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第23回

口腔ケアのベストタイミングは?細菌数の変動に注目!

最終更新日時 2021/08/27
#介護予防
皆さん、こんにちは。食と生を支えるコンサルタントナースの西依見子です。口腔内の細菌は全身のさまざまな疾患と関係しているということが、近年の研究で明らかになりつつあります。新型コロナウイルス感染症に関しても、口腔内細菌の関与が指摘されており、口腔ケアの重要性はますます高まっています。そこで今回は、口腔ケアを行う適切なタイミングについて解説いたします。

皆さん、こんにちは。食と生を支えるコンサルタントナースの西依見子です。

皆さんの口腔内には、300種類以上、数千億個の細菌が存在しています。歯にネバネバとくっついた「プラーク」1g中には、糞便1g中と同じ細菌数が存在すると言われています。そして口腔内の細菌は、全身のさまざまな疾患と関係することが、明らかになりつつあります。新型コロナウイルス感染症に関しても、口腔内細菌の関与が考えられており、口腔ケアの重要性はますます高まっています。

このような時代だからこそ、口腔内を清潔に維持することで、より効果的に感染症を予防する必要があります。

今回は、感染症予防や口腔内の細菌を減少させるために大切な口腔ケアのタイミングについて、考えていきたいと思います。

口腔ケアのタイミング(1)細菌が増える前、増えた後

就寝前の口腔ケア

まず口腔ケアを行うべきタイミングは、就寝前です。睡眠中は唾液の分泌が減少して、細菌が増加するからです。

唾液には、殺菌作用や自浄作用があります。さらに口腔内の免疫力を高め、清潔に保つ大切な役割を果たしています。また、唾液は分泌される時点ではきれいな状態ですが、歯や粘膜の細菌叢(細菌の集団のこと)に影響を受けることで、唾液中の細菌数が増加します。

高齢者は加齢や内服の影響などにより、唾液の分泌が少なくなっています。そのため、高齢者の口腔内は、乾燥しやすく、歯のプラークが増えて細菌が繁殖しやすい状態なのです。

健康な人でも、夜間は唾液を誤嚥(誤って喉頭と気管に入ってしまった状態)していることがあると言われています。まして要介護の高齢者ともなると、夜間に唾液を誤嚥する頻度は高くなります。分泌したばかりのきれいな唾液と、多くの細菌を含んだ唾液を誤嚥するのでは、感染症にかかるリスクが大きく異なります。

そのため、口腔ケアのタイミングとして就寝前はとても重要になってきます。

義歯をつけている人は、就寝前には外して、洗浄液や水につけているかと思います。しかし、その場合も義歯だけでなく、歯や上顎・頬の内側・舌の上などの粘膜をきれいにすることが大切です。特に歯にネバネバしたプラークを残したまま就寝すると、細菌叢を増加させてしまうからです。

歯がある場合は歯と粘膜を、ない場合は粘膜のみを清潔にしましょう。

起床直後の口腔ケア

起床直後は、細菌数が一番多くなっています。この理由は、夜間に細菌が増殖するためです。

起床直後の口腔内は、粘性の高い口腔内分泌物が貯留しています。夜間に口を開けたまま寝てしまっていた人の場合は、特に口腔内が乾燥し、痰の塊のような上皮剥離組織、ネバネバした唾液などが口腔内全体に付着していることもあります。

皆さんも、朝起きたとき「口が乾いている」「ネバネバしている」と感じたことがあるのではないでしょうか。この粘性の高い分泌物は細菌の塊です。

起床時にはできるだけ早くこれらを除去する必要があるため、起床したタイミングで口腔ケアを行いましょう。

口腔ケアは、起床時や就寝前が最も効果の高いタイミングです。しかし、介護施設などでは体制の問題などで、どうしても時間をかけられない場合もあります。そのようなときは、利用者の方々に可能な範囲でうがいをしてもらってください。うがいが難しい場合は、口腔ケア専用のティッシュやスポンジブラシなどの粘膜ブラシでさっとふき取るだけでも、感染症の予防効果が高まります。

寝る前と起きた直後は口腔ケアを欠かさずに!

口腔ケアのタイミング(2)日中の口腔ケア

食事に合わせた口腔ケア

食後の口腔ケアは、当然ながら良いタイミングです。しかし、食後だけでなく、口腔内の状態によっては、食前も口腔ケアに最適なタイミングになることがあります。

例えば、「乾燥している」「口腔粘膜にかさぶたなどがある」「歯にプラークがついている」などの場合は、食前に口腔ケアを行いましょう。乾燥した舌では、飴玉を舌の上においても、甘さが感じられないと言われています。軽く口腔内を水分で湿潤させる程度のケアを加えるだけでも、味の感じ方が変わります。

食事を美味しく食べるために、食前は口腔内の状態を観察して、必要なケアを行ってみてください。

また、食後は「唾液によって口腔内のpH値が適正に戻るまで少し時間をおいてから口腔ケアをしたほうが良い」と言われることがあります。しかし、要介護の人は口の動きが悪いこともしばしばあり、食事によって口腔内に食べかすが残っていることもあります。食べかすが多く残っていると、誤嚥や窒息の原因になるので、食後すぐのタイミングで口腔ケアを行いましょう。

毎食後の口腔ケアでは、可能な限り細菌が除去しきれるよう、歯や歯間のケアもしっかり行いましょう。歯が2本以上ある箇所は、歯間ブラシを用いるのがおすすめです。

帰宅時の口腔ケア

さらに口腔内の状態によっては、口腔ケアが必要なタイミングがあります。

それが外出から帰宅したときです。デイサービスなど外出から帰ってきた際は、手洗いやうがいをされている方は多いと思います。しかし、外出時は、感染予防の観点から歯磨きなどの口腔ケアは控えられています。「外出時に十分な口腔ケアができなかった」「長時間口を開けていた」などの場合、口腔内の観察を行い、うがいに加えて口腔ケアも行うと良いでしょう。

口腔内の状態によっては食後だけでなく食前のケアも忘れずに

経口摂取をしていない人の口腔ケアの注意点

経口摂取(口からの栄養摂取)をしていない人も、同じように就寝前、起床時、帰宅時は、適切な口腔ケアのタイミングだと言えるでしょう。

しかし、食事に関する口腔ケアのタイミングは異なります。経口摂取している人は、食後でしたが、経口摂取していない人は食前にあたる注入前または時間をおいてからのほうがタイミングが良いからです。

その際に注意すべきリスクは嘔吐です。経口摂取している人の食後の口腔ケア時でも、嘔吐のリスクはありますが、自分で吐き気があれば伝えることができる場合が多いでしょう。また、食べかすが口に残るほうが、細菌繁殖、誤嚥・窒息のリスクが高いため、食後のケアは重要になってきます。

胃ろうや経鼻経栄養をしている人の場合、口腔ケアに介助が必要なことが多く、吐き気があっても自ら訴えることができない人も多くいます。そのため、栄養注入中や注入後の口腔ケアでいきなり嘔吐してしまう危険性が高まります。

これらを予防するため、経口摂取していない口腔ケアに介助が必要な人の場合は、栄養剤注入中や注入後ではなく注入前や少し時間をおいてから行うほうが良いでしょう。

細菌数の変動に注意して適切なタイミングでケアしよう

口腔ケアを効果的に行うためには、1日の細菌数の変動に着目することが大切です。細菌が多くなる「細菌が増える前の就寝時」「細菌が一番多くなっている起床時」を優先して行いましょう。また、食後にはしっかりプラークを除去できる口腔ケアを行うと良いでしょう。しかし、経口摂取していない人は、嘔吐などを予防するため、注入前の食前または時間をおいてから行うことをおすすめします。

本日お話したのは一般的な口腔ケアのタイミングです。個々の口腔内の状況により、適切な口腔ケアのタイミングは変わってきます。口腔内がすぐに汚れてしまう場合は、口腔ケアのタイミングや内容を考え直す必要があります。

口腔ケアをタイミングよく取り入れることで、口腔内が清潔になるだけでなく、生活にリズムも生まれてきます。また、口腔ケアは、インフルエンザや新型コロナウィルス感染症を予防する効果も期待されています。口腔内を清潔に保てるよう、タイミングよく口腔ケアを行いましょう。

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