肝炎でも入居可能な施設特集
肝炎ウイルスに感染すると、肝硬変や肝臓がんを引き起こすことも
肝炎とは、その名の通り肝臓に起こる炎症です。その原因はアルコールによるものや自己免疫の低下などがありますが、群を抜いて多いのがウイルス感染。A型、B型、C型…といくつもある肝炎ウイルスですが、中でも多いのがB型、そしてC型。高齢者の感染も多く、慢性肝炎から肝硬変、肝臓がんなどへと進行することもあり、特に注意したい感染症です。ただし、これは感染を防ぐこともできれば、治療・コントロールが可能な病気。だからこそ、適切な看護、介護が受けられる介護施設への入居を検討したいですね。
肝炎ウイルス対策万全の老人ホームで安心の毎日を
B型肝炎やC型肝炎という病名、一度は聞いたことがあるのではないでしょうか。肝炎とは肝臓になんらかの原因で炎症がおこり、すこしずつ細胞が破壊され肝臓の機能が失われる病気です。
肝炎になる原因はアルコールや自己免疫異常などいくつかありますが、一番多いのは肝炎ウイルスへの感染です。肝炎ウイルスはA型やB型、C型、D型、E型といくつかのタイプに分類できます。国内で問題になるのはA型、B型、C型肝炎がほとんどです。それぞれのタイプにより、感染源や感染力などに違いがあります。
A型肝炎は、おもに水や食べ物から感染します。生ガキを食べた、衛生状態の良くない海外で感染したというのが主なパターン。病気が慢性化したり、肝臓ガンまで進行することはほとんどありません。重篤な状態になる危険性は、比較的少ないといえます。一部患者に劇症肝炎や急性腎不全の症状がみられます。A型肝炎にはワクチンがあるため、A型肝炎に感染するリスクが高いときはワクチン接種をおこないます。
B型肝炎は母子感染や輸血、血液製剤、手術などで感染する可能性があります。劇症肝炎や慢性肝炎、そして肝臓がんへと進行する可能性が。このB型肝炎はA型と同様にワクチンが開発されており、ワクチン接種によって感染が防げるようになっています。
C型肝炎はB型肝炎同様、輸血や手術など血液や体液などを介して感染する可能性があります。ただ、1984年に輸血血液中に対する抗体検査が導入されてから、血液を介した感染は激減し、肝炎が慢性化し肝臓ガンを発症する可能性があるため、C型肝炎と診断された場合は適切な治療をうけなければなりません。
では、老人ホームでの肝炎対策はどうなっているのでしょうか。老人ホームは生活の場所ですが、集団生活が基本です。さらに入所者以外にも介護スタッフや面会者、見学者、入居希望者、ボランティア、医師や看護師、委託業者などさまざまな方々が出入りします。しっかりとした感染症対策が必要です。
介護の現場では肝炎ウイルスをはじめとした感染症に対して、感染源を取りのぞき、感染経路を断つことを心がけています。吐しゃ物や排泄物、客痰や膿、使用済みの注射針やガーゼなどは感染源となるため、素手でさらわず手袋を使用して処理します。使用した手袋も同様に処分し、手指の消毒も入念におこないます。手指の消毒は感染対策の基本ですので、消毒がいい加減な老人ホームでは安心して入所できません。
感染経路の遮断としては、病原菌を持ちこまない・持ちださない・広げないことが基本。入念な手洗いやうがい、マスクの着用、清掃の徹底、手袋の使用などしっかりとした感染症対策が実施されている老人ホームを選びましょう。
みんなの介護では約9,000もの介護施設が紹介されていますが、肝炎対応の老人ホームは約3,701施設。これらの施設では感染症対策が徹底しているので、安心して入所できます。
肝炎ウイルス感染者は高齢者ほど多い!?
肝炎ウイルスのお話をする前に、肝臓の機能についてご説明しましょう。
肝臓は人間の体内にある臓器のなかではもっとも大きく、重さは約1.2~1.5㎏。よく知られた機能としては「解毒」があります。アルコールは肝臓で分解されますし、飲んだ薬の成分も最終的には肝臓で分解されます。肝臓の機能が低下すると、薬の効果がいつまでも残ることになります。肝臓の機能はほかにもあります。摂取した食べ物を分解する胆汁を分泌し、消化酵素を助ける働きも。食べ物から摂取した栄養を必要な栄養へ変えていく役割も重要です。肝臓の機能が衰えると体にさまざまな障害があらわれるため、肝炎ウイルスへの感染にはとくに注意しなければなりません。
肝炎ウイルスにはさまざまなタイプがありますが、とくに問題とされるのはB型肝炎とC型肝炎です。この2つのタイプの肝炎は、血液や体液を介して感染します。昔は赤ちゃんが出産時に産道を通りぬけるとき感染する「母子感染」が多くみられましたが、今ではしっかりした対策がとられており母子感染は減少しています。現在多い感染源は、性交渉やピアスの穴をあけるときに針を使いまわすなど器具の消毒が不徹底なこと。できるだけ感染しないよう、注意が必要です。
では、B型肝炎を発症したときの経過を見てみましょう。B型肝炎は「一過性感染」と「持続性感染」の2種類にわけられます。一過性感染は主に成人してから、持続性感染は主に乳幼児の時期に感染するケースとなります。一過性感染の場合、9割の患者がとくにおおきな症状もなくそのまま治癒していきますが、残りの1割の患者に急性肝炎の症状があらわれ、ごくまれに劇症肝炎から死亡にいたることがあります。
持続性肝炎の場合、9割の患者が症状など自覚のないキャリアとして過ごします。残り1割の患者が慢性肝炎となり、やがて肝硬変となり死に至る、また肝臓がんを発症して亡くなるというケースも。
では、C型肝炎ではどうでしょうか。C型肝炎は肝炎の症状がでていないキャリアも含めると約150~200万人もの患者がいると言われており、主に40代以上の感染者が多い傾向です。年齢別C型肝炎ウイルス抗体陽性率を見てもそれはあきらか。16~19歳までの患者数は100人のうち0.1人の感染率ですが、60歳~69歳になると100人のうち3人が感染している結果になっています。高齢者ほど肝炎ウイルスに感染している可能性が高い、と言えますね。
肝炎ウイルス感染者に対する老人ホームの対応をチェック
高齢になるほど感染しているリスクが高い肝炎。最近は肝臓がんで亡くなる方が1975年をさかいに急増。肝臓がんの原因の約8割が、C型肝炎が原因で起こるとされています。「たかが肝炎」と甘くみないことです。では、老人ホームではどのような対応をおこなうのでしょうか。まず、肝炎に感染している方が入所される場合です。もしも入所者にA型肝炎やB型肝炎患者がいる場合、勤務する介護スタッフは予防接種をおこないます。予防接種によって肝炎の感染リスクはかなりおさえられます。介護職員が肝炎に感染すると、そこから家庭へと病気が拡がっていく可能性も。病気は広げないことが基本です。
肝炎は比較的自然に治癒しやすい病気ですが、一部の患者の場合は慢性肝炎や劇症肝炎、肝硬変、肝がんへと進行する可能性も。とくに高齢になるほど肝炎ウイルスに感染している可能性が高く、免疫力・体力ともに低下しているので日頃からの見守り、観察が重要です。もしも肝炎に感染している入所者の体調が悪化した場合は医療機関と連携し、肝臓に異常がないかを検査し、体調不良の原因を調べて対応していきます。
また、肝炎の患者が下痢や嘔吐をした場合は、肝炎ウイルスを広げないためにも、吐しゃ物や排泄物を迅速に除去します。このとき、介護スタッフ自身への感染を防ぐためにも、マスク・手袋はかならず着用し、排泄物や吐しゃ物はビニール袋に密閉、使用した手袋やマスクはすぐに処分し、手指の消毒を徹底しておこないます。
肝炎ウイルス感染者に対しては、老人ホーム内でほかの入所者に感染が拡大しないよう管理をしています。ただ、肝炎ウイルスは空気感染しませんので、血液や体液に直接触れなければほぼ問題ありません。
問題としては本人は肝炎ウイルスに感染しているのに、自覚症状が一切ないため検査を受けず、無症状キャリアとして生活しているパターン。糖尿病患者でインスリン注射が必要な患者さんは、ほかの入所者と注射針の使いまわしをすることは避けましょう。どんな感染症にかかるのかわかりません。また吐しゃ物や排泄物に不用意に近づくこともやめましょう。すぐに介護スタッフを呼び、適切に処理してもらうのが一番です。