全国各地に広がる「通いの場」では、地域のコミュニティスペース、健康体操、ボランティア活動などが行われ、高齢者の「自分の居場所づくり」や「仲間づくり」「生きがい」となり、介護予防の大きな力となっています。
今回は、通いの場が生まれた背景や役割などを解説します。
通いの場の範囲は2020年4月から拡大した
「通いの場」は、2014年の介護保険法の改正で制定されました。当初の条件は以下の通りです。
- 体操や趣味活動が介護予防になると市町村が認める場合
- 有志、ボランティアなど地域住民の参加
- 運営については、市町村が財政的に支援を行っているものに限らない
これらの条件に加えて、2020年4月に行われた国民健康保険法の一部改正で以下のような変更がありました。
- 自治体における介護保険担当以外の部局が行う、スポーツや生涯学習に関する取り組み、公園や農園を活用した取組など介護予防につながる取り組み
- 民間企業・団体や社会福祉協議会など多様な主体と連携した取り組み
- 医療機関や介護保険施設などが自主的に行う取り組み
- 有償ボランティアなど、いわゆる就労に類する取り組み
この改正により、通いの場の活動範囲は大きく広がりました。最近は、感染予防のため、オンラインで行っているケースも増えています。
通いの場に参加することで、気分が明るくなる
年齢を重ねると、誰でも外に出る機会が少なくなり、自然と家にいる時間が多くなります。
そうすると、気分が落ち込み、プレフレイル(前虚弱)状態に陥りやすくなりますが、通いの場に出かけることで、顔なじみの人との会話やレクリエーションを楽しめます。
ほかにも、運動教室で体を動かすことで気分も明るくなり、友人も増えて、毎日が楽しくなります。
全国の特色ある活動をいくつか紹介いたします。
自治体 | 取り組み | 活動内容 |
---|---|---|
宮城県 | 大河原町デイサービスを活用した住民主体の介護予防教室 | 介護予防教室 |
愛知県 | 豊明市生活の中にある人の望む居場所が通いの場となる地域づくり | まちかど運動教室 |
千葉県 | 流山市笑顔があふれる世代間交流の場に拡充 | 高齢者同士や世代間の交流 |
岐阜県 | 各務原市農作業体験を通じた新たな介護予防事業(農福連携) | にんじん収穫体験や農作業体験など |
滋賀県 | 近江八幡市自分のペースで無理なく参加できる地域活動 | 定年退職者を対象とした料理教室・ボランティア活動など |
通いの場の原型は新潟の「茶の間」にあった
私の地元でもある新潟県では、政府が通いの場を全国的に広める以前から、「地域の茶の間」という活動を行っています。これが通いの場の原型だともいわれています。
新潟市による「地域の茶の間」事業は、市内で介護保険外の有償サービスとして居場所づくりを進めていた立ち上げ人が、1997年にスタートしたことがきっかけになりました。
2000年には、新潟県長期総合計画に組み込まれて「地域の茶の間」の存在が広く知れ渡り、全国に広がっていきました。
「地域の茶の間」は、仲良しクラブではなく、社会性のある場として現在も活動しています。
内容
会場は自宅や空き家、公民館などを使用。年齢や性別に関係なく、好きなときに集まってレクリエーションや趣味活動をしながら自分の居場所や役割を見つけることを目的としています。
効果
- 顔なじみや昔からの友人と話すことが増えて、楽しい気持ちになる
- 参加者同士が連携して、困ったときに助け合える
- 子どもたちや若い人と交流することで、地域の文化が伝承できる
- ボランティア活動に参加し、自分の居場所づくりができる
- 体や頭を使うことで介護予防になる
私が住んでいる新潟県燕市でも、「地域の茶の間」が発展して通いの場となっています。いくつか例を挙げてご紹介します。
- 地域のふれあいさろん
- 毎月1回程度開催し、人と交流する機会が設けられます
- 燕市介護予防自主グループ
- 近所で運動したい人に向け、介護予防体操を行います
- 通所型サービスB
- 茶話会、軽運動、趣味活動など気軽に参加できます
- お口と体の健康教室
- 健康教室卒業者に向け、継続的なサービスを行います
- 元気会
- 軽運動や作品づくり、レクリエーションを通じて元気になりたい人を応援します
- 骨コツ教室
- 骨粗しょう症の勉強会を催し、健康づくりの知識が身に着けられます
- 燕市元気磨きたい「登録プロジクト」
- 楽しく運動できるプログラムが用意されていて、仲間づくりができます
各地で広まっている通いの場。
皆さんの地元でも、特色ある通いの場があるかもしれません。「最近、父や母の元気がなくなってきた」などの悩みを抱えている方は、ぜひ利用を考えてみてください。