皆さん、こんにちは。(公社)大分県栄養士会の栄養ケア・ステーションを担当している、管理栄養士の濱田美紀です。
「脱水」というと、「夏場だけ気をつければ良い」と思っている方も多いのではないでしょうか。実は、冬の季節も脱水になる可能性があるので注意が必要なのです。今回は「冬場の脱水症状を防ぐ栄養管理」について、話していきたいと思います。
脱水症状になりやすい高齢者は冬場も注意が必要
皆さんは、私たちの体にどれくらいの水分が含まれているかご存じでしょうか?子どもの場合は体重の70~80%、成人は体重の約60%、高齢者は体重の約50%が水分となります。この中で高齢者は体内に含んでいる水分量がもともと少ないことや、水分摂取に必要な食事摂取量が減ってしまう方がいたり、のどの乾きを感じにくい方もいるため、脱水になりやすいので注意が必要です。
脱水は体に取り込む水分よりも、体から排出される水分が多くなると起きてしまいます。例で言うと、以下のような場合です。
- 夏に大量の汗をかく
- 感染症にかかり下痢の状態が続く
- あたたかい部屋で厚着をしすぎて汗をかいてしまう
また、高齢者の方は「寒くてトイレに行くことが面倒だから」という理由から飲みものの量を減らすというのも聞きますので、注意が必要です。
脱水が重症化すると吐き気や目まい、意識を失うことも
脱水になった場合、以下のような症状が現れることがあります。
- のどが渇く
- 尿量の減少
- 体がだるい
- 立ちくらみ
- 食欲不振 など
脱水症状が重症化すると、口の中が乾燥して食べものが食べにくくなったり、吐き気や「目まい」なども感じるようになります。また、ひどい症状の方は意識の消失や命の危険にさらされる場合も。特に昨今は、新型コロナの感染予防のためにマスクをされている方が多いと思います。
マスクをしている状態では「熱がこもりやすくなる」「のどの渇きを感じにくくなる」「マスクを外すことが面倒でつい水分を摂る量が減ってしまう」といったことがあるので、注意が必要です。
脱水かどうかを確認する2つの方法
1:ツルゴール反応で確認
下記のように手の甲をつまみ、つまんだ跡が消えるまでに3秒以上かかる場合は脱水を疑いましょう。
2:尿の色や回数で確認
尿の色が濃いほど水分不足の可能性があります。尿の回数の減少も脱水の可能性があるので、注意が必要です。
毎日の食事をしっかり食べることも脱水予防に
脱水予防をするには「水分をたくさん取れば良いのでは」と思っている方もいるかもしれませんが、大事なのは毎日の食事をしっかり取ることです。なぜなら、普段何気なく食べているご飯やおかずには、多くの水分が含まれています。特に野菜類の場合は、90%以上の水分を含むものが多いです。
3食食べている方と2食しか食べていない方で違いはありますが、私たちが1日に食事で約1,000mlの水分を摂取していることを考えると、毎食の食事は栄養を摂るだけでなく水分も摂っているとも考えられますよね。
このとき、毎回の食事のときや、間食にお好きな飲み物を追加して飲むことで脱水予防になります。目安は1,000ml~1,500mlです。(500mlのペットボトルで2本か3本)1度にこの量を飲むのは大変なので、少しずつ飲むことをおすすめします。お酒は水分量としては多いですが利尿作用もあり、かえって脱水を引き起こす要因になってしまう可能性も。それとは別に水やお茶を飲むことをお勧めします。
飲みものを多めに取るなどして、脱水を予防しましょう。
水分でむせる方は「とろみ」をつけてみましょう
高齢者の方は嚥下(えんげ)能力が低下しているので、飲みものを飲むときにむせてしまう方も多いです。しかし「むせるようになったから」と言って飲みものを減らしてしまうと、ますます脱水になる可能性があるので気をつけましょう。
むせるのが心配な方には、水分がのどを通過するときにゆっくりと食道に入るよう「とろみ」をつけると予防できます。現在は薬局やドラッグストアでとろみ剤を購入できます。使い方やとろみの目安についてはお店の方に確認して使用してみるのも良いでしょう。ただし、とろみをつけすぎたりゆるすぎたりすると飲み込みにくくなることもあります。
脱水症状を感じたら経口補水液で水分補給
脱水予防について説明しましたが、もし脱水の症状が出ていると感じた場合、我慢したり無理をしてしまうと、重症化してしまう場合があります。その場合は早めに病院を受診することが大切です。悪化を防ぐためには経口補水液(薬局やドラックストアで簡単に購入可)を家に数本常備し、緊急時に飲むようにしてください。冬場の脱水にならないよう、気をつけて寒い冬を乗り切りましょう。