前頭側頭型認知症・ピック病でも入居可能な施設特集
前頭側頭型認知症・ピック症患者が入所できる介護施設は貴重な存在
ピック症(前頭側頭型認知症)は、大脳の前頭葉と側頭葉が萎縮することで引き起こされる病気です。性格が変化し、同じことを繰り返すなどの行動障害や反社会的な行動をとるが症状としての特徴で、病気をなかなか周囲に理解してもらえないという悩みを持つ患者も少なくありません。介護保険対象での施設入所も可能ですが、徘徊や年齢の若さからくる介護の難しさなどから受入れ拒否をする施設も多く、入所できる介護施設は貴重な存在と言えます。
前頭側頭型認知症の方の老人ホーム選びは?
前頭側頭型認知症(ピック病)は、脳に特殊なたんぱく質が蓄積することにより脳の前頭部と側頭部が委縮し(縮んで小さくなり)発症する病気です。前頭側頭型認知症は50~60代と比較的若い方に多くみられる傾向があります。65歳未満で発症する若年性認知症のなかでも、アルツハイマー型認知症のつぎに多いと言われています。2015年に厚生労働省により指定難病となっています。
前頭側頭型認知症では、前頭葉と側頭葉が委縮していきますが、両方とも同時に発症するのではなく「前頭葉が先に委縮し、つぎに側頭葉が縮んでいく」または逆のケースも。ただし病気の症状がすすむと、結果的に両方とも委縮してしまいます。
前頭葉は人の感情や創造性、意欲、自発性をコントロールし、側頭葉は言語の理解や形態の認知などの役割があります。もしも前頭葉にダメージがおよぶと「一旦停止や赤信号を無視する」「スーパーやコンビニにある商品を万引きする」「毎日外にでて決まったコースを歩き回る」「急に人格が変わったように見える」などの症状があらわれます。側頭部がダメージを受けると「言葉を聞いても意味がわからない」「自分の話しはできるが、相手の話しが理解できない」「友人や知人の顔をみても誰なのかわからない」といった症状がみられます。
ここで紹介したような症状だけではなく、同じような行動を延々と繰りかえす、顔から感情が消えて気難しい表情になる、急に暴力や暴言に走る、集中力がなくなるなどの行動も。記憶力は比較的保たれているため、家族でも「認知症である」という認識がもちづらく「うつ病」や「統合失調症」を発症したのではないかと疑ってしまい、それが前頭側頭型認知症の発見と診断、治療を遅らせることになってしまいます。
前頭側頭型認知症患者が老人ホームへ入所する際には、本人の日頃の行動や問題点、注意点などを施設スタッフによく説明しましょう。前頭側頭型認知症患者の場合、善悪の区別がつかなくなっていることから、ほかの入所者の部屋に勝手に入りこんで個人の所有物やお金を盗む、平気で介護スタッフにセクハラをする、暴言や暴力に及ぶ可能性があります。前頭側頭型認知症患者の症状や行動にくわしい介護スタッフが常駐する老人ホームを選ぶと、トラブル時にできるだけ円満に解決できるよう配慮してくれます。ただし、本人の暴力や暴言などがあまりにも激しい場合は、入所を断られることもあります。
前頭側頭型認知症(ピック病)とは? その原因、症状について
「認知症の種類の割合について」というこちらの表をみると、一番多い認知症のタイプはアルツハイマー型認知症の55%、次が脳血管性認知症の19%、そしてレビー小体型認知症の18%、前頭側頭型認知症(ピック病)はその他に分類されており、病気の患者数は全体からみると少なめです。
アルツハイマー認知症(55%) | |
レビー小体型認知症(18%) | |
脳血管性認知症(19%) | |
その他の認知症(8%) |
前頭側頭型認知症(ピック病)の原因は、ほかの認知症同様よくわかっていません。外国では遺伝の可能性が指摘されていますが、日本ではそのような症例はごく一部を除いて、ほとんどないようです。前項でも触れましたが、この病気は脳の前頭部、ないしは側頭部が小さく縮むことによって発症します。脳内にピック球とよばれる異常構造物やTDP-43とよばれるたんぱく質がたまることが、脳の委縮につながっているとも言われています。
前頭葉や側頭葉がダメージを受けることで、感情のコントロールや理性が利かなくなり「赤信号でも平気で交差点をわたる」「店先にあるものを万引きする」「すぐに怒る」「他人の家に勝手に上がりこむ」などの問題行動を起こすようになります。アルツハイマー型認知症とはちがい記憶力は比較的保たれており、症状が進行しても「同じものを何度も買う」「家事の失敗をする」「家をでて迷子になる」などといった失敗は少ないのが特徴です。ただし理性的な行動がとれなくなるため、セクハラや暴力、暴言、万引きなどといった非社会的な行動に走りやすくなります。
自発性の低下も前頭側頭型認知症(ピック病)の特徴です。喜怒哀楽といった感情をあらわすことが少なくなり、一日中無表情・気むずかしい表情で過ごすことが多くなります。それまで続けてきた趣味に目を向けなくなり、自発性のない生活をおくることに。一日中ベッドで横になる、椅子に座った生活では筋力の低下をまねき、それが結果的に認知症の進行を早めることになる可能性があります。
前頭側頭型認知症(ピック病)の患者でよく見られる症状としては、毎日同じものを食べる、濃いめの味付けの食事を好む、甘いものを食べ続けるなどの常同行動や嗜好の変化があげられます。決まった時間に家を出て決まった散歩コースを周回する行動も。この場合、家を出て道に迷うことはほとんどなく、決まったコースをたどって家に帰りつきます。
側頭葉がダメージを受けることで言語障害があらわれることも。「電話」「ドア」など知っているはずの言葉を聞いても、その意味がわからくなります。また状況に関係なく、同じ言葉を何度も何度も繰り返すのは前頭側頭型認知症(ピック病)の特徴です。
脳血管性認知症の初期では、患者に病識がある場合が多く「もの忘れが多く変だ」「以前はできていたことができない」と自身の異変に気がつき、落ちこむことも。ところが前頭側頭型認知症(ピック病)の患者の場合は病識が一切ないため、本人が「病気である」ことを自覚できません。それが結果的に病気の診断や治療の遅れにつながります。
前頭側頭型認知症(ピック病)患者の介護のコツは?
前頭側頭型認知症(ピック病)の患者には「反社会的な行動」「自分勝手な行動」「無関心」「常同行動(つねに同じことを繰りかえす)」「言語障害」「喜怒哀楽の消失」などさまざまな症状があらわれます。とくに反社会的な行動は患者自身の名誉を傷つけ、家族にも迷惑をかける行為です。もしも患者が万引きや痴漢行為で警察に捕まったとしたら、家族としては怒りを感じたり、幻滅することでしょう。けれどそれが本人の意思ではなく、病気がさせたことだと気づく必要があります。反社会的な行為をしても罪悪感が一切ない、同じ反社会行為を何度も繰りかえすようなら、前頭側頭型認知症(ピック病)を発症している可能性が高くなります。できるだけ早く患者本人の異常に気づき、専門の医療機関を受診させて治療を始めましょう。
前頭側頭型認知症(ピック病)は常同行動や意味のない言葉の繰りかえし、自分勝手な行動という症状がでますが、家族が「やめなさい」と指示しても、その命令を聞くことはほとんどありません。毎日決まった時間に外にでて散歩をする常同行動がみられるなら、それを生活の一部にしてしまうことです。また毎日同じ食事ばかり食べると栄養バランスの偏りが、健康状態に悪い影響を与えることも。同じ食材ばかり買わないようにしましょう。嗜好の変化により甘いものばかり食べたがる患者もいますが、甘いものの食べ過ぎは生活習慣病の原因になります。好きなものばかりを買わないように配慮しましょう。
前頭側頭型認知症(ピック病)の患者は異食をしやすいとも言われています。甘い香りのする洗剤を「お菓子」と認識して食べてしまう可能性も。大変危険です。異食しそうなものは患者の手の届かない場所に保管しておきましょう。
前頭側頭型認知症(ピック病)患者の症状は理解できないことも多く、さらに激高すると暴力に走るケースもあるため、介護サービスを上手に利用して適度に息抜きの時間をつくることが重要です。