして脳卒中を起こした結果発症する。通称「まだら認知症」とも呼ばれる |
レビー小体型認知症 | 脳全体に「レビー小体」という物質がこびりつく事で、脳の機能障害をきたし認知症状を起こす。アルツハイマー型の次に頻度が高い |
ピック病 | 脳の前頭葉と側頭葉の萎縮によって起こる |
アルツハイマー型認知症は長い年月をかけてβアミロイドが蓄積、タウタンパクの神経原線維変化、炎症などで認知症を発症し、進行していきます。その進行はなだらかです。
ところが脳血管性認知症の場合は、脳梗塞や脳出血が起きると急に症状がすすむという特徴があります。逆に病気の進行が止まっているようにみえることも。アルツハイマー型認知症とは違い病識があり、最後まで人格が保たれていることが多い傾向です。
レビー小体型認知症は脳内にレビー小体とよばれるたんぱく質の小さな丸い塊が蓄積し、発症する病気です。日本人医師・小坂憲司氏が世界に発表し明らかになった病気です。この病気の特徴は枕元に亡くなったはずの両親が立っているといった幻視、壁に人の顔が見えるといった錯視などの症状、また筋肉のこわばりにより体がうまく動かせないパーキンソン症状などがみられるのが特徴です。うつ症状や被害妄想の症状がでるケースも。症状がすすむと自律神経の障害により尿失禁や便失禁、便秘、そしてもの忘れや理解力、認識力の低下など認知機能低下の症状もみられます。
それぞれの病気の種類により、病気の進行状況や多くみられる症状、注意点等がやや違ってきます。病気の特徴をある程度つかみ、介護ケアに活かしましょう。
アルツハイマー型認知症患者向けの施設選びのポイント
アルツハイマー型認知症は進行していく病気です。今、とくに大きな問題はなくても、時間の経過とともに症状がすすみ、徘徊や妄想、暴力、暴言などの症状が出現するかもしれません。認知症の周辺症状により、介護者が夜眠れなくなる、心身共に疲労する、介護によって仕事や日常生活に大きな支障がでるようなら、老人ホームへの入所を検討するべきでしょう。このとき、認知症高齢者の受け入れが可能な施設を選ぶことが重要です。
認知症患者の受け入れ可能な施設は介護スタッフに認知症の知識があり、施設自体も介護実績がありますので安心です。ただすべての認知症高齢者を受け入れできるわけではなく、以下のような症状が出ている方は入所が断わられる可能性があります。
- 他人に危害を加える
- 徘徊癖があり、勝手に施設を出ていく
とくに問題となるのは1です。他の入所者を殴る、蹴るなどの暴力を加えるような方を施設に入れると、老人ホーム自体の信頼にかかわるため入所を断られるケースも。とくに体の大きな男性が暴れると、女性職員だけでは抑えることができないため危険です。徘徊癖は見守り、確認の間隔を短くすることである程度はカバーできますが、あまりにも頻繁に外にでてしまう方は入所を断れるケースも。とくにグループホームは昼間、玄関に施錠をしない施設も多いため、本人の安全を考えて入所を断わられることもあります。
問題行動が多い場合はできるだけ服薬治療をおこない、症状を緩和したうえで(トラブルが解消したうえで)の入所となります。
生活保護受給者でも入れる施設特集

生活保護を受けている人でも入居できる介護施設はあり、介護付有料老人ホームなども、最近は生活保護者を受け入れる所が増えてきした。
「入居できても利用料が払えないのでは?」と心配する人もいると思いますが、入居後も住宅扶助や生活扶助などの保護費が受けられるので、施設の月額利用料が保護費や年金収入内で収まれば、毎月の支払いも可能です。
さらに、自治体や介護施設によっては減額措置をとってくれる所もあります。そういった情報は生活保護担当のケースワーカーや地域包括支援センターのケアマネージャーが持っていることが多いので、入居の相談をしてみると良いでしょう。
費用負担の上限額はどのくらいか
費用の上限金額はその人の収入などによって違うため、一概には言えません。生活保護者が介護施設に入居する場合は、住宅扶助などの保護費と、年金収入で費用をまかないます。
毎月もらえる年金額も人によって違いますので、生活保護を受けている人は、市町村の生活保護担当者やケースワーカーなどに自分の費用上限額を計算してもらうと良いでしょう。
生活保護を受けている人は介護保険サービスの利用料が免除されますので、実際に負担する費用は安く抑えられることが多いようです。
年金受給額と老後の費用
年金の受給額は平均どのくらい?
定年退職後の年金受給額は、厚生年金や国民年金を納付した額によって決まります。2016年の厚生労働省の調査によると、大学卒業後すぐに就職してから60歳の退職まで厚生年金を納付し続けた人の場合、年金の平均受給額は、国民年金が毎月5万5,000円ほど、厚生年金が毎月14万5,000円ほど。すなわち毎月20万円ほど年金をもらえる計算です。
しかしこれは一般的な金額であり、もらえる年金は納付していた年数にもより、ずっと自営業を営んでいた人は国民年金のみの給付となります。さらに、障害年金をもらっている人は国民年金を受給できませんので、人によって毎月の年金受給額には差が発生します。区役所の年金課などに行けば概算をしてもらえますので、自分の受給額を教えてもらうと良いでしょう。
老後にはどのくらいのお金が必要か

総務省の資料によると、老後に必要なお金は退職前の生活費の7割ほどとなるようです。例えば月20万使っていた人は、退職後は14万円ほどで生活している人が多い、という統計が出ているのです。
すなわち、年収500万円もらっていた人が60歳で定年退職し、90歳まで生きた場合、500万円×0.7=350万円が1年間の費用となります。月に換算すると、毎月約29万2,000円。一概には言えませんが、毎月の年金額は20万円程度ですので、年金だけではやや現実的とは言えなさそうです。
年金と老人ホーム入居
価格が安い老人ホームは競争が激しい
一般的な有料老人ホームの月額利用料は6万円~20万円程度。厚生年金をしっかりと納付した人なら年金を20万円程度もらえますので、何とか支払える金額ですが、国民年金のみ受給している人は厳しいでしょう。
今の日本では、厚生年金をあまりもらえていない人、国民年金だけの人が多いという現状。さらに、もらえる額も徐々に下がっており、年金だけで老人ホームに入居するのは難しいのも事実です。そのため、ケアハウスのような低価格の施設の競争率がますます激しくなっています。
年金のみでの老人ホーム利用は可能?
年金だけでは厳しいといっても、退職後に年金以外の収入がある人はあまりいないでしょう。年金だけで老人ホームに入居するためには、ケアハウス(軽費老人ホーム)のような格安の施設を選ぶか、生活保護を利用します。生活保護が適用されると月額利用料の中の家賃や介護保険サービス代などが控除されますので、老人ホームでの生活も現実的となります。
一方で、おむつ代などの日用品の費用や、病気の際の病院代などは別途かかるため、年金の収入のみで老人ホームへの入居を考えている人は、しっかりと必要な費用額を計算した上で入居を考える必要がありそうです。
生活保護受給者が老人ホームを探すときに注意するポイント

生活保護の受給金額は、市区町村の家賃相場や物価、世帯人数や収入などによって変わるため、一人ひとり違います。そのため、あくまで一般的な話になりますが、一人暮らしの方の場合、家賃扶助と生活扶助を合わせると、月額は概ね8万2,000円~12万9,000円程度。
特に市町村によって生活保護の扶助額の上限が違いますので、お住まいの場所と違う市町村で老人ホームを探す場合は、上限などを確認しておきましょう。万が一、老人ホームの入居を決めた後にもらえる保護金の限度額が違っていたら、入居を断念せざるを得ないといったケースも存在するようです。
一般的には都心部の方が毎月の費用は高く、郊外や山間部の老人ホームの方が格安な場合が多いです。生活保護受給者が入居できそうな老人ホームを探す場合、都心から離れたエリアで探した方が、入居先が見つかる可能性が高まります。
最近はホームページなどに「生活保護OK」と明記している老人ホームも増えました。書いていない場合も、地域包括支援センターのケアマネージャーに相談することは一考でしょう。