山本一郎です。休肝日を増やしたら、テキメンに体調が良くなりました。

今回お話するのは、参院選直前、与野党社会保障公約チェックです!といっても、今回の参院選は非常に低調で、国民からの関心度が国政選挙の割にとても低いのが特徴です。政権選択選挙ではないので、争点が分散しているのかもしれません。

社会保障問題と今回選挙について語る前に、参院選の見どころについて軽く触れておきたいと思います。

まず第一に、野党側がセットした「改選後、与党に3分の2の議席を取らせない」という、まあ何と申しますか、非常にハードルの低い目標を掲げ、しかも国民の関心からポイントがずれているのが大きな特徴になっております。

これは、民進党の5種類ある公式ポスターのうち、もっともメインで貼られているもののひとつのスローガンが「2/3を取らせない」になっていることからも、野党側の今回選挙の争点が改選後の参院選の与党勢力が2/3以下であること、すなわち、憲法改正議論を先に進ませないことが大事であろうという争点設定で来たことになります。

ところが、先月5日、6日に、朝日新聞が行った事前の世論調査で明確に現れていますが、野党の設定した憲法改正議論というのは、はっきり言って国民の関心事ではありません。むしろ、永田町の議論や政党の論理をそのまま選挙公報に反映させただけであって、有権者として関心のあるポイントから外してしまっていることで、完全に選挙戦ではマイナスになっているというのが実情です。

朝日新聞が公表している参院選で投票先を決める時に重視する政策について取ったアンケートの結果を示した棒グラフ,年金・医療・介護などの社会保障が53%ともっとも多い数字となっていることがわかる

そしてここで、トップの争点として「景気・雇用対策」を抜いてトップに躍り出たのが、この連載でも何度も申し上げているとおり「社会保障」です。3位には「子育て支援」が出て、戦後の選挙戦において安定して社会保障問題が国民の最大関心事になったのは、単に高齢者が増えたからではありません。

一部のメディアが実施した出口調査では、40代、50代男性と50代女性という、壮年から初老にかけての年代ですでに「社会保障」が政策として最重視したポイントであるとされています。これは、高齢者の割合が増加したことによる、いわゆる”シルバーデモクラシー”現象と一括りにするのは難しい状況に陥っていると見られます。

つまり、大きな理由としては2つあり、ひとつが「自分自身の将来を考えて、本当に年金がもらえるのか、老後が安心して送れるのかが不安である」ということ。もうひとつが「自分たちの親の世代が70代後半から80代に差し掛かり、具体的な介護が必要な世代となって、そこに自分たちも携わらざるを得なくなっていること」が挙げられます。要するに、老人に対する社会保障は、翻って自分たちの生活に密接にかかわりがあるということでしょう。

GPIFによる年金の運用が5兆円の赤字!?
社会保障問題は常に経済問題と表裏一体…
と考えると、やはり「アベノミクス」への
信任が選挙の争点に

さて、実際には社会保障についての政策議論にどういう課題がこの参院選で投げかけられているのでしょうか。

この問題を問うにあたって、昨今野党陣営からしきりに持ち出されている話題が「年金基金の運用が証券投資にシフトしたため、株価下落で2015年度は5兆円の損害を出した」と指摘される部分です。

朝日新聞が公表しているGPIFの運用成績の推移を示した棒グラフGPIF運用開始から利益は出ているものの直近では赤字が出ており2015年には約5兆円を超える損失を出していることがわかる

年金積立基金運用、すなわちGPIFの運用にあたっては、朝日新聞でも触れているとおり、過去09年から概ね運用益を出してきたものの直近の成績が悪く、この公表を先送りにしたことが攻撃材料になっています。今まで利益が出ていて最近赤が出たことをもって批判するのはおかしい部分もある一方、積極的な金融政策で円安株高を演出して日本経済を回していくアベノミクスに対する攻撃材料として一番わかりやすいということで、野党はこれにのめり込んでいる部分があります。

裏を返すと、年金基金の運用という社会保障の根幹部分は、実は証券相場や為替相場といった、経済事情とコインの表裏であることが分かります。すなわち、景気が悪く税収が低ければ社会保障を回すための税収が落ち込み、アベノミクスなど経済政策への信任が失われて株価が低迷してしまうと社会保障の元本たる年金基金が損を出して目減りしてしまい、将来的に年金の支給額が減らされる可能性も考えられるわけです。

必然的に、社会保障問題とは常に経済問題であって、景気・雇用と一体となって日本全体の景況感や税収、各種相場と一体となります。

実のところ公約で「社会保障が」「経済対策が」といったところで根っこは同じですので、経済政策抜きに社会保障を語ることはできないし、消費税など財源問題が解決しなければ社会保障政策の”出口”はないとも言えるのです。

したがって、この財務状況では社会保障を充実させることができない、したがって社会保障は削減し、国民への支給額を減らさざるを得ないとする「低福祉低負担」型の政策か、これ以上の社会福祉を減額すると国民の生活が防衛できないのでセーフティーネットを充実させるための予算を確保するために増税し、社会全体で負担を分かち合う「高福祉高負担」型の政策か、いずれかを目指すことになります。

「高福祉低負担」はファンタジー。
公債=国の借金というツケを負わされる
若者にとっては常に不利な状態で、
世代間闘争を引き起こすトリガーに!?

一方、我が国の公債発行残高は国家、地方ともに累計額はえらいことになっております。財務省がすでにまとめているとおり、年間の税収の15倍以上の負債を抱えていることになりますが、これは結局、ある程度均衡させられるめどが立たないとこれ以上国や地域が借金をできなくなる可能性が高まるわけでして、そうなると歳入が足りずに予算を執行できないという事態に陥ります。

財務省が公表している公債残高の推移を示したグラフ,2016年度末には838兆円にも上る見込みであることがわかる

すでに一部の自治体では歳入不足で予算を執行できず、住民向けの公共サービスが実施できずにいるケースがあったり、市立病院などで医師不足に直面しているにもかかわらず適切な報酬を医師に支払えず欠員が出たままになっているため、一部の診療科が閉鎖されている状況です。人が少なく税収もない状態で市民サービスがどんどん低下していく状態は望ましくないとはいえ、実際にそういう状況に陥っている地域は文字通り、その自治体を閉鎖しなければならなくなることでしょう。

公債が増えるという現象については、乱暴にざっくり言うならば、いま使うための国庫、国富が足りないので、将来の世代が払う税収をアテにして収入を前借りしている状態です。つまりは、もうこれ以上は負担できないけど、福祉などの水準は削れないので、仕方なく国や地域で借金を積み重ねている状態であって、つまりは「高福祉低負担」というファンタジーであります。

どこからか金が湧いて出るわけではなく、単純に次の世代で生きる人たちが使えるお金を削って、これから死ぬ人たち向けの福祉サービスを充実させていることになりますので、当然のことながらこの「高福祉低負担」はツケを負わされる若者にとっては常に不利な状態でして、世代間闘争を引き起こすことになります。

そういう理屈上あり得ない「高福祉低負担」状態を解消して、望ましい社会をどっちに転がしてくかを考えるのが選挙だとするならば、公約はいずれにせよ「低福祉低負担」か「高福祉高負担」かのどちらかにならざるを得ません。本来ならば、無いお金は払えないし、未来にツケを回すことは避けたほうが良いということになります。

自民党はじめ三党合意であったはずの
税と社会保障の一体改革は完全に後退

というわけで、比較的保守の立場である自由民主党と、リベラル勢力を自認する公明党との与党間で、どんな政策の違いや公約の隔たりがあるのかを、まず見てみたいと思います。

「自民党では、実現できる約束こそが、本当の公約と考えます」と大きく出ている割に、主に経済政策を前面に打ちたて「一億総活躍社会」と銘打ってGDP600兆円と言い切っており、「実現できる約束と言っておきながらGDP600兆とか、おまえ舐めてんのか」と思う次第であります。小判の質を悪くする貨幣改鋳(かへいかいちゅう)でもやるんでしょうか。

細目の中で、「安全・安心」の項目として社会保障関連は位置づけられ、「持続可能な社会保障制度の確立」という項目が用意されています。ただし、公約集の中に具体的な財源や達成するべき目標数値は明記されておらず、これが例えば同項目内の「子育て支援」だと「平成29年までの整備目標40万人分に10万人分を上積み(50万人)し、着実に整備を進めます」とか書いてあるわけです。

持続可能な社会保障制度という割には、例えば「2013年度で114兆円の社会保障費をどうするのか」「国と地域負担分の44兆円をどのように削減するのか」「社会保障費の財源や介護保険医療でどの介護度をどのように取り扱うつもりなのか」ということは、取り立てて何も明記されていません。国民に対する約束もされていないというのが、自民党の公約における社会保障の実情です。

自民党の公約について色濃く現れているのは、まず経済重視、GDP600兆や、アベノミクス、一億総活躍社会といったメインテーマで得られた増収分を、社会保障に回しますよ、というスタイルであることが分かります。

自民党の政策書きの中で「『経済のパイ』拡大の成果を子育て・介護など社会保障分野に分配し、それをさらなる成長につなげる『成長と分配の好循環』を構築します」とあり、逆説的にいうならば、経済政策が失敗して経済のパイが拡大しなければ子育て・介護など社会保障分野への分配は減るっすよ、という主張だろうと考えられます。

社会保障関連の各党の参院選マニフェスト
~ 自民党・公明党 ~
自民党
~一億とおりの輝き方を支援します。~
公明党
~安心できる社会保障実現へ~
経済再生<希望を生み出す強い経済>
●高齢者が活躍し続ける『生涯現役社会実現』→人生100年時代を見据え、働く意欲のある高齢者の方々が個人の能力・経験を活かし、生涯現役として働きやすい環境を整えます。「生涯現役社会」の実現に向け、雇用支援や企業支援、社会で活躍できる場づくりを促進します。
●革新的な医薬品・医療機器の実用化促進→再生医療、医療・介護ロボットなど、日本発の革新的医薬品・医療機器の研究開発と普及を促進します。
●ビジネスクラスの介護の促進→利用者の様々なニーズに応える質の高い介護サービスの提供を新たな成長分野と捉え、公的仕組みでは十分に対応できないニーズ等に応える多様な民間サービスを民間保険の活用を含め支援します。
社会保障制度の確立
●社会保障の充実→「自助」・「自立」を第一に、地域のおたがいさま・おかげさまの「共助」と「公助」を組み合わせ、税や社会保険料を負担する国民の立場に立って、持続可能な社会保障制度を構築します。消費税財源は、その全てを確実に社会保障に使い、子ども・子育て支援、医療、介護、年金を総合的に充実していきます。
●若者も高齢者も安心できる年金制度の確立→年金保険料率の上昇率を抑制するため、平成26年度から恒久化された基礎年金の2分の1国庫負担は確立されており、その下で、年金制度を持続可能なものとし、若者の給付水準の確保等を図るための制度改革に取り組み、若者も高齢者も安心できる年金制度を運営します。
●財政の安定化を図り、介護保険サービスの充実と保険料の抑制→高齢化の進展により、増大が予想される介護保険料の上昇を抑制します。そのために、介護サービスの効率化、重点化を図るとともに、公費負担の増加などを行い、持続可能な介護保険制度を堅持します。また、地域包括ケアシステムの構築のため、必要な介護報酬を確保します。
●介護支援専門員の積極的活用→居宅介護支援事業所の報酬の見直し・規制緩和を含む経営の独立性・中立性の推進・研修制度の充実を図るとともに、介護保険三施設・在宅介護サービスにおいて、自立支援や在宅復帰に向けた施設機能・在宅介護サービス機能の強化と活性化を図り、高品質な介護サービスを提供できるシステムをつくります。
●在宅介護の支援→地域で多様な質の高い在宅介護サービスが提供できるよう、事業者の創造性と自律性が発揮できる環境を整えるための公的保険外サービスの普及を促進します。
保育や介護従事者の賃金引き上げなど処遇改善、キャリアアップ支援
●保育士・介護福祉士など介護従事者・障害福祉サービス等の従事者といった今後の福祉人材の確保のため、待遇改善や専門性の確保など総合的な取り組みを進めます。
●必要な地域医療介護総合確保基金を確保の上、介護職のイメージアップや参入促進など、介護人材のすそ野を広げる取り組みを進めるとともに、介護人材のキャリアアップのための研修等の支援を強化します。
●専門性を高めるためマネジメント、管理、ソーシャルワークなどのスキルを持つ認定介護福祉士等の制度を導入します。
業務負担の軽減と生産性の向上
●介護事業所等のICT化による業務の効率化、情報の共有化を進め、介護従事者等の負担軽減とサービスの質・生産性の向上を図ります。
●新たな機器の開発や見守りを含めた介護ロボット等の効果的な活用により、高齢者や家族等の負担を軽減するとともに、ロボット介護機器の海外展開を推進します。
再就職支援や資格試験制度等の見直し
●介護離職ゼロに向け、介護従事者の待遇改善や再就職支援、介護福祉士養成や学生等に対する支援などで必要な人材を確保します。
●保育人材や介護人材など潜在的な有資格者の再就業促進を図るため、福祉人材センターにおける支援体制を強化します。離職した潜在有資格者の登録制度の活用や再就職準備金の貸付制度、短時間正社員制度の推進などにより、再就業を支援します。

自民党公明党の選挙公約より、年金・医療・介護を中心とした社会保障関連の政策を一部抜粋

ということは、自民党は現在政権が行っている経済政策ありきで経済成長を前提として分配を考えるという方針である以上、いままでの政策論争同様、経済政策が外れてオケラ街道を歩むことになると、真っ先に社会保障が切られる運命にあります。まあ、稼げなくて社会が貧乏になったら、まず高齢者から干上がるのは仕方がないという感じでしょうか。つまりは、自民党、安倍政権の経済政策を信頼するか否かで投票しろ、ということですね。

また、三党合意であったはずの税と社会保障の一体改革は完全に後退しました。2012年時点で、安倍首相は壮大な空手形を切っていたんですが、このままなかったことになってしまうのでありましょうか。

公明党のマニフェストは、亭主関白な自民党の
ケツを叩く嫁のような立場が
何となく垣間見える内容

一方、連立政権の座にある公明党は、自民党よりもはるかに踏み込んで社会保障関連の政策について明記してあります。

例えば、子育て家庭支援の題目として「非正規労働者や年金生活者、子育て世帯、新規世帯など住宅困窮者を対象に空き家などを低家賃で提供する『セーフティーネット住宅』を100万戸整備します」とか、低所得者給付金や低所得高齢者に対する介護保険料負担の軽減などといった基本は概ね押さえております。与党にあるものとして、責任を持って空手形にならないレベルで手堅く着実に再分配予算を振り分けていこうという考えが色濃く見受けられ、まあこんなものかなと思います。

経済成長一本槍で「余った予算は社会保障に回すからさ」という、亭主関白な自民党のケツを叩く嫁のような公明党の立場が何となく垣間見える内容であります。

その代わり、公明党は国家の歳出削減や、自治体の再々編のような支出のカットを促す政策についてはほとんど記述がありません。福祉関連の充実っぷりに比べると、公約集の中で最後のページに申し訳程度の行財政改革で効率化が謳われているぐらいで、相変わらずです。

完全に大きな政府寄りの福祉国家を目指すあたたかい社会作り、貧乏になるときはみんなで貧乏にという方向なのかもしれず、このあたり、「いざアベノミクスのアテが外れて歳入欠陥が大きくなるよ」「経済成長どころか不況に入っちゃったよ」となると、あっという間に甲斐性のなくなった亭主に離縁を申し入れる冷徹な嫁になるんじゃないかとすごく心配になります。

民進党のマニフェストを見ると、
厚生労働関連はそこそこ充実。
財源案の策が見られないのが少々不安

最後に、責任野党として頑張っていただきたい気がしないでもない民進党ですが、サイトを訪れた一番最初に目に入るのは「いま、暮らしはどうですか?」のコピー。うるせえよ。で、次いで「経済と暮らしを立て直します」とアベノミクス批判、そして「憲法の平和主義を守ります」のスローガン。いや、民進党が打ち立てる、自民党の経済政策に代わる方針を聞きたいんであって、批判とか憲法とか後回しでいいと思うんですが。

さて、国民との約束とは別に民進党の政策集を見てみると、8ページめの「成長戦略」はほぼがら空きの状態ながら、厚生労働関連はそこそこ充実しています。中でも「税と社会保障の一体改革」は中項目に用意され、年金は歳入庁構想に一本化されていて悪くない感じです。与党になって本当に実現できるのかは分かりませんが。

そして、項目として「シニア世代の安心を守る」話と「次世代にツケを回さない」とされる内容については、財政健全化の材料が富裕層や大企業への徴税強化ぐらいしか歳入増加策が見受けられず、両立しないんじゃないのというのが正直なところです。ほかに財源案がないのでしょうか。

社会保障関連の各党の参院選マニフェスト
~ 民進党・共産党 ~
民進党
~シニア世代の安心を守る~
共産党
~社会保障――「削減」から「充実」へ、政策を抜本的に転換します~
シニア世代の安心を守る重点政策
●年金をかさ上げし、受給資格を拡大します→年金の減額により、老後の生活が脅かされています。消費税引き上げを待たずに来年4月から低年金者の年金をかさ上げ(年間最大6万円増)するとともに、年金受給に必要な保険料支払い期間を25年から10年に短縮します。
●年金積立金を安全に運用します→現政権は、140兆円にのぼる厚生年金と国民年金の積立金運用について、株への投資を倍増させました。その結果、初年度で5兆円も運用損を出したと推計されています。そのような現政権の年金運用を改め、株への投資を減らし、安全な運用に切り換えます。
●医療・介護等の自己負担を軽減します→医療・介護・保育・障害福祉にかかる自己負担を一度に背負えば、生活は立ち行かなくなります。自己負担の合計額に上限を設け、安心してサービスが受けられる「総合合算制度」を創設します。
●介護職員等の給与を引き上げ、介護を充実します→介護士などは重労働であるにもかかわらず、他産業に比べて低い賃金にとどまっており、慢性的な人手不足を招いています。介護職員・障害福祉従事者の月給を1万円引き上げます。入所待ちを減らし、介護が必要な人が必要なサービスを受けることができるようにします。
●働き続けたい人を応援します→働きたいシニア世代が働き続けられるよう、定年の引き上げや継続雇用制度の導入などを企業に促す取り組みを着実に実行します。
次世代にツケをまわさない重点政策
●財政健全化を推進します→財政健全化目標と実現までの戦略を定める財政健全化推進法をつくり、持続可能な財政構造を実現します。
●2030年代原発ゼロに向け、あらゆる政策資源を投入します→40年運転制限制を厳格に運用する、新増設は認めない、安全確認を得ていないものは再稼働しない、の原則を徹底させます。また、責任ある避難計画がなければ原発を再稼働すべきではありません。
●格差を是正するための税制改革を行います→大企業、富裕層に公正で応分の税負担を求めます。金融所得課税の税率を5%引き上げ、高所得者の所得税率も引き上げます。所得課税の控除制度や資産課税の累進性の見直しをすすめます。パナマ文書発覚で国際的に問題視されている税逃れの防止に全力をあげます。
●身を切る改革を実行します→国民との約束である議員定数削減をはじめ、国会議員自らが身を切る改革を実行します。企業団体献金の禁止を定める法律、「文書通信交通滞在費」(議員の活動経費)の使途を公開する法律、国会議員関係政治団体の収支報告書のインターネットによる名寄せ掲載を義務付ける法律の制定を図ります。
●税金の使いみちを厳格に見直します→天下り禁止を厳格化し、予算の支出先・使途の実態を把握する行政事業レビューの法定化など、税金のムダづかいをなくす「行政改革実行法」をつくります。労働基本権を回復して労働条件を交渉で決めるしくみを構築します。職員団体等との協議と合意を前提としつつ、国家公務員総人件費の2割を目標に削減をめざします。
●地球温暖化対策を推進します→2030年までに再生エネルギー30%確保、CO2 30%削減を目標とします。省エネルギー、エネルギーの地産地消をすすめ、地球温暖化対策を着実に推進します。
安倍政権による医療大改悪を許さず、「医療崩壊」を打開し、だれもが安全・安心の治療を受けられる医療制度を確立します
●安倍政権による医療制度の連続大改悪をくいとめます
●高すぎる窓口負担を軽減し、先進国では当たり前の“窓口無料”をめざします
●後期高齢者医療保険料の大幅値上げに反対し、差別制度の撤廃をめざします
●「国保の都道府県化」に反対し、国民健康保険の再建・改革をすすめます
年金削減をストップし、無年金・低年金の解決に足を踏みだして、今も将来も信頼できる年金制度を確立します
●安倍内閣の“際限なき年金削減”に反対――年金制度の2段階の改革で、今も将来も安心できる制度を実現します
●年金積立金の株式運用反対――過大な積立金は計画的に取り崩して給付保障に
●「消えた年金」「消された年金」問題を、一人たりとも被害者を残さないよう、一日も早く、国の責任で解決します
●パート、派遣、契約社員など非正規雇用で働く人たちの厚生年金加入の権利を保障します
●公的年金等控除改悪など“高齢者増税”を阻止し、「天引き」をやめさせます
●「一元化」「積立金方式」を看板にした改悪に反対します
●社会保障の給付削減をねらい、国民のプライバシーを危機におとしいれる共通番号(マイナンバー)の中止を求めます
介護保険の連続大改悪を許さず、高齢者も現役世代も安心できる公的介護制度をめざします
●「医療・介護総合法」=介護保険大改悪の中止・撤回を求めます
●安倍政権の介護報酬削減――報酬を引き上げ、元に戻すことを要求します
●安倍政権が計画する、介護保険のさらなる大改悪に反対します
●「介護の危機」を打開するため、介護・福祉・医療制度を立て直します
自公政権が推進する生活保護の大改悪を阻止し、貧困の打開、福祉の充実をはかります
●安倍政権の生活保護改悪を許さず、必要な人すべてが受けられる生活保護へ
●ハンセン病元患者にたいする保障を充実させます
●中国からの帰国者に社会的支援を確実におこないます

民進党共産党の選挙公約より、年金・医療・介護を中心とした社会保障関連の政策を一部抜粋

公約を横で並べてみる限り、民進党は公明党の方向性にやや近く、やはり「高福祉高負担」を志向していることがわかります。さすがは野党。しかし、述べたとおり経済政策における代案がきちんと用意されておらず、高福祉を実現しようにも財源が良く分からんという点で、やりたいことは総花的で網羅されているけど肝心の先立つものがないのでは困るのではないかと思うわけであります。

何しろ、次世代にツケを回さないというところでいきなり財政健全化を盛り込んでいる時点で、現状維持の予算でも年度歳入が20兆円近く足りなくなるわけでして、富裕層向け増税で6兆円ほど積み増してもなお財政健全化には程遠いというのが実情ではないかと感じます。大丈夫なのでしょうか。

「一億総活躍社会」という標語で乗り切りたい
自民党がそのまま押し切るか。
それとも野党の盛り返しなるか?

おそらくは、テクニカルな各種政策を細かく見ていっても、なかなかメディアで騒がれるような明確な争点でなければ有権者が政党の態度を正確に知ることは難しいでしょう。

しかしながら、すでに述べたように社会保障政策は常に経済政策と表裏一体であり、財源問題と密接に関係しています。ここに対して、政党がどのような発言をし、社会保障を口先でだけ充実させると言いながらもその根拠となる歳入がはっきりしなければ実現することは難しい、ということになります。一応、公債費を積み増せば社会保障費は捻出できるのでしょうが、それこそ次世代にツケを回す「高福祉低負担」の世界であり、2030年を待たずに国家財政は行き詰まりを迎えることになるのではないかと思います。

具体的な社会保障にかかわる政策で言うならば、「税と社会保障の一体改革」と「消費税引き上げ」「富裕層への徴税強化」であります。国際競争力や、当面の景況感を犠牲にしてでも国家の歳入を増やす政策を実現しようとし、高福祉の道筋を実現しようとするのかどうかは、再分配論争の一里塚です。逆に、法人税を引き下げ経済の活力を志向し、構造改革を推し進めて規制緩和や第四次産業革命、情報産業の発展を狙いながら、当たった博打のぶんだけ社会保障に回すという今の安倍政権の政策も、見ようによっては支持されるものでしょう。

国民は、現在のアベノミクスをどう判断しているのかという点では、極めて、もうとても微妙なレベルで均衡しています。

何しろ、新聞各紙でこれだけアベノミクスへの評価がばらつくと、どの辺が本当の有権者の声なのかよくわからんというのが実情ではないかと思います。そして、自民党の公約2016でも、不利を悟って地味に「アベノミクス」を前面に出さず、まだ手垢がついていない「一億総活躍社会」という標語で乗り切っていこうという素直な気持ちが見え隠れしております。

真剣に社会保障を考えて票を投じるのであれば、どうしてもこの辺の経済政策の行く末を見ながら、与野党のどこを見込んで名前を書くべきか考えなければなりません。どうも参院選中盤以降は、徐々に野党も盛り返しを見せているような気配もしますが、一人の有権者としておのおのの問題意識をしっかりと踏まえて投票したいものです。