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第174回

【脳卒中】麻痺を改善し、また歩けるようになる可能性を高める5つの特性とは?

最終更新日時 2023/12/06
#親の介護 #介護予防 #高齢者の健康
目 次

脳梗塞や脳出血の後遺症として麻痺などの症状が残ったとき「歩けるようになるだろうか?」と不安になられる方は多いのではないでしょうか。

2021年に発表された、オーストラリアの研究チームが研究論文によると、ある特性があれば、発症から3~4ヵ月で一人で歩けるようになる可能性が高くなることがわかりました。

その特性とは以下の5つです。

  1. 皮質脊髄路を損傷していない
  2. 起居動作をひとりで行える
  3. 脚の筋力が強い
  4. 認知機能が低下していない
  5. 年齢が若い

今回はそれぞれの特性について詳しく解説いたします。

①皮質脊髄路を損傷していない

皮質脊髄路とは、手足を動かす指令を送っている神経です。この神経が脳梗塞や脳出血によってダメージを受けると、運動麻痺を引き起こす要因にもなります。

そのため、皮質脊髄路に損傷がなければ、手足を動かしやすく、歩きやすい状況にあります。

皮質脊髄路を損傷しているかどうかは、開頭しない限りはっきりと確認することはできませんが、CTやMRIなどの脳画像、トラクトグラフィーなどを用いて損傷状況を推定します。

自身の状態について気になる方は、医師や理学療法士などに相談してみましょう。

②起居動作を一人で行える

起居動作とは、ベッドで寝返る動作やベッドから起き上がる動作、座っている動作などを指します。脳梗塞や脳出血を発症した直後は、起居動作が困難になることがあります。

なお起居動作には脚や体幹の運動機能、バランス能力などが必要になります。これらの能力は歩くうえでも必要です。

そのため、発症から1ヵ月以内に起居動作を行えるくらいの体幹・脚の運動機能、バランス能力がある方は歩けるようになりやすいのです。

起居動作をチェックする方法

では、どの程度の起居動作が行えると良いのでしょうか。起居動作の状態を把握するには「Trunk Control Test」という検査があります。このテストでは、おもに以下の項目を検査します。

Trunk Control Testのチェック項目

  • 非麻痺側への寝返り
  • 麻痺側への寝返り
  • 起き上がり
  • 座位保持

採点方式

  • 0点:介助を必要とする
  • 12点:何らかの手段を用いる
  • 25点:普通に行える

    このように、4つの項目を3段階の点数で評価します。すべて完璧に行えれば100点、すべて行えなければ0点になります。

    2017年のニュージーランドの研究では、脳卒中を発症して3ヵ月で歩けるようになる人は、発症1週間の時点でTrunk Control Testの点数(中央値)が24点だったと報告されています。

    つまり、おおむね発症から1週間で24点以上とれていれば3ヵ月以内に一人で歩けるようになる可能性が高いことを示しています。

    ちなみに24点というのは、先ほど紹介した4つの動作のうち、2つの動作で「何らかの手段を用いながら行える状態」です。

    例えば、「ベッド柵を持って寝返りができる」「ベッド柵を持って座ることができる」の2つができれば24点になりますので、基準値に達していることになります。

    また、2016年の日本の研究で、回復期病院に入院してから3ヵ月後に歩けるようになっていた人のデータを振り返ってみたところ、入院時(脳卒中発症からおよそ1ヵ月)のTrunk Control Testの平均値がおよそ44点だったことを明らかにしています。

    一方、歩けるようにならなかった人は、Trunk Control Testの平均値がおよそ21点でした。

    つまり、発症1ヵ月時点でTrunk Control Testの点数が低く、起居動作を一人で行えない状態だと、その後に歩けるようになる可能性が低くなります。

    ③脚の筋力が強い

    脚の筋力が強ければ、一人で歩くうえで有利になります。

    では、どれくらい筋力が強ければ良いのか具体例を見ながら解説していきましょう。

    1990年にニュージーランドで行われた研究では、脳卒中を発症してから4ヵ月までに歩けるようになった患者さんと、歩けるようにならなかった患者さんで、それぞれ「発症7日時点の筋力」を報告しました。

    筋力検査には「Medical Research Council(MRC)」という方法が使われています。

    MRCで脚の筋力を検査する場合、股関節屈曲(ふとももを持ち上げる動き)、膝関節伸展(膝を伸ばす動き)、足関節背屈(つま先をあげる動き)の3つの運動を行います。

    そして、どれくらい動かすことができるかを観察し、こちらの基準に従って点数をつけます。

    1990年の研究では、脳卒中を発症してから4ヵ月までに歩けるようになった患者の場合、発症7日時点での股関節屈曲・膝関節伸展・足関節背屈の3つの動きのグレード平均値がおよそ3.5だったことを報告しました。

    つまり、この研究結果から、脳卒中を発症してから7日時点で、重力に対して脚をほぼ全可動域動かせる~中程度の抵抗に対してほぼ全可動域を動かせるくらいの筋力がある場合、発症4ヵ月までに歩けるようになる可能性が高いと言えます。

    一方、発症4ヵ月までに歩けるようにならなかった患者の場合、発症7日時点で3つの動きのグレード平均値がおよそ1.7でした。

    つまり、脳卒中を発症してから7日時点で脚の筋肉を少し働かせられる、もしくは横向きに寝ている状態であれば動かせるくらいの筋力の場合、その後に歩けるようにはなりにくいことがわかります。

    ただし、脚の筋力には個人差もありますので、すべての人に当てはまるわけではありません。

    ④認知機能が低下していない

    脳卒中発症によって認知機能が低下したり、あるいはもともとアルツハイマー病などで認知機能が低下していたりする場合、そうではない方と比べると、歩けるようになる可能性が下がります。

    認知機能の検査はいくつかありますが、日本では「Mini-Mental State Examination(MMSE)」という検査が用いられることが多いです。

    MMSEは30点満点の検査で、認知機能が良好なほど点数が高く、認知機能に何らかの問題があると点数が低くなります。

    2015年の日本の研究では、MMSEの基準値を「23点以下」としています。

    なお、先ほど脚の筋力で紹介した1990年のニュージーランドの研究ではMMSEでおよそ22点とれていれば発症4ヵ月までに歩けるようになっている可能性が高く、15点しかとれていないと歩けるようになる可能性が低いことを報告しています。

    そのため、個人差はありますが、MMSEでの得点が22~23点に届くかどうかが歩けるようになるかの基準になると考えられます。

    ⑤年齢が若い

    当然かと思われるかもしれませんが、年齢がより若い人のほうが歩けるようになる可能性が高まります。

    2015年の日本の研究では、歩けるようになった患者の平均年齢はおよそ63歳、歩けるようにならなかった患者はおよそ70歳でした。この傾向は、別の研究でも同様の結果が出ています。

    ただし、年齢についても個人差があり、80歳でも歩けるようになる方もいます。一般的な基準としては、63~64歳前後までは歩行に有利に、70歳以上であれば不利になると考えられるでしょう。

    以上、ひとりで歩けるようになる上で有利にはたらく特性を5つ紹介させていただきました。

    いずれの特性も病院入院中であればすぐ検査・確認できるものですので、気になる方は医師か担当セラピストに確認してください。

    私が代表を務めるBRAINでは、東京都世田谷区の店舗リハビリおよび東京23区内の自宅での訪問自費リハビリサービスを提供しています。

    経験年数8年以上の認定理学療法士・認定作業療法士が最新のエビデンスに基づく脳卒中専門リハビリを行なっておりますので、質の高いリハビリを受けたい、という方はぜひお問い合せください。

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