タイタン社長・太田光代氏に急遽降りかかってきた「母親」と「義母」、2人の介護問題。施設と同居。悩んだ末の結論に対し、今どのように考えているのか。「これでよかったのだろうか」という正直な思いを含め、ストレートに語ってくれた光代氏。今から考えると見えてくる反省点や、夫婦2人の老後ビジョンなど。そこから見えてくるのは、誰もが直面するであろう“身近で普遍的な問題”だ。
取材・文/川口有紀(フリート)
考えていても、結局はその通りになるとは限らないのが「介護問題」
みんなの介護 夫婦で直面する介護問題に関しては「夫が非協力的で…」という女性の悩みをよく聞きますし、光さんの反応もなんとなくわかるように思います。
太田 うちの夫はちょっと特殊かもしれないですけど(笑)。でも世の男性は、自分の母親が「歳をとった」というのを認めたくないんだろうな、と思うんですよね。よく聞くのは、例えば認知症状が始まっている事実を男性の方が認めたがらない。自分の母親が「なんだかおかしい」と思っても「そんなことないよ」っていうのは大体男のほうなんですって。
みんなの介護 女性に介護を丸投げ、という話もよく聞きますよね。
太田 でも、介護の形は家庭それぞれですから、それはいろんな形があると思うんですね。老人が増えていくわ子どもは減っていくわで、本当にケースによって変わってくるかなと。 その時になってわかることというのはすごく多いんですけど、それも家庭の状況によって違うと思うんです。うちは幸い、夫婦両方とも稼に稼ぎがありますから、両方の親を結果的にバランスよく面倒看ることができました。でも、そうもいかないご家庭もあるでしょうね。
みんなの介護 今思い返して、「こうしておけばよかった」という点などはありますか?
太田 反省点を挙げるなら「同時という可能性があったか」…もう、これにつきます(笑)。介護って、いつどうなるか予測できないんですよ!無理やり母と同居を始めた年に、義母も介護が必要になるなんて…と。
だから遡っていろいろ考えるんですけど、たとえば義母の場合、義父が亡くなる何年か前から「自分が死んだら、妻のことをよろしくね」と私には言っていました。でも、もう少し2人が元気なうち…例えば還暦になったタイミングとか、そういう時に話をしておけばよかったなと。多分、そのくらいに話をしても「自分でなんとかするから」と言われる方が多いと思うんです。でもそれは現実的ではないでしょう? ということを率直に聞いて、どういう形が理想なのかを話し合い、聞いておくべきだなと。今の世代に、「親が動けなくなることを考えてるのか!」って怒る人もいないでしょうしね。

介護で選択を迫られた時に「施設に入れることへの抵抗感」というのはやっぱりある
みんなの介護 一度、聞けるうちに「自分たちはどうしたいのか」を確認しておくことが大事ということですね。
太田 親も元気なうちは「子どもの世話になりたくない」という気持が強い人が多いと思うんです。できれば自分でやっていきたい、と。でも、長生きすればするほどそういうわけにもいかない。うちの母親だって、さんざん「歳をとってもあなたの世話にだけはならない」って言ってましたからね(笑)。
もちろん、聞いておいたとしてもその通りにならないこともあると思います。でも、同居を望まれる方もいれば、例えば「介護は施設の方にやっていただいたほうが気兼ねない」という方もいると思うんですよ。そこを聞いておけるかおけないかで、だいぶ違うんじゃないかと。
みんなの介護 そういったコミュニケーションが、後々の判断材料になりますもんね。
太田 判断材料がまったく何もないと「どうしたらいいものか」となりますし、それよりは心構えができるじゃないですか。きょうだい間での話し合いもできる。突然介護問題が降りかかって、きょうだい間で意見が割れて喧嘩…というのもよく聞きますが、少しは避けられるかもしれませんし。何もないと、いざ介護で選択を迫られた時に「施設に入れることへの抵抗感」というのはやっぱりあるんです。
みんなの介護 ところで、お母様との同居生活はどんな感じでしょうか?
太田 うちは父が早くに亡くなったこともあり、母は一人で住むのに慣れてはいました。でも、今は慣れない家に一人。お手伝いさんはいますけれど、私も夫も忙しいので、1日顔を合わせないこともある。そうするとやはり、不安みたいなんですね。
そう考えると、母も義母の入ったような施設の方が友達ができて良かったのかなと思うことはありますね。例えば介護つきのマンションのような形で、1世帯ずつは独立しているけどすぐ近くに誰かがいるとか、そういう状況のほうが良かったのかな…なんて、今でもいろいろ考えます。

結構手のかかる夫なので…おむつを替えるとかまではしたくないです(笑)
みんなの介護 今後の話ですが、例えば2人のお母さんともに老人ホームに入居…といった形に変わっていく可能性というのはないんでしょうか?
太田 母は喧嘩すると今でも「施設に入れろ」って言いますよ(笑)。ただ真面目な話、母がこの先、身体が動かなくなったらまた変わってくるのかもしれません。私は仕事を辞められないので、誰か面倒を見てくれる人を雇うのかなとか…でも、まだまだ元気だと思いますよ。
みんなの介護 89歳ともなると寝たきりという方も多いですし、そう考えると元気ですよね。
太田 まあそうなんですけどね。私ですら最近、年取ったなと思うことも多いわけなので(笑)。
みんなの介護 いずれは光さんと光代さん、お2人にも老後がやってくるわけですが、今回の件をふまえて将来的なビジョンを決めていたりしますか?
太田 そう、介護はする方にもなるけど、される方にもなるんですよね。2人とも一人っ子なもんですから、どこかのタイミングで資産を整理して施設に入らないといけないだろうな、ということは考えています。私はもともと「家」にはそんなにこだわっていませんから、終身タイプの施設に入るのかなと。
みんなの介護 老人ホームへの入所希望なんですね。
太田 理由としては、まあ結構手のかかる夫だったんですよ。私が年上ですから「甘えたい」というのもあったんでしょうし、その中で私は私でいろいろ自由にさせていただいたんですけど…もう、最終的に「夫のオシメは替えたくない」んですよ!そこまでは面倒見たくない(笑)。
だから、そういう世話をしてくれる方は別に頼むとして、お互いに楽しくやっていければと思ってます。寝たきりになったとしても、もちろん一緒にはいますけど、面倒みてくれるところにお世話になりたいなと。
みんなの介護 そこまでのビジョンをある程度作っておけば、おそらくこの先の選択肢は少し楽になりますよね。
太田 ただ、時々施設のパンフレットがポストに入ってくるんですね。「夫婦対応」とか書いてあって「これいいな」と思って金額を見ると、驚くようなお値段のところもあるんです。でも私はある程度好きなものに囲まれていたいし、じゃあこのぐらいの広さなら……とか考えて値段見てみたら「6億円」とか(笑)。あと、病気になったときに医療行為はできるのかとか、看取りをお願いできるかどうかとか、そういう点も含めてまだまだいろいろ調べなきゃな、とは思いますね。
だって、普通に考えて男性より女性のほうが長生きですから、私のほうが1人で後に残される可能性が高い。自分がちゃんと判断できたらいいですけど、なんか判断できない状況で望まない場所に…とか嫌ですもん(笑)。だからそこは時間をかけて、少しずつ準備をしていければな、と思っています。
撮影:三輪友紀
