山陰地方の「東側の玄関」に今、介護施設が増えています

鳥取県で最大の面積を誇る、鳥取市。
鳥取市は「日本一、人口が少ない県庁所在地」であることで有名です。
しかし、京都や兵庫、大阪といった近畿地方や、中部地方の中継地点となることが多く、存在感は決して矮小なものではありません。
2005年に、山陰地方では史上初となる特例市の指定を受けたことも、その証拠となるでしょう。
鳥取市は、鳥取砂丘や因幡三山のような自然のダイナミックさを活かした観光スポットが多いほか、博物館や美術館も多く、市内を散策すると飽きることはありません。
また、鳥取市には鳥取空港をはじめ交通ルートが大量に確立されています。
鉄道はJRのみですが、山陰本線と因美線が開通。
道路事情に至っては、高速自動車道の知名度が群を抜き、次いで山陰自動車道と鳥取豊岡宮津自動車道の利用率の高さが光ります。
そしてバスとタクシーについては、それぞれ片手の指では収まらないほどの種類があります。
自力で車の運転が難しくなっても、自由に市内を行き来できる環境となっているわけです。
市内の人口は、20世紀の終わりまで一貫して伸び続けていましたが、少子高齢化によって、10年ほど前から減少に転じています。
高齢化設備に至っては、近年の鳥取市は、粛々と高齢者介護の整備を進めている段階と言えるでしょう。
市内の介護施設は、公営か民間経営かを問わず各地に建てられており、予算や入居条件、サービスの内容を、市民が好きなように選べる状況になっているわけです。
個性豊かな施設が増えているので、それらの施設の特徴を一概に語ることは困難ですが、あえて書くとすれば、住宅型有料老人ホームについては、他地域と比べても料金の安い施設が多いようです。
鳥取市の高齢化率は32.7%
鳥取市は、鳥取県の県庁所在地。
鳥取県の東部にある中核市です。
市内にJR山陰本線と因美線の分岐点があり、因美線からは智頭急行の智頭線経由で京阪神直通特急が走行しています。
また、山陰自動車道で米子市や島根県松江市まで行くことができますし、鳥取自動車道は大阪市や神戸市とも繋がっています。
鳥取空港もあるお陰で、日本海側の東の玄関と言われているのです。
観光地としては鳥取砂丘、名物としては「砂丘らっきょう」や「21世紀梨」などが有名ですが、日本海に面しているため、海産物も美味しいのが魅力的。
夏期には海水浴やマリンスポーツも楽しめます。
しかし、2023年の調査によると、県庁所在地である都市の中では、山梨県の甲府市に次いで総人口の少ない街となっており、平成の市町村合併で市の面積が広がったため、人口密度も山口県山口市に次いで低くなっています。

国立社会保障・人口問題研究所「日本の地域別将来推計人口(令和5(2023)年推計)」
2023年の総人口は18万3,269人で、65歳以上の高齢者は5万5,547人で、高齢化率は30.3%です。
4人に1人以上は高齢者という状況で、今後さらに増え続けると予測されています。
将来推計によると、2025年には高齢者人口が5万7,225人、高齢化率は33.1%まで上昇するようです。
鳥取市は「軽度家事援助サービス」を実施して高齢者を支援
介護保険サービスの要支援・要介護認定者は増え続けており、2024年は1万909人。
2010年には8,458人、2015年に1万383人、2020年に1万1,002人、2023年に1万909人と推移。
2025年は団塊の世代がすべて後期高齢者になるため、鳥取市は介護保険サービスの提供体制の整備などに急いでいる状況です。

2016年より、小規模のデイサービスが地域密着型サービスに移行したのもあってか、地域密着型サービスの利用者が大幅に増加。
そのため、居宅サービスの利用は横ばい状態となっています。
しかし、訪問介護や訪問看護、ショートステイといった居宅サービスは全体的に需要が高く、サービスを提供する事業所の増設や、スタッフの増員が鳥取市の課題です。
また、介護ベッドや車イスなどがレンタルできる福祉用具貸与サービスも利用者が多いので、鳥取市は居宅サービス以外の介護保険サービスにも目を向け、サービス向上のためのさまざまな取り組みを行っています。
一つネックなのは、介護保険が適用されるサービスの利用回数は制限があり、訪問介護による家事代行サービスなどが十分に受けられない人もいることです。
特に、病気や怪我の際は利用回数を超えたケアが必要ですが、「そのときだけ利用回数を増やす」といった臨時変更ができません。
そのため、鳥取市は「軽度家事援助サービス」を実施し、援助員を高齢者宅に派遣。
ゴミ出しや掃除、炊事といった簡単な家事援助を行い、介護保険サービスを補いながらトータルケアを目指しています。
介護予防のための「こころの相談窓口」も設置
鳥取市は介護予防・介護の重度化防止活動として、健康増進事業や食育事業、ふしめ歯科検診の推進など、さまざまな活動を行っています。

がんや生活習慣病の予防として、食育推進員による食生活指導を実施。
自宅での健康的な生活が上手にできない人には、養護老人ホームに宿泊する「生活管理指導短期宿泊サービス」を使うと、体調を調整するとともに、生活習慣などの指導を行ってくれます。
肺がんなどの各種がん検診も実施していますし、こころの健康づくり事業として、「こころの相談窓口」も設置。
鬱病などの心の病気を予防しています。
さらには、喫煙や飲酒による病気の発症を防ぐため、喫煙や適量飲酒を推奨する活動も行っています。
健康を守るために歯も含めた口腔機能の健康や、嚥下力の維持も重要として、歯科検診や口腔機能維持・健康教室をしているのです。
また、地域包括支援センターが中心となり、運動や口腔内の健康、栄養について学べる通所型の教室「おたっしゃ教室」を開催。
65歳以上の鳥取市民なら誰でも参加可能です。
教室を定期的に開催することで、高齢者の運動習慣の定着を補助しています。
1回500円ほどかかりますが、開催会場までの往復が難しい人は、送迎もあるのが魅力です。
加えて、介護予防と地域交流を目的とした「しゃんしゃん体操」や、認知症予防につながる「しゃんしゃんコグニサイズ」も推進しています。
地域の人々が自発的に体操に取り組めるよう、しゃんしゃん体操普及員も育成中です。
在宅介護者にアドバンス・ケア・プランニングを推奨
鳥取市では、住まいや医療、介護、介護予防、暮らしの支援などを一体的に提供する地域包括ケアシステムを構築しています。
歳を重ねても、住み慣れた場所で安心して生きていけるよう、高齢者のサポートに努めているわけです。
介護保険の認定者の中で、認知症高齢者が増加しているのも問題となっており、2017年の調査によると、認知症の症状で日常生活に支障が出ている人は6,558人。
65歳以上の第1号被保険者の約8人に1人は認知症高齢者となっています。

歳を重ねるほど認知症高齢者の割合が高くなっており、75歳から84歳までが11.3%、85歳以上の人が40.5%を占めています。
そのため、鳥取市ではグループホームや認知症対応型デイサービスなどのサービスを充実したり、認知症ケア講座や介護教室を開催。
認知症サポーターの育成も行っており、認知症高齢者とその家族をサポートしています。
鳥取市は医師会や宅医療介護連携推進室と連携し、高齢者にACP(アドバンス・ケア・プランニング)を推奨しています。
ACPとは、家族や周囲の人と予め自分の最終段階の医療や介護について話し合うことで、高齢者の希望にそった医療や介護を行うための対話です。
また、緊急通報受信サービスや福祉電話設置サービスを実施し、高齢者の孤立化や孤独死の防止を進めています。
さらには、配食サービスで栄養が取れていない高齢者の食事内容を改善するとともに、安否確認を実施。
生活管理指導員やあんしん介護相談員を派遣し、相談や支援も行っています。
鳥取市の福祉サービス運営適正化委員会とは?

鳥取市では、高齢者向けにさまざまな相談窓口を用意しています。
基本的には地域包括支援センターが相談窓口となっており、介護や福祉についての相談だけでなく、高齢者の虐待、権利の侵害についても相談可能です。
暴力などの身体的な虐待だけでなく、介護などの世話をしない、暴言を浴びせる…など、幸せに生きていく権利の侵害について相談できます。
高齢者本人だけでなく、地域住民からの相談も受け付けており、「近所のおばあちゃんがいつも顔を怪我している」といった通報にも対応。
プライバシーは絶対に秘密にされるので安心です。
また、「安心ホットラインサービス」は、急病や災害などの緊急事態に、福祉電話などから簡単にSOSが発信できるサービスで、状況に合わせて、協力員などが援助のために連絡や調整を行います。
「体が動かない…」といった非常事態の際は、遠慮なく相談すると良いでしょう。
そして、「あんしん介護相談員」の派遣サービスでは、介護保険サービスを提供している事業所や介護施設に、あんしん介護相談員を派遣。
利用者の疑問や不安、不満の解消を図り、サービスの向上を目指します。
相談は無料で、介護保険サービスを受けている利用者の家族からの相談にも対応しています。
さらに、「ファミリー・サポート・センター」では、高齢者の希望と「経験を活かして手伝いをしたい」と考える「協力会員」をマッチングさせるお手伝いをしています。
「食事の準備を手伝って欲しい」「ちょっと掃除をして欲しい」といった相談が可能です。