第714回 高齢者の55%が「経済的に苦しい」と判明!70歳まで雇用が伸びる今後、高齢者への就労支援が必須
年金生活で陥る高齢者世帯の貧困
高齢者世帯の金銭事情はどうなっているのか
7月2日、厚生労働省より2018年の「国民生活基礎調査」が公表されました。
それによると、65歳以上の高齢者世帯数は全世帯の27.6%にあたる1,406万3,000世帯に上り、過去最高を更新しました。
さらに高齢者世帯のうち約半数が一人暮らしで、高齢者世帯の51.1%が「公的年金・恩給」のみで生活していることも明らかにされています。
「年金のみでは老後の生活費がまかないきれない」と金融庁は指摘していますが、実際には半数を超える高齢者が年金収入だけで家計をやりくりしている状態です。
同調査によると、1世帯当たりの平均所得金額は、全世帯では551万6,000円であるのに対して、高齢者世帯では334万9,000円。
平均所得金額の構成割合では、全世帯だと「稼働所得」(労働によって得られた所得)が73.4%、「公的年金・恩給」が20.3%ですが、高齢者世帯では「公的年金・恩給」が61.1%、「稼働所得」は25.4%となっています。
そして高齢者世帯のなかで、総所得に占める公的年金・恩給の割合が100%である世帯が、先に述べた通り過半数に達していたわけです。

厚生労働省の「平成28年度厚生年金保険・国民年金事業年報」によると、国民年金の平均受給額は月額5万5,000円、厚生年金と国民年金を合算した平均受給額は月額15万円となっています。
年金収入が中心となれば、現役時代よりも収入が大幅に落ち込むことは避けられません。
半数以上の高齢者が年金生活に不安や不満を感じている
また、今回公表された国民生活基礎調査によると、高齢者世帯において「生活が大変苦しい」「やや苦しい」と感じている世帯を合計すると55.1%に上り、「苦しい」の割合が全体の半数以上に上っています。
年金収入のみに頼る高齢者世帯に比例して、経済的に苦境に立たされている高齢者が多くなります。
しかしこの頼みの綱である年金も、年金受給年齢に達する高齢者が年々急増する中、国による減額化の傾向が強まっています。
例えば厚生労働省は今年1月、2019年度にマクロ経済スライドを発動することを決めましたが、それにより年金額の改定率が賃金・物価の上昇よりも抑制されることになり、今年度の公的年金は0.5%の実質削減となりました。
同省は2016年に「マクロ経済スライドを行ったら、行わない場合に比べて、2026~2043年度までに年金支給額は0.6%減少する」との試算結果を公表しています。
もしこの試算通りになると、将来的に現状よりも国民年金で年間約4万円、厚生年金で同約14万円も減ることになるのです。
収入を年金のみに頼り、苦しい経済状況の中で生活している高齢者が現時点においてすでに多いことを考えると、年金減額によって生活が成り立たなくなり、生活保護を受ける高齢者が今後さらに増加していく恐れがあります。
高齢者の51.1%が働いていない最大の理由とは
高齢者の就労状況について
「平成28年度版高齢社会白書」によると、60歳前後の年代では男女とも半数以上が就業しているのに対して、70歳前後になると就業者の割合は20~30%まで落ち込んでいます。
また、厚生労働省が行った調査によれば、高齢者が働く理由として最も多いのは「生活の維持」で、「生活引き上げ」などの回答を合算すると、経済的な理由が全体の約50%を占めていました。
年金収入だけでは不安であるため、働くことを余儀なくされる高齢者が多いわけです。
さらに高齢社会白書では、60歳定年企業で定年に到達した人のうち、引き続き継続雇用された人の割合は82.1%に上るとの調査結果(2015年実施)も示されています。
継続雇用される人の割合は年々増加しており、2012年は73.7%、2013年は76.5%、2014年は81.4%で、2012から2015年までの3年間だけで8.4ポイントも上昇しました。

社会の高齢化が進む一方で、高齢になっても働く人は毎年増えているわけです。
ただ、31人以上の従業員がいる企業約15万社のうち、希望者全員が65歳以上まで勤務できる企業の割合は全体の72.5%。3割近い企業において、就労を望む高齢者全員を雇用できる体制が整えられていない実情も明らかにされています。
仕事をしたいのにできない現実
高齢者の就労意欲は高く、「平成28年度版高齢社会白書」によると、高齢者(60歳以上)に何歳まで収入のある仕事をしたいかを尋ねたところ、「働けるうちはいつまでも」との回答が全体の28.9%を占め最多となっていました。
就労を希望している高齢者の割合は全体の71.9%にも上り、働く意欲のある高齢者が多いことがわかります。
しかしその一方で、就労意欲があるのに仕事に就けない高齢者も多く、厚生労働省が行った調査によると、仕事がしたいのに就けない理由としては「適当な仕事が見つからなかった」との回答割合が最多となっており、その次に「本人の健康」が続いていました。
高齢者の場合、足腰の衰えや持病など、健康的な理由で働けなくなる人はどうしても増えてきます。しかし実態としては、そのような心身の衰えよりも、働ける場所・仕事がないから就労できないという人の方が多いのです。
高齢者が働きたいと思っていても、企業側がその希望に応えるような就労環境を提供できていないのが実情といえるでしょう。この場合、企業の採用条件が広がるように法整備を行うことが、対策のひとつとして考えられます。
求められる法の整備と65歳以上の就労支援
70歳まで働くために法制度を見直す
政府は今年5月、高齢者が70歳まで働けるよう、雇用確保を図る方針を固めました。
現行の「高年齢者雇用安定法」では、希望者全員を65歳まで雇用するよう義務付けていますが、65歳以上の雇用については特に規定がありません。そこで政府は同法を改正し、70歳までの雇用確保を努力義務とする規定を新たに設けることを決めたわけです。
また、高齢者に働きやすい環境を提供するために、他企業への就職支援、フリーランスによる契約、あるいは起業支援など、多様な働き方を提供するよう企業に促していく方針も明らかにしています。
ただ、企業に対して一方的に高齢者雇用を促せばそれでよいというわけではありません。企業が無理に定年延長などに取り組むと、人件費を上昇させて収益を圧迫させ、経営状態を悪化させる恐れがあります。
また、高齢者を雇用するために中堅、若手社員の待遇を下げるようなことが起これば、若い世代の就労意欲を削ぐことになりかねません。
高齢者に対しても職務内容や実績に基づく評価を行うなど、適切な人事制度を構築することも企業には求められるでしょう。
多様な働き方ができる企業や仕事を増やす
高齢者の雇用を進める上では、法整備により採用枠を広げ、多様な働き方を選べる仕組みを導入し、高齢者が無理なく働ける環境を整えることは重要です。
ただ、対策としてはそれだけでなく、高齢者が行える仕事そのものを作りだすことも有効といえるでしょう。

例えば、休耕田を開墾してかんぴょうの栽培を行い、高齢者が取り組める新たな仕事・農業を創出するという甲賀市で進められている取り組みはそのひとつです。
ほかにも、女性高齢者が活躍できる場として家事代行サービスの会社が設立されたケース(東京)や、人手が不足しがちである早朝などの時間帯に高齢者に働いてもらうという柏市の「生きがい就労」などの事例もあります。
こうした高齢者が取り組める仕事を創出するという動きが全国的に広まっていけば、高齢者が収入をアップさせる機会もそれだけ増えることになるでしょう。
今回は高齢者の収入と就労に関する問題について考えてきました。今後企業がより積極的に高齢者を受け入れ、幅広い仕事内容や就業条件を提供することで、労働力不足を解消すると同時に、高齢者の就業率を改善できる可能性が広がるのではないでしょうか。
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