堀江貴文「現状に不満があるならみんな辞めちゃえばいいんですよ」

実業家としての活躍だけでなく、社会問題に関する言説でも多くの人の注目を集めるホリエモンこと堀江貴文氏。そんな彼が、様々な媒体で「興味が無い」と断言するのが介護ビジネスの分野。堀江氏はなぜ、介護ビジネスに興味がないのか? その理由から、超高齢社会まっただ中にいる私たちが今すべきことまで、“ホリエモン流”の言葉で切れ味鋭く語ってもらったインタビュー。前編となる今回は、介護事業の現状について率直な印象を伺った。

取材・文/みんなの介護

介護職員の給料は上がらないと思いますよ。これはもう、構造的な問題ですから

みんなの介護 ストレートにまずお伺いしますが、介護業界全体が抱えている現状として、従事している人たちの給料が平均的に安く、現場の従事者たちからも不満が出ている……という現状があります。この現状に関して、堀江さんはどう思われますか?

堀江 はっきり言ってしまうと、給料は上がらないと思いますよ。構造的に上がることは難しいでしょうね。

みんなの介護 ……かなりストレートなお答えですね。

堀江 そもそも介護報酬って、介護保険で決められていますよね? あとこういうことを言うと身もフタもないかもしれませんけど、介護って「誰でもできる」仕事なんですよ。「誰でもできる」仕事は、報酬が高くなる可能性は低い。だから、これからは省力化、ロボット化がより進んでいくと思います。外骨格スーツやパーソナルアシスタントロボットは、これからどんどん普及していくんじゃないかなと。

みんなの介護 サービスも報酬も、ルールとして制度化されているというのはその通りですね。現場からしたら収益をあげにくいシステムになっているのは間違いありません。ただ、その点を言われてしまうと我々としては辛いですけど……。

堀江 でも、労働市場ってそういうものですよ。他人ができない付加価値があるから給与というのは上がっていくわけで。なのでそれがロボットに取って代わられていくのか、外国人労働者に取って代わられていくのかはわからないですけど。だから現状にもし不満があるなら、究極の選択はみんなで辞めてしまえばいい、ということなんですけどね。

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介護の現場の省力化、ロボット化は進んでいく。これは避けられない流れだと思います

みんなの介護 では、例えば介護ロボットを使いこなせるようになるとか、職員をマネジメントする能力を持つとか、そういった能力を身につけていけば、介護職を続けていくことに意義を見出だせたり、給料アップにつながったり……という可能性も出てくる、と。

堀江 可能性としてはあるでしょうね。あとは一方で、そうした人手不足の状態が生まれると同時に、介護ロボットの方の技術革新がそれまでよりも早く進んでいくとも考えられます。それを使いこなす技術は必要になるでしょうね。

みんなの介護 介護用のロボットを現場に取り入れるための補助を自治体が行うという動きは一部出てきていますね。堀江さんはビジネスとしてそちらに参入しよう、という想いはありませんか?

堀江 まあロボットは、僕がやらなくても誰か他の人がやるんじゃないかなと思いますよ(笑)。

介護事業は「利幅は薄くても確実に利益が見込める」と考えられなくもない

みんなの介護 外国人労働者に関してはどう思われますか? 円安や受け入れ側の問題、いろいろな課題があってなかなか進まない、というのが現状のようですが。

堀江 ビザの発給要件を緩和するべきだと思いますよ。僕が思うに、現状のビザの発給要件って厳しすぎると思うんですよね。

みんなの介護 堀江さんは、長野刑務所での作業で高齢受刑者の介護を経験されたそうですが、経験としてはいかがでしたか?

堀江 意外と“慣れる”んだなと思いましたね。割とすぐ慣れましたよ。一番最初は抵抗感はありましたけど、「これはもう、作業だな」と。

みんなの介護 以前からいろいろな媒体で「介護ビジネスには興味がない」ということをよく仰っていますが、先ほどのお話のように介護保険などの構造的部分が理由なんでしょうか?

堀江 いや、そういうわけではないです。単純に、終末ビジネスといいますか……死に向かっていく人たちを身近に見るビジネス、それをやりたくないんですよ。儲からないからではなくて、そこが大きいんです。

みんなの介護 お金の問題ではないと。

堀江 逆に言うと、介護保険でガチガチには固められていますけど、利幅は薄くても確実に利益はあげられる収益物件と考えて、介護事業に取り組んでいる知り合いは僕の周りにもいっぱいいるんですよ。大儲けはできないけれども、堅いビジネスであるということは自覚していますから。僕のメルマガの読者からも「なんでこれから伸びていく分野なのに、介護ビジネスをやらないんですか?」ということをよく聞かれるんですね。でもそれは単純に、マインドの問題と言いますか……“前向き”と言ったら変かもしれないですけど、そういうビジネスのほうが個人的に興味があるから、ですね。

みんなの介護 今後の社会問題として高齢化社会は避けられないですよね。そのあたりはどうお考えですか?

堀江 僕としては、理想は「介護が必要ない状態」だと思うんです。実際、それはできると思うんですよ、例えばアルツハイマー病。僕はアルツハイマー病は将来治せる時代が来ると思うんです。原因はだんだんわかってきて、脳細胞のなかの不要になったタンパク質を切って排出するための酵素が上手く働かないのが原因でβアミロイドというアルツハイマー病の原因となる物質がつくられてるのでは、と言われている。それを上手く働かせるための薬というのも今研究されてきていて、かなりいいところまで来ていますよね。これが進めば、アルツハイマーにならない未来というのが可能なのでは、と思うんです。

みんなの介護 それが現実になったらすごいですよね。

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ガン保険には入っててもガン検診は受けないという人、いますよね。バカじゃないか?と(笑)

堀江 僕が大事だと思っているのは、何よりも「予防」です。検診とか受けてない人、多いと思うんですよ。僕は刑務所にいた時に周りの人たちを見て実感したんですけど、病気を予防する意識が低い。例えば60歳で歯が完全に無い人がいたんですけど、これってほとんどが歯周病のせいですよね。でも歯周病って、定期的にきちんと歯医者さんに通っていたらならないんですよ。

他にも、身体を鍛えていないから足腰が弱ってしまう人も多い。自分の足で歩けないとすぐ寝たきりになる、寝たきりになるとボケも加速していき介護がより必要になる。健康への意識が低いたちがいて、そういう人たちが結果的に介護のお世話になっている、という状況はあると思うんです。

みんなの介護 堀江さんは今、マラソンなどもされていますし、以前から健康面への意識が高いんですね。それは予防という観点からなのでしょうか。

堀江 あ、マラソンは健康管理云々とは関係無いんですよ。あれは単なるダイエットです(笑)。

みんなの介護 そうだったんですね(笑)。国が今抱えている医療コストなどに関して、「こうあるべき」と考えられていることはないですか? 現状、財源がどうしても厳しくて回らない、というところが多いですよね。

堀江 そこはやはり、個々人の取り組み、という話になってくると思うんですよ。だって運動してない人も多いし、検診もみんな行かないし。そこに力を入れるべきだと思うんですよ。がん保険は入るのにがん検診は行かない人、いるでしょう? バカじゃないかと(笑)。

高齢になっても自分で立って、動いて、働く。そういう人が増えていく世の中になって欲しい

みんなの介護 でも、そうやってみんなが予防に気を遣い長生きすると、健康寿命と平均寿命の差というのが問題になってきませんか?

堀江 僕が言ってるのは「健康寿命を伸ばしましょう」という話なんですよ。誰もが介護が必要な状態になるわけでなく、本当に健康な人は、かなり高齢になっても自分で立って動いているわけですよね。そういう人たちを増やしたい、という話。それは税金をかけずにできるんですよ。

例えばさっき言った歯周病予防ですけど、歯周病って万病の元なんですよね。自分の歯で食べられるか食べられないかでQOLは変わってきます。高齢になっても自分の歯で食べられる人って、QOLがすごく高いんですよ。日本歯科医師会が「8020運動」というのを提唱していて、これは「80歳になっても自分の歯を20本以上保っておきましょう」という運動なんですけど、全然可能なんです。

みんなの介護 歯を健康に保って、きちんと自分の歯で食事をする。これは大切なことですよね。

堀江 歯周病菌は歯茎から体内に入って、他にもいろいろな病気を引き起こす。じゃあどうすればいいかというと、年に2回歯医者さんにきちんと通って歯石を取ってもらったり治療をしてもらうことで、歯周病のリスクはグッと減るんですよ。例えばデンマークやスウェーデンではどうしているかというと、年に何回か決められた回数歯医者さんに行って歯石除去を受けないと、歯科にかかっても保険が適用されないんです。行かないと、いざ虫歯になった時、自費診療で高額になってしまう。その仕組みを作ること自体は、税金を使わずにできることですよね?

あとは、健康診断も同じように義務化すればいいんです。年に最低1回は健康診断を受けること、そうしないと保険が適用されない、というシステムにするとか。

みんなの介護 そうするとみんな健康診断を受けますよね。

堀江 風邪を引いただけで、薬代で1万円超えるとか嫌ですもんね(笑)。これも税金をかけずにできるはず。やっと胃カメラも健康診断のメニューに入るようになりましたけど、胃カメラだったら初期胃がんの発見率も高いし、そのまま切除もできる。胃がん患者を減らすことが可能になっていくかも、ですよね。

みんなの介護 ちなみに、細胞再生医療や延命治療など、そういう部分にビジネスとして興味をもったりはしませんか?

堀江 そこはありますね。延命というよりは、若い状態をずっと継続する、という話になります。

みんなの介護 先ほどの健康寿命を伸ばすという話とも通じますね。

堀江 若く健康でずっと生きてる分にはいいじゃないですか(笑)。そのあたりの分野に関しては、ビジネスとしての投資も考えているんですよ。

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賢人論。(けんじんろん)は、「みんなの介護」がお送りする特別インタビュー企画です。様々な業界の第一線で活躍する“賢人”の皆さんに、介護業界の現場を取り巻く問題、将来の展望について、また自身の介護経験についてなど、介護にまつわるあれこれについて、自身の思いを忌憚なく語ってもらいます。