訪問介護・デイサービス併設の施設特集
訪問介護・デイサービス併設タイプで介護スタッフが身近にいる安心を

バリアフリーなど高齢者にとって住みやすい環境と安否確認サービス・生活相談サービスのみを提供する「サービス付き高齢者住宅」や、介護サービスは外部サービスを利用することになる「住宅型有料老人ホーム」などには、入居者が介護サービスを利用しやすいように訪問介護やデイサービスを併設する施設があります。住宅内に介護スタッフが待機しているため安心して介護サービスを利用し毎日を過ごせる、訪問介護・デイサービス併設型の施設をここではご紹介します。
訪問介護・デイサービスを併設している老人ホームの特徴は
最近の住宅型有料老人ホームや介護付き高齢者向け住宅では、訪問介護やデイサービス併設対応が増えています。住宅型有料老人ホームや介護付き高齢者向け住宅の入居者は、要支援・要介護認定されている場合に施設に併設された事業所、または外部の居宅サービスを利用することができます。居宅サービスとは訪問介護やデイサービス、訪問看護などのことです。
それでは、訪問介護・デイサービス併設タイプの老人ホームで提供されているサービスはどのようなものなのでしょうか。訪問介護では食事・入浴・排泄・着替え・移動・外出・体位変換の介助、入居者の体を拭いて清潔にする清拭、薬を飲ませる介助(服薬介助)などがあります。ほかにも部屋の清掃や洗濯などの家事援助サービスも。
デイサービスではレクリエーション活動や機能訓練が実施されます。レクリエーション活動では指先を使う手芸やぬり絵、貼り絵、絵手紙作成などが行われ、施設に庭があれば家庭菜園をつくり園芸療法も楽しめます。施設によっては足浴やフットケア、マッサージ、メイクアップセラピー、アロマセラピーなど、認知症の予防や症状緩和にも役立つリハビリをメニューに組みこんだ施設もあり、利用者が飽きないような工夫がされています。訪問介護・デイサービス併設タイプの老人ホームは、つねに介護スタッフがそばにいて見守りをしてくれることがメリットであり安心感につながっています。
以下の表は厚生労働省がまとめた平成25年と平成26年の居宅サービス事業所数です。平成25年と平成26年を比較してみると、訪問介護は1,150か所(3.5%)増、訪問看護ステーションは750か所(10.5%)増、通所介護(デイサービス)は3,533か所(9.3%)増、通所リハビリ(デイケア)は237か所(3.4%)増と、居宅サービス事業所は軒並み増加しています。この流れは今後も継続するとみられ、今後は居宅サービスが主流になっていくと予想されます。
平成25年 | 平成26年 | 増減数(増減率) | |
---|---|---|---|
訪問介護 | 32,761 | 33,911 | 1,150(3.5%) |
訪問入浴介護 | 2,344 | 2,262 | -82(-3.5%) |
訪問看護ステーション | 7,153 | 7,903 | 750(10.5%) |
通所介護 | 38,127 | 41,660 | 3,533(9.3%) |
通所リハビリテーション | 7,047 | 7,284 | 237(3.4%) |
短期入所生活介護 | 9,445 | 10,251 | 806(8.5%) |
短期入所療養介護 | 5,377 | 5,382 | 5(0.1%) |
特定施設入居者生活介護 | 4,197 | 4,452 | 255(6.1%) |
福祉用具貸与 | 7,864 | 7,961 | 97(1.2%) |
特定福祉用具販売 | 7,902 | 8,018 | 116(1.5%) |
住宅型有料老人ホーム・サービス付き高齢者向け住宅では居宅サービスを利用するのが一般的
有料老人ホームのなかでも、デイサービスや訪問介護は住宅型有料老人ホーム・サービス付き高齢者向け住宅での利用に限られる、介護付き有料老人ホームでは使えないことになっています。これはどうしてでしょうか?
介護付き有料老人ホームでは、介護保険で利用できる介護サービスをすべて施設内で利用することが法律で決められています。介護保険上のきまりがあるため、介護付き有料老人ホームの入居者がデイサービスや訪問介護などの外部サービスを利用することができないのです。
ところが、住宅型有料老人ホームやサービス付き高齢者向け住宅の入居者は外部サービスの利用が可能となっています。もし老人ホームに入居後にデイサービスを利用したい場合はケアマネージャーと相談のうえ、ケアプランにデイサービスを入れてもらいましょう。そうすることで外部サービスを利用することができます。最近は老人ホーム内にデイサービスや訪問介護が併設されている施設も増えていますので、わざわざ車などで移動しなくても気軽に外部サービスを利用することができます。
住宅型有料老人ホームやサービス付き高齢者向け住宅では、入居者が自分の好みや体の状態によってさまざまなケアプランを自由に組み立ててもらえるのが魅力です。ただし自由度の高い老人ホームにも注意したい点があります。介護付き有料老人ホームの場合、利用料に介護保険1割負担額が含まれているため、毎月の総支払額が把握しやすいのですが、それ以外の住宅型有料老人ホームやサービス付き高齢者向け住宅では毎月の家賃・食費・共益費・寝具リース代・管理費と、介護保険負担額(時間外介護サービス費なども含む)とが分離されており、金額が把握しにくくなっています。
入居時に必要な費用をしっかり説明する業者もいますが、費用面で不安なことがあれば早めに相談しておくとあとでトラブルにならずにすみます。
介護度別に決められている在宅介護サービスの上限額に注意!
要支援や要介護になると利用できる介護サービスですが、毎月好きなだけサービスが利用できるわけではありません。介護度別に利用額の上限がさだめられています。
東京都の場合、要支援1の方の1か月の支給額は49,700円、要支援2では104,000円、要介護1では165,800円、要介護2では194,800円、要介護3では267,500円、要介護4では306,000円、要介護5では358,300円となっています。利用者の介護度が重くなればなるほど、介護保険の支給額上限があがっていきます。支給限度額を超える介護サービスを受けた場合、超過した分は利用者の全額自己負担となります。
ここでは在宅介護の自己負担額の表を掲示しています。訪問介護にかかる費用は「身体介護が中心」なのか「生活援助が中心」なのかで負担額も変わってきます。また利用した時間によっても介護費用が変わります。
たとえば食事・入浴・排泄介助などの身体介助が中心であった場合、1時間以上の利用であれば564単位と決まっています。1単位が10円の地域では5,640円の介護サービスが提供されたことになります。利用者の負担は1割なので、利用者は564円を訪問介護事業者に支払います。訪問介護サービスを月に15回利用したなら、15回×564円なので8,190円が利用者の負担額になります。
通所介護(デイサービス)に関しても費用の決まりがあります。通う施設が小規模型通所介護なのか通常規模型通所介護なのか、施設によって費用に差があります。また要介護ごと、そして利用した時間ごとに費用が異なります。たとえば、小規模型通所介護に要介護1の利用者が7時間以上9時間未満利用した場合は、735単位、1単位を10円とすると7,350円となります。本人の自己負担額は1割なので735円です。もし月に25回利用した場合、利用者本人の自己負担額はその1割である18,375円となるはずです。
ところがこの場合、要介護1で利用できる介護保険の上限は165,800円と決まっているため、デイサービスを25日利用すると183,750円となり上限額をオーバーします。差額の17,950円は全額自己負担となります。この方の場合は介護保険の1割負担額16,580円と超過分の17,950円の34,530円が自己負担額と計算されます。自己負担額を減らすためには、ケアマネと相談のうえ、利用限度額以内におさまるようなケアプランを作成してもらう必要があります。
2015年度版/在宅介護の自己負担額
<訪問介護費>
かかる費用(円) *1単位10円の 地域の場合 |
単位 | ||
---|---|---|---|
身体介護が中心である場合 | 20分未満の場合 | 1,650 | 165 |
20分以上30分未満の場合 | 2,450 | 245 | |
30分以上1時間未満の場合 | 3,880 | 388 | |
1時間以上の場合 | 5,640 | 564 | |
生活援助が中心である場合 | 20分以上45分未満の場合 | 1,830 | 183 |
45分以上の場合 | 2,250 | 225 | |
通院等のための乗車又は降車の介助が中心である場合 | 970 | 97 |
<訪問入浴介護費 >
かかる費用(円)*1単位10円の 地域の場合 |
単位 | |
---|---|---|
入浴 | 12,340 | 1234 |
<訪問看護費>
かかる費用(円) *1単位10円の 地域の場合 |
単位 | |
---|---|---|
指定訪問看護ステーションの場合 | ||
20分未満の場合 | 3,100 | 310 |
30分未満の場合 | 4,630 | 463 |
30分以上1時間未満の場合 | 8,140 | 814 |
1時間以上1時間30分未満の場合 | 11,170 | 1117 |
病院又は診療所の場合 | ||
20分未満の場合 | 2,620 | 262 |
30分未満の場合 | 3,920 | 392 |
30分以上1時間未満の場合 | 5,670 | 567 |
1時間以上1時間30分未満の場合 | 8,350 | 835 |
<訪問リハビリテーション費>
かかる費用(円) *1単位10円の 地域の場合 |
単位 | |
---|---|---|
3,020 | 302 |
<通所介護(デイサービス)費>
かかる費用(円) *1単位10円の 地域の場合 |
単位 | ||
---|---|---|---|
小規模型通所介護費 | |||
3時間以上5時間未満の場合 | 要介護1 | 4,260 | 426 |
要介護2 | 4,880 | 488 | |
要介護3 | 5,520 | 552 | |
要介護4 | 6,140 | 614 | |
要介護5 | 6,780 | 678 | |
5時間以上7時間未満の場合 | 要介護1 | 6,410 | 641 |
要介護2 | 7,570 | 757 | |
要介護3 | 8,740 | 874 | |
要介護4 | 9,900 | 990 | |
要介護5 | 11,070 | 1107 | |
7時間以上9時間未満の場合 | 要介護1 | 7,350 | 735 |
要介護2 | 8,680 | 868 | |
要介護3 | 10,060 | 1006 | |
要介護4 | 11,440 | 1144 | |
要介護5 | 12,810 | 1281 | |
通常規模型通所介護費 | |||
3時間以上5時間未満の場合 | 要介護1 | 3,800 | 380 |
要介護2 | 4,360 | 436 | |
要介護3 | 4,930 | 493 | |
要介護4 | 5,480 | 548 | |
要介護5 | 6,050 | 605 | |
5時間以上7時間未満の場合 | 要介護1 | 5,720 | 572 |
要介護2 | 6,760 | 676 | |
要介護3 | 7,800 | 780 | |
要介護4 | 8,840 | 884 | |
要介護5 | 9,880 | 988 | |
7時間以上9時間未満の場合 | 要介護1 | 6,560 | 656 |
要介護2 | 7,750 | 775 | |
要介護3 | 8,980 | 898 | |
要介護4 | 10,210 | 1021 | |
要介護5 | 11,440 | 1144 |
<通所リハビリテーション(デイケア)>
かかる費用(円) *1単位10円の 地域の場合 |
単位 | ||
---|---|---|---|
通常規模型リハビリテーション費 | |||
1時間以上2時間未満の場合 | 要介護1 | 3,290 | 329 |
要介護2 | 3,580 | 358 | |
要介護3 | 3,880 | 388 | |
要介護4 | 4,170 | 417 | |
要介護5 | 4,480 | 448 | |
2時間以上3時間未満の場合 | 要介護1 | 3,430 | 343 |
要介護2 | 3,980 | 398 | |
要介護3 | 4,550 | 455 | |
要介護4 | 5,100 | 510 | |
要介護5 | 5,660 | 566 | |
3時間以上4時間未満の場合 | 要介護1 | 4,440 | 444 |
要介護2 | 5,200 | 520 | |
要介護3 | 5,960 | 596 | |
要介護4 | 6,730 | 673 | |
要介護5 | 7,490 | 749 | |
4時間以上6時間未満の場合 | 要介護1 | 5,590 | 559 |
要介護2 | 6,660 | 666 | |
要介護3 | 7,720 | 772 | |
要介護4 | 8,780 | 878 | |
要介護5 | 9,840 | 984 | |
6時間以上8時間未満の場合 | 要介護1 | 7,260 | 726 |
要介護2 | 8,750 | 875 | |
要介護3 | 10,220 | 1022 | |
要介護4 | 11,730 | 1173 | |
要介護5 | 13,210 | 1321 |
<短期入所生活介護費(ショートステイ)>
かかる費用(円) *1単位10円の 地域の場合 |
単位 | |
---|---|---|
単独型短期入所生活介護費(Ⅰ)<従来型個室> | ||
要介護1 | 6,200 | 620 |
要介護2 | 6,870 | 687 |
要介護3 | 7,550 | 755 |
要介護4 | 8,220 | 822 |
要介護5 | 8,870 | 887 |
単独型短期入所生活介護費(Ⅱ)<多床室> | ||
要介護1 | 6,400 | 640 |
要介護2 | 7,070 | 707 |
要介護3 | 7,750 | 775 |
要介護4 | 8,420 | 842 |
要介護5 | 9,070 | 907 |
単独型ユニット型短期入所生活介護費(Ⅰ)<ユニット型個室> | ||
要介護1 | 7,180 | 718 |
要介護2 | 7,840 | 784 |
要介護3 | 8,550 | 855 |
要介護4 | 9,210 | 921 |
要介護5 | 9,870 | 987 |
単独型ユニット型短期入所生活介護費(Ⅱ)<ユニット型準個室> | ||
要介護1 | 7,180 | 718 |
要介護2 | 7,840 | 784 |
要介護3 | 8,550 | 855 |
要介護4 | 9,210 | 921 |
要介護5 | 9,870 | 987 |
<短期入所療養介護費(ショートステイ)>
かかる費用(円) *1単位10円の 地域の場合 |
単位 | |
---|---|---|
介護老人保健施設短期入所療養介護費(ⅰ)<従来型個室> | ||
要介護1 | 7,500 | 750 |
要介護2 | 7,950 | 795 |
要介護3 | 8,560 | 856 |
要介護4 | 9,080 | 908 |
要介護5 | 9,590 | 959 |
介護老人保健施設短期入所療養介護費(ⅲ)<多床室> | ||
要介護1 | 8,230 | 823 |
要介護2 | 8,710 | 871 |
要介護3 | 9,320 | 932 |
要介護4 | 9,830 | 983 |
要介護5 | 10,360 | 1036 |
ユニット型介護老人保健施設短期入所療養介護費(ⅰ) <ユニット型個室> |
||
要介護1 | 8,290 | 829 |
要介護2 | 8,740 | 874 |
要介護3 | 9,360 | 936 |
要介護4 | 9,890 | 989 |
要介護5 | 10,400 | 1040 |
ユニット型介護老人保健施設短期入所療養介護費(ⅲ) <ユニット型準個室> |
||
要介護1 | 8,290 | 829 |
要介護2 | 8,740 | 874 |
要介護3 | 9,360 | 936 |
要介護4 | 9,890 | 989 |
要介護5 | 10,400 | 1040 |
※上記の表では1単位10円で計算していますが、お住まいの地域によって1単位あたりの単価は変わりますのでご注意ください。
介護付有料老人ホームと比較したときのメリット・デメリットは?
有料老人ホームでも、介護付き有料老人ホームと住宅型有料老人ホーム・サービス付き高齢者向け住宅では「外部サービスの利用ができるかどうか」で差がついています。これがメリットになり、また同時にデメリットにもなります。
住宅型有料老人ホームのメリット・デメリット | |
---|---|
メリット |
・それまで利用していたケアマネージャーやデイサービス、ヘルパーを引き続き利用できる。デイサービスを気に入って利用している場合は、そのサービスを継続して利用できる。 ・介護が必要になった場合、好みの介護サービス事業者を選ぶことも可能。介護保険の上限まで介護サービスを自由に選択できるので、ケアマネージャーと相談しながらデイサービスやデイケア、訪問介護の回数を減らす、増やすなどの組み立てができる。 |
デメリット |
・利用したサービスごとに費用を支払っていくため、介護度が重くなると介護保険の利用限度額を超えてしまい自己負担になることがある。このようなことを防ぐために、利用限度額を超えないようにケアプランを作成してもらうこと。 ・住宅型有料老人ホーム・サービス付き高齢者向け住宅のスタッフは介護サービスを行なわないため、トイレ介助や着替え介助などを頼みにくいことがある。介護ケアを受けるためには、日中は必ずデイサービスに行く必要がある。 ・訪問介護サービスを利用することでも介護サービスを受けることができる。 |
パーキンソン病でも対応が可能な施設特集
パーキンソン病では、事故が起こらない安全な環境で、できるだけ体を動かすことが大切

「手足の震え」「筋肉の硬直」「歩行困難」「嚥下機能の低下」などの症状がみられるパーキンソン症。運動症状に加え、自律神経症状や不眠、うつ症状などもみられる病気で、高齢になるほど発症率が高まっています。運動機能障害により転倒など事故の危険性が高まり、日常生活を送ることも困難になることから、介護施設選びでは安全な住環境と適度に運動に取り組めるかどうかがカギ。リハビリの充実した、施設選びをしていきましょう。
パーキンソン病患者でも安心して老人ホーム選びを
原因不明の神経変性疾患として、40代、50代から発症者数が増え始めるパーキンソン病は、日本全国で患者数10万人以上と推計されています。
患者に高齢者が多いことから、今後も高齢化に伴い患者数が増えることが予想され、老人ホームでもパーキンソン病対応をしているところが少なくありません。認知症の方が医師からパーキンソン病の疑いがあると指摘される方も少なからずあるため、介護施設や老人ホームでパーキンソン病に対応しているかどうかをチェックすることは今時点でパーキンソン病を患っていない方にとっても大切です。
老人ホーム内でパーキンソン病患者の方が安心して暮らすためには、受け入れる老人ホーム側がパーキンソン病特有の症状を理解し、ケア体制を整えていることが何よりも大切です。
主なパーキンソン病の症状としては、安静時の手足の震えや、歩行などの動きがゆっくりになる動作緩慢、姿勢保持ができなくなる姿勢反射障害、歩幅が狭くなり最初の一歩が踏み出せなくなる歩行障害、筋固縮などが挙げられます。
体力が低下したから、と思いがちな姿勢反射障害は、何もないところでもバランスを崩し、転倒にもつながってしまう可能性がありますから、ケアや生活サポートの中できちんと老人ホーム側が注意をしてくれる環境でないと、転倒時による怪我なども心配されますよね。
パーキンソン病が進行すると日常生活にも大きな支障が出てしまい、食べものを飲みこめない嚥下障害や体が動かせなくなることからくる寝たきりなどになる可能性もゼロではありません。症状が軽い場合でも、スタッフの早期かつ適切なケアは今後病気が進行していく上でも非常に大切となってきます。
また、認知症を併発したパーキンソン病の場合、問題行動が増えることが予想されますから、老人ホームによってはこうした「問題行動に対応できない」「嚥下機能低下をケアできない」などの理由で入居自体を断られることもあります。
しかしながら、近年では治療法の開発も進み、パーキンソン病を発症しても薬の服用により症状の進行を緩和し、日常生活を送れるケースは多くあります。また、歩行障害や排泄障害、摂食障害、精神障害などパーキンソン病の症状が見られたとしてもケアが可能な老人ホームはもちろんあります。大切なことは、今の症状をしっかりと入居の際に伝え、適切なケア環境にあるかどうかをじっくりと確認・相談することです。
パーキンソン病であっても老人ホームへの入居はできる、そう考えて入居先を探してみましょう。
パーキンソン病とは? その原因、症状について
日本での有病率は1,000人に1人とも言われ、決して珍しい病気ではないパーキンソン病は、50代・60代、場合によっては70代で発症するケースも少なくありません。
パーキンソン病が原因で介護が必要になる方も多く、家族にとってはきちんと症状を把握して治療や日常生活でのサポートの活かしてあげることが大切です。
パーキンソンの原因は、脳内の神経伝達物質・ドーパミンが減少することが原因と考えられていますが、なぜドーパミンが減少してしまうのかはまだ理由がはっきりとわかっていません。
ドーパミンの分泌が減少すると、体の片側から症状が始まり、全身へと進行していくのが特徴で、代表的な症状としては手足の震えやこわばり、動作が緩慢になる、姿勢反射障害により転びやすくなるなどが挙げられます。
また、便秘や立ち上がった際にくらんでしまう起立性低血圧、睡眠障害、抑うつなど、自律神経障害や精神症状が見られることもあります。
歩幅が狭くなり倒れやすいと同時に歩き始めに足がすくんでしまい、最初の1歩が出づらい一方で歩き始めると止まれない歩行障害は転倒の原因にもなりやすく、周囲のサポートや見守りが必要になります。また、字が小さくなるなども歩行障害と同様によく見られる運動障害の一つです。
ときには、気持ちや意欲が落ち込み、自発性がなくなる、認知機能が低下するなど認知症症状にも近い症状が見られると同時に、認知症と併発するケースも少なくありません。
自律神経障害、運動障害、睡眠障害、精神障害などさまざまな症状が現れるパーキンソン病は薬物治療や手術治療と合わせて運動療法(リハビリテーション)が有効な場合もあります。
パーキンソン病の方の老人ホーム入居を検討する際には、今どのような症状が見られ、どんなケアやサポートが必要なのかを医師やスタッフなどと話し合うことも大切になってきます。
薬の名前 | 効能 |
---|---|
ドパミンアゴニスト | 脳内でドーパミンを受け取る部分であるドーパミン受容体を直接刺激することで、パーキンソン病の症状を軽減する。 |
抗コリン薬 | アセチルコリンを抑えることで、パーキンソン病の症状を緩和させる。 |
塩酸アマンタジン | 脳細胞を刺激してドーパミンの分泌を活発にする。 |
モノアミン酸化酵素 B阻害薬 |
ドーパミンの分解を阻害し、作用時間を延長する。 |
ドロキシドパ | 脳内でノルアドレナリンという物質に変わる。 パーキンソン病の進行期にみられるすくみ足に有効な場合がある。 |
パーキンソン病患者の老人ホームでの対応は?
パーキンソン病患者の方が老人ホームに入居する際に必ず確認しておきたいのが「どのようなケアやサポートが受けられるか」という点です。
自宅で日常生活を送れなくなれば、老人ホームを頼りにすることは当然の選択肢として考えられますが、リハビリテーションの有無や早期から適切なケアが受けられるかどうかなどをチェックすることはその後の老人ホームでの生活にも大きく関わってきます。
将来、症状が進行した場合には、認知症との併発や嚥下機能の低下なども考えられること。認知症との併発による問題行動が原因で入居を断る施設もありますから、入居先を選ぶ際には今の状況で対応がしてもらえるのか、将来症状が進行した場合にはどうなるのかをしっかりと確認しておくことが大切です。
パーキンソン病の方の介護にあたっては、進行性の病気のために徐々に自分で色々な日常動作を行うことが難しくなる点が忘れてはならないポイントです。介護においては、日常生活を安心して送るためのサポートと同時に、できる限り自分で動ける・行動できる期間を伸ばすためのリハビリを積極的に行えるかどうかもチェックしたいところ。
また、日常生活を送るなかで本人が焦らないように、温かく見守ってくれる雰囲気のもと、本人ができることは自分でやれるようなサポートがあるかも大切。
運動療法によりできることを増やしていくリハビリテーションの充実は、パーキンソン病の進行を緩和したい方にはやはりとても大切なチェックポイントです。
また、食事においては料理を口に運ぶ動作がよりスムーズにできるようにするための食器や食べる環境への配慮があるかどうかは見ておきたいポイントです。また、パーキンソン病においては歩行障害が多くみられ、すり足歩行や小刻み歩行、すくみ足、前方突進減少、姿勢保持反射障害など住環境への配慮が必要な場合が多くあります。
老人ホームであればその点は安心ですが、念のためきちんと安全が確保されているのかどうかを見学時などに見ておきまそう。
「パーキンソン病患者の受け入れ可」という老人ホームも増加中!
ご自身もしくはご家族が、パーキンソン病を発症したとき、不安に感じるのがパーキンソン病でも老人ホームに入居できるか、という点です。
高齢になるにつれて発症者も増加していくパーキンソン病は、介護が必要になる原因としてそれほど珍しいことではありませんから、パーキンソン病の方が入居できる老人ホームはたくさんあります。
ただ、注意したいのが症状の進行具合によって嚥下障害や認知症の併発などが見られる場合です。飲み込む力が低下する嚥下障害になると、食事内容への配慮や食事介助の必要が生じるため、こうしたケア体制がない施設の場合は、嚥下障害のある方は入居を断るというケースもあります。また、認知症を併発し、問題行動が見られる場合も同様です。
パーキンソン病患者は、認知症発症リスクも4から6倍ほど高まるという研究もあり、認知症との併発は心配ですが、グループホームは自立ある暮らしを支援するための施設のため、パーキンソン病では入居ができないケースが多いとも言われていますので、各施設に確認してみることが大切です。
高齢者に多いパーキンソン病は60歳以上の場合100人に1人が発症するという推計もあるため、それほど珍しい病気ではありません。パーキンソン病患者の受け入れについて、「受け入れ可」と謳う老人ホームは珍しくありませんから、諦めずに、ご希望の地域や価格帯で対応してくれる老人ホームがあるか探してみましょう。
パーキンソン病が軽度の場合には、今後の症状進行に伴う運動機能の低下を緩和するためのリハビリテーションや運動療法ができるかどうかを確認することも大切です。