皆さんは、日常的に使用する靴をどのように選んでいますか?
前回は靴のサイズについてご紹介しましたが、今回は靴ひもやマジックテープ(ベルクロ)、かかと部分について解説いたします。
普段、あまり気にすることのない部分かもしれませんが、そのちょっとの差が高齢者の転倒やふらつき予防につながることもあります。
ぜひ本記事を参考に適切な靴を選んでください。
ひもやマジックテープで足の甲をしっかり固定しよう
前回の記事にて、靴は足の大きさとぴったり同じではなく、足よりも1cmほど大きいものを選ぶことが重要だと紹介しました。
では、実際に足の長さよりも1cmほど長さに余裕のある靴を履いたとき、甲の部分をしっかりと留めずに履いたとしたら、どんなことが起こると思いますか?
靴の中で足が前滑りするなど動いて“ズレ”が生じ、足にタコができやすくなります。さらに、足が前方に寄ってしまっていると、足の指を動かすスペースがないため安定した歩行の妨げにもなりかねません。
したがって、足にあったサイズの靴を適切に履くためにも、甲の部分をひもやベルクロできちんと留めて、足が靴の中で動かないようにできる靴を選ぶことが重要になります(第133回参照)。
ファスナーとひもが両方ついている靴も、ファスナーだけで着脱を繰り返していると甲部分のひもが緩んでしまいます。2~3日に一度はひもを縛り直して着用するようにしましょう。
甲の部分をしっかり留められるひもが付いていても、いじらずに脱ぎ履きしていては意味がありません。
靴のかかと部分は履きやすさではなく硬さを重視しよう
靴のかかと部分は、あまり気にしていない方も多いのではないでしょうか。
かかと部分が硬いもの、柔らかいもののどちらが良いのか知る機会がなかったかもしれません。商品広告などを見ていると柔らかいことや脱ぎ履きしやすいことをアピールしている靴も少なくありません。そのため、柔らかいほうが良いと思われる方もいるでしょう。
実際には、体のむくみなど目立った心配や異常がなければ、一般的にかかと部分が硬い靴をおすすめしています。
靴のかかと部分を手の指で押して倒れないくらい、かかとが硬い靴が良いでしょう。グニャリと曲がってしまうものは脱ぎ履きをしやすいかもしれませんが、健康面を重視した場合、手で押して倒れるかかとよりも倒れない硬さのある靴が良いとされています。
怪我から保護するためだけに履くのならサイズが合っていなくても、甲を留められなくても、かかとが柔らかくても問題ありません。
しかし、靴は歩行を助ける役割も担っているので、役割を果たしてもらうには靴の機能性から選ぶことが必要になるのです。
【事例】タコができなくなり足指が柔らかくなった!
これは、私がフットケアの知識を得る前の体験です。
あるひも靴を購入し、甲の部分をいじらずに脱ぎ履きできるように緩くしてスリッポンのように履いていた時期があります。その頃は、足の小指の腹がいつも尖って固くなっていました。
そして、親指の付け根にもタコができていました。長年このような状態が続き「自分の足はこういうものだ」と思っていたのですが、適切なサイズや靴選びをしたところ変化しました。小指の腹はふっくらと柔らかく、親指の付け根もタコができなくなったのです。なんといっても足と靴がピタッとくっついて歩くので疲れにくいことがわかりました。
適切なサイズで適切な履き方をするまでは「まあ、こういうもの」と何の疑問も持ちませんでした。しかし、違いを体験すると、なぜあんな疲れることをわざわざしていたんだろうかと不思議にすら思います。
まとめ
今回ご紹介した靴の選び方のポイントは次の通りです。
- 足の甲を留める紐やベルクロがある靴で適切に履くこと
- 踵に体重がかかっても支える硬さがあること
靴を試着する機会があればぜひ一度履き比べてみてください。「こんなこと」と思うことがとても大切なことだったりします。ちょっと靴が合わないと感じると、靴擦れができたり、長い時間立っていることすら辛く感じます。
靴は安全面のためだけに履くものではなく、私たちがよりよい2足歩行を助ける重要なアイテムなのです。
また、高齢になると筋力の低下や感覚の低下により、バランスがとりにくくなってきます。そのようなときに足に合った靴を履いていることで足指を使って踏ん張ることができ、転倒やふらつきを予防することにもつながります。
高齢の方にとって転倒は重大な障害を残すリスクにもなります。靴の些細な差が未来を変えるかもしれません。