従業員一人あたりの平均利用者数は3.32人。相対的に手厚い介護を実践する介護施設が多数
群馬県南部に位置する人口約21万人規模の都市である伊勢崎市は、前橋市、高崎市、桐生市、太田市といった群馬県の主要都市に囲まれており、主要5市のひとつに数えられます。
近年、伊勢崎市では国道整備などが進められていますが、その結果、首都圏からの交通アクセスが非常に良くなり、人口の流入が活発化しています。
伊勢崎市の高齢者向け施設・サービスの利用費用相場は、入居金0~数十万円、月額利用料7万円~16万円程度。
伊勢崎市の場合、ハイグレード、高級志向の施設があまり存在しないこともあり、入居一時金や月額利用料について、手頃な金額に設定された施設が目立ちます。
現状は民間の老人ホームや高齢者向け賃貸物件などの数がやや不足していますが、従業員1人あたりの利用者数はあまり多くはないというデータもあり、手厚い介護が期待できる可能性も高そうです。
伊勢崎市の高齢化率は緩やかに上昇中
伊勢崎市は、群馬県の南部にある都市。隣接する桐生市とともに古くから絹織物が有名でしたが、現在では製造業が盛んになり、製造品出荷額は1兆円を超えました。
交通アクセスとしては、JRの両毛線、東武鉄道の東武伊勢崎線が運行しており、特に市の中心駅である伊勢崎駅は、東武伊勢崎線の起点・終点で、同線の重要なポイントとなっています。
高速道路としては、北関東自動車道が伊勢崎インターチェンジから利用可能で、路線バスとしては群馬中央バスや伊勢崎市コミュニティバス「あおぞら」が市内を走っています。
国立社会保障・人口問題研究所「日本の地域別将来推計人口(令和5(2023)年推計)」
伊勢崎市は、今では北関東でも屈指の工業都市となっているため、全国的に人口が減る都市が多いなか、伊勢崎市は人口が増えています。
2015年度には21万1,608人だった総人口が、2017年度には21万2,741人に増加。2023年には人口21万2,128人とやや減少がみられるもののほぼ横ばいの状況です。
高齢化率は上昇しており、2015年度には23.4%だった高齢化率が、2017年度には24.0%になり、2023年には25.6%となりました。伊勢崎市の高齢化率も緩やかに上昇中です。
さらに、総人口の減少の影響から、2040年には高齢化率が30%を超え、3人に1人は高齢者という状況が訪れるという推計が出ています。
その後も高齢化率は上昇し続け、2045年度には34.7%、2050年度には35.8%まで上昇するようです。
工業の発達した伊勢崎市は、まだまだ生産年齢人口や子どもの多い街ですが、高齢化が進み、高齢者の生活支援などが必須課題です。
近年、郊外型店舗が増えたため、中心市街地の空洞化が進んでおり、高齢者の買物などの代行や同行なども重要な生活支援として注目されています。
伊勢崎市では要介護3~5の重度の高齢者が多い
伊勢崎市の要支援・要介護認定者は年々増えており、2007年には5,978人だった認定者も、2017年には9,234人、2024年には1万372人と1万人を超えました。
認定率も2007年は15.6%でしたが2012年17.2%、2017年18.2%と年々上昇しづけており、2024年には18.6%となりました。全国の平均19.0%は下回り、群馬県の平均17.5%は上回っている状況です。
要介護度別にみると、要介護1の認定者が伊勢崎市・全国・群馬県のいずれも一番多いです。
伊勢崎市の要支援1・2の認定者は全国平均よりも低く、要介護3~5の認定者は全国や群馬県の平均よりも高め。すなわち、伊勢崎市は要介護3~5の重度の人が多いというのがわかります。
また、2012年~2021年の9年間のデータを年齢別にみると、前期高齢者の認定率は4.2%から4.4%ですが、後期高齢者の認定率は32.2%から32.7%となっており、9年間の平均認定率をみると、後期高齢者の認定率は前期高齢者の約8倍です。
特に85歳以上の要支援・要介護認定者が増加しており、いずれの年も認定者数の5割以上を占めています。
歳を重ねると要支援・要介護認定を受ける確立が上がっているため、伊勢崎市では介護予防活動や介護の重度化防止活動を推進中です。
また、増え続ける要支援・要介護認定者のために、訪問介護や訪問看護、デイサービス、ショートステイ、福祉用具貸与、住宅改修といった需要の高いサービスを中心に、介護保険サービスを充実させています。
「高齢者相談センター」を市内約9ヵ所に設置
伊勢崎市では、高齢者の生活を多方面からサポートする地域包括ケアシステムを構築中です。
システムの中心となる地域包括支援センター「高齢者相談センター」を市内約9ヵ所に設置。センターは高齢者の身近な相談窓口になるとともに、介護保険サービスや介護予防活動など、さまざまな活動のサポートを行っています。
在宅での介護と医療を同時に必要とする高齢者も増えているため、在宅介護を提供する事業所と、在宅医療に関わる機関が連携を強化。気軽に両方のサービスが受けられる環境を整えようとしています。
また、一人暮らしの高齢者や、高齢者夫婦のみの世帯、在宅介護世帯など、生活支援が必要な世帯が増えているため、伊勢崎市では家事代行や買物代行など、自立した生活を支援するためのサービスを実施中です。
伊勢崎市では認知症高齢者も増えており、将来推計では認知症高齢者は2030年には1万1,467人となると予測されています。
そのため、市は認知症の相談窓口となっている認知症地域支援推進員と、認知症疾患医療センターの連携を推進し、支援が必要な世帯に適切なサポートが行き届くよう努めています。
家族介護支援事業では、家族介護教室や講演会を開催し、介護側の介護力を高めています。介護家族の交流会などは、介護者に「一人きりではない」ということを伝え、孤独感を解消する役割も果たしており、介護者の心身の健康維持にも役立っているようです。
介護予防活動のリーダー育成を促進
伊勢崎市では閉じこもりがちな高齢者が多く、生活機能の低下がみられる高齢者も年々増加しているのが現状です。
そのため、高齢者の外出支援や栄養教室などを実施し、高齢者の運動能力の維持や、栄養状態の向上を目指し、介護予防活動を進めています。
地域住民主体の介護予防活動を推進するため、介護予防活動のリーダーの育成や、グループ単位の活動の支援などを実施。
地域リハビリテーション活動支援事業では、市民グループや通い場となっている集会所などで、リハビリ専門職によるアドバイスなどを行っています。
また、高齢者が集まる公民館などで、介護予防に関する知識が身につく介護予防講座や、皆でレクリエーションが楽しめるミニデイサービスなどを開催。
高齢者の活躍の場を広げるため、高齢者のボランティア活動の支援や高齢者就労支援などを行っています。
介護予防体操としては『ADL体操教室』を実施。生活に必要な動作を行うための筋力の維持を目的とした高齢者向けの体操で、ふくしプラザや福祉センターなどで毎月開催中です。
また、毎月第1日曜日には「はつらつウォーキング教室」を開催。歩き方のポイント講座に加え、柔軟体操や筋トレなども行います。この教室は申し込み不要で、参加費も無料。国定公園、境ふれあいパークなど市内数ヵ所で開催しているので参加しやすいのが魅力です。
伊勢崎市の高齢者相談
伊勢崎市では高齢者のための相談窓口を設置。地域包括支援センターである「高齢者相談センター」では、2016年に施行された「高齢者虐待防止法」に基づき、高齢者の虐待に関する相談を実施中です。
ここでは近隣住民からの匿名通報も受け付けているため、「近所のおばあちゃんが顔にいつも怪我をしている」「隣のおじいちゃんの部屋から異臭がする」「あの家のおじいちゃんはいつも同じ汚れた服を着せられている」といった通報ができます。
また、「成年後見制度」に基づき、認知症高齢者などの代行で金銭管理やサービスの契約などを実施。「一人では申し込みが難しい」といった場合、契約の補助も行います。
「歳をとったら、難しい契約書が読めなくなった…代わりに読んでもらって説明してもらえたのでありがたい」といった利用者の声も多く、本人以外にも家族や親族からの相談も可能ですので、気軽に相談することができます。
高齢者総合相談は基本的に高齢者相談センターが実施し、日常生活の悩みや介護保険などの福祉サービスのこと、健康に関する悩み、悪質な訪問販売などの消費者被害など、高齢者のいろいろな悩みに専門スタッフが対応中です。
さらに、ふくしプラザでは「高齢者悩みごと相談」を開催。面談や電話相談などで、高齢者の心配ごとなどを受け付けています。予約の必要がなく、相談も無料なので、利用しやすいのが魅力です。