これまで第167回と第172回で靴の選び方について解説してきました。
今回は最後のポイントである2つのチェックポイントに注目していきます。
靴が柔らかすぎると問題を生じやすい
まるで雑巾のように靴をねじることができたり、クルリと丸められるような靴には注意が必要です。たとえば、つま先立ちをするときに靴底全体が曲がってしまうような靴のタイプです。
こうした靴は疲れやすいうえに土踏まずが下がって足が平坦になってしまったり足底腱膜炎などの足のトラブルを助長する危険性があります。
足底腱膜炎とは、かかとの骨の下側から指の付け根に及ぶ足底腱膜に炎症が起こるもので、足の親指の付け根やかかとなどに痛みが生じます。
特徴は、寝て起きたときなどに、立ち上がったときや第一歩目に強い痛みが出やすくなる点です。
こうした症状を予防するためには、以下の2点が靴選びのポイントになります。
- 靴がねじれない
- 靴底は足が反るところだけで曲がる

横幅が合った靴を選ぶ
靴の横幅がきつかったりゆるかったりして、自身の足とサイズが合っていないと、歩行に悪影響を及ぼします。
もし、靴幅がきついと履いている間に足が当たって痛くなったり、皮膚が赤くなったりします。そうすると、無意識に痛いところをかばって歩きますので、良くない歩き方になってしまいます。
一方で、足に対して靴幅が広すぎると、甲の部分を留めても靴の中で足が安定しにくいため、余計な力を使って靴の中で踏ん張った状態で歩くようになります。そのため、横幅の合った靴を履いているときに比べて、疲れやすくなることがあります。
また、いくら足の指で踏ん張っていても必要以上に広いと靴の中で足が動いてしまいます。第167回でもご紹介したように、皮膚の摩擦によってタコやウオノメの原因にもなるので注意してください。
【事例】立ち仕事をしているAさん
Aさんは、何年も小指の付け根にウオノメができていて、その箇所に痛みがあり、自分で削っていたそうです。相談に来られる前のAさんは、小指の付け根に靴が当たらないよう、幅の広い靴を甲を緩くして履いていました。
そこで、ウオノメを取って、ある程度痛みを取り除いたあとに次のようにご提案しました。
- 足の幅に対してぴったりの靴に変える
- 靴底にクッション性がありつま先立ちしたときに曲がるところだけが曲がる靴に変更
- 甲を留められる靴で適切な履き方を行うこと
この3点を実行していただいた結果、Aさんは「痛くなくなったんです」と大喜び。長年悩んでいたウオノメによる苦痛の日々が解決しました。
足のトラブルは靴のサイズと履き方によることが少なくありません。足に良かれと思っていた選択が逆効果になることもあります。Aさんのように一度見直してみると、足の健康を維持できるケースも少なくありません。
まとめ
今回のポイントをまとめてみましょう。
靴選びのポイント
- 靴がねじれて、靴底は足が反るところだけで曲がる靴を選ぶ
- 横幅が広い靴ではなく、ぴったり合ったタイプを選ぶ
足腰が弱ってきた高齢者にとって、いつまでも自分の足で歩き続けたいのは大きな望みです。その思いを叶えるためには元気なときからの積み重ねが大切です。
そう考えると運動や食事摂取によく似ています。自分に合った靴を適切に履いてウォーキングや散歩をすることで、体にとってより効果的でダメージのない健康づくりにつながります。
皆さんがこれからも自分らしく過ごし続けるために、今回の靴選びシリーズの連載を参考に靴を選んでいただけたら幸いです。