介護食が提供される施設特集
介護食は、嚥下能力が低下した高齢者の強い味方!
加齢によって筋力が低下したりすると、食べ物を飲み込む力も弱くなるもの。そんな高齢者にとって心強い味方となるのが介護食です。通常の食事と同じような見た目でも柔らかさなどが考えられたソフト食、飲み込みやすいムース食etc。これらの介護食は、当然ですが介護を必要とする高齢者のための施設で提供されています。そこでここでは、介護付有料老人ホームやサービス付き高齢者向け住宅を中心としてご紹介していきます。食事介助にどれくらい時間や労力を割いてくれるか、施設の介護スタッフの人員配置にも注目してみると良いでしょう。
老人ホームでの介護食は、嚥下能力が低下した高齢者の強い味方
老人ホームでは、一般的家庭やレストランで食べられるような普通食のほかに「介護食」を選択できる施設もあります。この介護食とは一体どのようなものなのでしょうか。
介護食とは嚥下能力が低下した高齢者向けに食材を柔らかく煮こむ、茹でる、食材を小さく刻む、食材をミキサーにかけて液状にするなどの手間を加えて、より食べやすく加工された食事のことを言います。老人ホームでは普通食のほかにも、嚥下能力を考慮して介護食も選択できる場合もあります。入居を予定している老人ホームが介護食にきちんと対応しているかどうか、事前によく確認しておくと安心です。また入居される方は、自身の嚥下能力についても、ある程度把握しておくことが必要です。
老人ホームでの食事は大きく3つのパターンで提供されています。1つは「老人ホームの調理担当スタッフが老人ホームにある厨房で食事をつくる場合」、それから「外注スタッフが老人ホームの厨房で食事を作り、提供する場合」、そして最後は「外部で調理された食事を、老人ホームの厨房で温めて配膳し、提供する場合」の3つです。
一番融通が利くのは1つ目と2つ目でしょう。食事の柔らかさや量を調節してもらいたいのなら、調理スタッフに直接お願いすれば調整できます。介護食に切り替えてもらいたい場合にもすぐに対応可能です。ところがメニューや調理をすべて外注におまかせしている老人ホームでは、食事の内容や量に対する要望に柔軟に対応できません。老人ホームを選ぶ際には、食事を誰がどこで作っているのかをきちんと把握しておくと入居後のトラブル回避になります。
「刻み食」「とろみ食」「ペースト食」など調理方法は様々
老人ホームやデイサービスなどの施設で提供される介護食には、3つの種類があります。「ソフト食」「きざみ食」「ペースト食(ミキサー食)」と呼ばれる介護食は「3大介護食」と呼ばれています。
「ソフト食」は、文字どおり食材を柔らかく煮こむ、茹でるなどして食べやすく調理したものです。高齢になると嚥下能力が低下し、噛むことや飲みこむことがむずかしくなりますが、柔らかく調理した食事であれば、噛みやすく飲みこみやすいので高齢者にも安心。舌でつぶせる程度の硬さであることもソフト食の条件です。最近は食材をミキサーにかけて砕いた後、食材の形に成形しなおした「ソフト成形食」もあり、これもソフト食として認識されています。
「刻み食」は、一般食やソフト食を食べやすいように小さく刻んだ食事のことです。噛む力や嚥下能力の低下した高齢者向けの介護食です。ただこの刻み食、たしかに高齢者向けの食事ではあるのですが、食材が細かく切って調理されているため、小さな食材が誤って気管に入ってしまう可能性があります。そのため刻み食は誤嚥を防ぐため、食材に水分を多く含ませたり、適度にとろみをつけるなどの工夫がされています。食材を細かく刻むため、食材の表面積が広くなり、雑菌が繁殖しやすくなる点にも注意しなければなりません。包丁やまな板などの調理器具の衛生管理、食材の温度管理も入念に行います。食材が小さいため、義歯の間に入ってしまう可能性も高くなります。食後の口腔ケアにも十分注意しましょう。
「ペースト食(ミキサー食)」は、これも嚥下能力が低下した高齢者向けの介護食で、食材をミキサーにかけて液状にしたものです。液状なので噛む必要がなく、嚥下能力がかなり衰えた高齢者でも簡単に飲みこむことができます。ただ水分が多いとむせてしまうこともあるので、適度にとろみをつけるなどの注意が必要です。
特徴 | 向いている人 | 向いていない人 | |
---|---|---|---|
きざみ食 | 食べ物を小さく刻んで食べやすくした食事 | ・噛む機能(咀嚼機能)の低下した人 ・義歯が合わない人 ・開口障害がある人 |
・唾液の少ない人 →飲み込むときにまとめられず、むせやすくなる ・入れ歯を使っている人 →食品の入れ歯と歯茎の間に入りやすくなる |
軟菜食 (ソフト食) |
よく煮込んだり茹でることで柔らかくした食事 舌でつぶせる硬さである食事 |
・噛む機能(咀嚼機能)の低下した人 ・食塊の形成が難しい人 ・飲み込む機能(嚥下機能)の低下した人 ・胃腸が弱い人 ・箸がうまく使えない人 |
ー |
ミキサー食 | ミキサーにかけて液体状にした食事 誤嚥を防ぐためにトロミ剤でトロミをつけることもある |
・飲み込む機能(嚥下機能)の低下した人 | ・食塊の形成が難しい人 →誤嚥しやすくなる |
嚥下食 | 柔らかく調理したものをミキサー等でペースト状もしくはゼリー状にした食事 | ・飲み込む機能(嚥下機能)の低下した人 | ー |
流動食 | 液状のおかずや重湯 (粥の上澄みの液) |
・手術後や高熱で胃が弱くなった人 | ・低栄養の人 →エネルギー・栄養素が少ないため注意が必要 |
このように介護食は、噛む力や嚥下能力の低下した高齢者にとって食べやすく加工されており、老人ホームでも入居者の嚥下状況によって食事の内容を普通食から介護食に切り替えて対応してくれるところもあります。老人ホームでの生活で、食事は入居者にとって大きな楽しみのはず。美味しく食べやすい介護職を提供している老人ホームなら、生きる喜びや楽しみを見いだすことができるうえに、誤嚥を防ぐことができます。
美味しく安全な食事が、生きる力や意欲の基礎となります。老人ホーム選びでは「食事」についてもおろそかにしないで、しっかりチェックしておきましょう。
介護食の基準は「ユニバーサルデザインフード」
介護食には「ソフト食」や「刻み食」「ペースト食」などいくつかの種類がありますが、それら食品の加工に関して統一された基準がありませんでした。最近は介護食もお湯で温めるだけ、レンジで加熱するだけで手軽に食べられるレトルト食品や冷凍食品が増えましたが、統一された基準がないため、利用者が商品を選択する際に混乱する可能性もあったのです。
そこで日本介護食品協議会では「ユニバーサルデザインフード」と呼ばれる基準を定め、嚥下状態によって最適な介護食が選択できるように介護食を4つの区分にわけています。区分1は容易に噛めるレベル、区分2は歯ぐきでつぶせるレベル、区分3は舌でつぶせるレベル、区分4はペースト状で噛む必要がないものとなっています。
このユニバーサルデザインフードの商品登録数は、年を追うごとに右肩上がりで増えています。2003年の商品登録数は31種類だったものが、2007年には320種類となり10倍にまで増加。さらに、2009年には505種類にまで増えました。ユニバーサルデザインフードが支持される理由は、消費者が商品を購入する際に迷わずにすむというメリットによるものでしょう。区分1~4を商品パッケージにしっかりと表示することにより、消費者が混乱することなく商品を購入できるようになりました。これからお店で介護食を購入しようと考えている方は、パッケージのユニバーサルデザインフード、4段階区分ロゴを目安にすると良いでしょう。
2003年(31品目) | |
2004年(156品目) | |
2005年(170品目) | |
2006年(225品目) | |
2007年(320品目) | |
2008年(345品目) | |
2009年(505品目) |
「ユニバーサルデザインフード」とは別に、農林水産省では、栄養価や食べやすさ、柔らかさなどをよりわかりやすく表示するために「スマイルケア食」という新しい介護食の分類を発表しました。食事に関する悩みがある高齢者に対し、フローチャートで最適な柔らかさ、食べやすさの食品を選ぶことができます。嚥下状態に問題がなければ「弱い力で噛める食品」「歯ぐきでつぶせる食品」「舌でつぶせる食品」の3つの種類のなから選ぶことが可能です。嚥下状態に問題がある場合は「ペースト状の食品」「ムース状の食品」「ゼリー状の食品」の3つの種類の食品から選択できます。食事の飲みこみにも噛む力にも問題がない場合は、個別相談しての対応です。
このようにさまざまなタイプの介護食をよりわかりやすく、選択しやすく分類し、商品選びに役立ててもらうための指針や基準が整いつつあります。自宅介護で介護食を購入される際には、商品パッケージに明記されているユニバーサルデザインフードのロゴを是非参考にしてください。