うつ・鬱病でも対応が可能な施設特集
鬱病予防のためにも生きがいを持てる介護施設を

うつ病を発症する高齢者の数が増えています。身体的な衰えによる運動量の低下や、一人暮らしからくる孤独、近親者との死別など精神的なダメージなどがきっかけとなり発症する高齢者うつは、周囲が気づけないことも多いもの。もし発症してしまったら、専門医による適切な治療が必要であるとともに、日頃から予防に取り組むことも大切です。介護施設では高齢者の心の健康づくりに積極的なところも多くありますので、ご自身にあった施設を探しましょう。
うつ(鬱)病患者への対応が可能な老人ホームとは?
最近はストレス社会、長時間残業(過重労働)の問題がクローズアップされ、テレビや新聞などでで「うつ(鬱)病」が取りあげられることがふえました。この病気は世間の人たちに広く認識されはじめていますが、なかには「怠け者の言い訳」「怠け者病」と偏見をもっている方もいます。ここではうつ(鬱)病に関する情報と、うつ病患者受け入れ可能な老人ホームについてご紹介しています。
うつ(鬱)病の数は年々増加傾向にあり、患者数は70万人を超えると言われています。決して珍しい病気ではありませんし、誰でも発症する可能性があります。うつ病は気持ちの落ちこみや意欲の喪失が一時的なものではなく、長期にわたってつづく状態です。気分の落ちこみや意欲低下だけではなく、不安感や焦り、興味や喜びなど感情の喪失、集中力の低下、過剰な罪悪感などの精神的な症状があらわれます。こころの症状だけではなく、睡眠障害や疲労感、倦怠感、食欲減退、動機、息苦しさ、体の痛みなど体にも症状があらわれます。
うつ病の治療法は大きくわけて2種類、薬物治療とカウンセリングです。初診では看護師や医師に日頃の症状や悩みなどの問診をおこなう、その症状から医師が診断をくだします。うつ病と診断されるケースもありますし、うつ病になりかけているという診断がつくことも。症状が進行していればすぐに治療薬が処方され、服薬しながら定期的に通院することになります。
高齢者がうつ病になり、老人ホームへの入居を希望した場合はどのような点に注意すればいいのでしょうか?うつ病では意欲低下や不安感、感情の喪失、睡眠障害、食欲減退、体の痛みなど、さまざまな症状がみられます。睡眠障害は入眠障害(寝付けない)、中途覚醒(真夜中に起きてしまう)、早朝覚醒(本来起きる時間ではない早朝から起きてしまう)の3種類に分類されますが、老人ホームの場合は介護スタッフが24時間365日施設に常駐していますので、目が覚めても職員とともに一緒に過ごす、お茶を飲むといったケアは可能です。
食欲減退に関しては、食事介助で介護スタッフのケアを受けることはできますが、もともとない食欲を職員がもとに戻す、改善させることは基本的にできません。食欲不振が長く続くと免疫力低下、筋力低下、脱水症状、骨密度低下、認知機能低下などさまざまな症状を引きおこします。介護施設は生活の場であり、病気治療の場ではありません。そのため通院して病気の治療をおこなう、また症状が緩和しない場合は状況によって入院する必要があります。
うつ病患者の受け入れが可能な老人ホームであっても、本人の症状やその深刻さによっては入所を断られるケースもあります。入所前に施設側の職員とよく話し合いましょう。
高齢者に特有のうつ病…って何?
高齢になると肉体的な衰えや自身の病気、人間関係や住環境の変化、配偶者との死別、経済的な状況など「悩み」が増えていきます。高齢になると経済的にも精神的にも安定した生活がおくれるというイメージがありますが、必ずしもそうとは言えません。高齢者のうつ病有病率は約13%と言われており、決して少なくありません。うつ病になりやすい年代は、男性の場合40歳代がもっとも多くなっています。ところが女性は30歳代から70歳代まで患者数が多い状況がつづいており、60歳代以上になると女性のうつ病患者は男性にくらべて約2倍になっています。
では高齢者がうつ病(老人性うつ病)を発症する原因はどこにあるのでしょうか?
1・配偶者の死
2・自身の病気、ケガ、またその後遺症
3・生活環境や家族構成の変化
配偶者の死や病気をきっかけにしてうつ病を発症するケースがありますが、これはどういうことなのでしょうか?それまで頼りにしていた旦那さんを亡くすと経済的に困窮する可能性も高くなりますし、家長としておこなってきたことをすべて一人で背負わなければなりません。逆に奥様が亡くなると、それまでまかせっきりだった家事を一人でこなす必要があります。そのストレスや孤独感によってうつ病を発症する可能性も。
高齢になるとさまざまな病気リスクが高くなります。なかには深刻な病気になる方も。「もう病気が治らない」「このまま病気で死ぬのではないか」という不安感や絶望感、また病気が治っても後遺症がのこることも将来への希望を失う原因になります。これらの原因によって老人性うつ病を発症する可能性が高くなります。
生活環境や家族構成の変化は、老人ホームへの入所や息子一家と同居をはじめるなど、住環境や人間関係が変わってしまうことも老人性うつ病の原因になります。老人ホームへの入居や引っ越しは、それまで慣れ親しんだ環境が急に変化することになり、本人にとっては大きなストレス。「最近様子がおかしい」「元気がない」と思えるときは、早めに医療機関を受診しましょう。
ではつぎに老人性うつ病の症状についてご説明しましょう。老人性うつ病で多い症状には「体のあちこちが痛いといつも言う」「趣味に興味がなくなった」「気分が落ちこみ、口数が減る」「もの忘れが酷くなったという」などのほかにも、実際は家にお金があるにもかかわらず「お金がない」と周囲にいう貧困妄想、窓の外に誰もいないのに「誰がいる」と叫ぶ幻視などの症状がでることも。これらの症状は認知症や統合失調症と見分けがつかないこともあります。医師も100%正しく病気を判断できないケースもあるため、患者の症状を日々観察する必要があります。
「老人性うつ病」と診断されていても、記憶力が低下する、徘徊、何度も同じ会話を繰りかえすなどの症状がみられる場合は「認知症」を発症していると診断がつくことも。老人性うつ病と認知症を同時に発症することも十分考えられますので、家族が「うつ病だから認知症にはならない」と勝手な判断をしないことです。少しでもおかしいと感じられた場合は、医療機関を受診しましょう。
うつ病患者の自殺を防ぐためにも正しい知識を
「年齢別自殺者数の推移」のデータをごらんください。2014年のデータでは全体の自殺者数は25,427名となっており、その年齢別の内訳をみるともっとも多い年代が60歳代で4,325名、つぎが40歳代の4,234名、そして50歳代の4,181名とつづきます。若者の自殺はテレビや新聞などで大きく取りあげられ、とくにいじめによる自殺は社会に大きな衝撃をあたえますが、じつは60歳以上の高齢者の自殺者数は全体の約4割を占めており数が多くより深刻なのです。
では高齢者の自殺の原因・動機についての円グラフをみてみましょう。高齢者の場合、一番多い動機は「健康問題」で全体の50.6%。高齢になると免疫力や体力の低下、また生活習慣などにより病気にかかりやすく、なにかしら持病をもっていることも珍しくありません。また重篤な病気になるケースも少なくありません。「もう病気は治らない」と考えると将来に希望がもてなくなり、絶望して死を選ぶ可能性も。同居する家族に対し「もうこれ以上迷惑をかけたくない」という家族を思う気持ちから、自殺をする高齢者もいます。ほかに高齢者の自殺の原因・動機としては「経済・生活問題」が16.2%、「家庭問題」の14.3%がつづきます。
家庭問題(3644人) | |
健康問題(12920人) | |
経済・生活問題(4144人) | |
勤務問題(2227人) | |
男女問題(875人) | |
学校問題(372人) | |
その他(1351人) |
高齢者の自殺に健康問題や経済・生活問題、家庭問題などのトラブルがひそんでいますが、これらの問題に直面する高齢者がすべて自殺するわけではありません。これらの問題にくわえ、こころの病気(うつ病や統合失調症)を発症した場合に、自殺する可能性が上昇するのです。
うつ病は、認知症や統合失調症などと同じ脳の病気です。決して「なまけ者の病気」ではありません。真面目で手抜きができない、しっかりした性格の方が発症しやすいと言われています。気持ちが落ちこむ、生きる意欲がなくなる、朝はとくに体が動かないなどの症状は、抗うつ剤を服用することでずいぶん良くなります。「うつ病は恥ずかしい病気」「なまけ者の言い訳」と誤解してはいけません。うつ病患者の自殺を防ぐためにも、患者本人はもちろん、周囲の人たちも正しい知識をもちましょう。