こんにちは。終活カウンセラー認定講師でジャーナリストの小川朗です。
今回は、介護タクシーの問題点について掘り下げたいと思います。
取材の過程で、介護タクシー現役ドライバーと、辞めてしまった方にお話を伺うことができました。その結果、見えてきたのは、縦割り行政による弊害です。具体的にどのような問題があるのかお話いたします。
介護タクシー業界はイメージチェンジに成功
まず、話をお伺いしたのは、介護タクシー事業を行うウィルエイド(大阪市)の増田景久代表です。現在登録された介護タクシー87台がメッセンジャーアプリのLINEで結ばれ、効率的に配車されています。具体的には、2つのLINEグループ(トークルーム)に流れてくる配車依頼に対して、対応できる者が返信して現場に向かう方法でシステムを構築しています。
大阪市生野区を中心に、天王寺区・東成区・平野区・東住吉区・その他19区で介護タクシーのネットワーク築いており、顧客から受けた「通院」や「ワクチン接種」などのニーズにも応えています。さらに、深夜や早朝、救急車で搬送された後に病院などから帰宅する場合などにも利用可能です。
2015年、増田代表が介護タクシー業界に参入した折には、10年勤めた葬儀業界との違いに心底驚いたそうです。
このようにして、介護タクシー業界のイメージチェンジに乗り出したのが第一歩でした。
2000年にスタートした介護保険法に、介護タクシーの項目が設けられるようになったのは、2003年の介護報酬改定のタイミングです。この頃から介護タクシーをスタートしていた古株の皆さんには、もはや時代に沿った仕事を行うのは無理だったのです。
さらに、増田代表はサービスガイドラインを作成します。
LINEグループでつながることで運行管理者が不要になるため、人件費が削減できるそうです。
縦割り行政に足を引っ張られている
ウィルエイドの場合、利用者は「7~8割が病院経由の利用者で、2~3割が個人利用のリピーター」だそうです。個人利用の場合は「買い物同行」や「外食」に使われることも多いと言います。
介護タクシーの料金は、時間制の場合だと、大型が30分3,150円(普通車は2,880円)で10分超過するごとに1,050円(普通は940円)がかかります。距離制の場合では、1.7kmで700円(普通は680円)からスタートし、208m(普通は241m)ごとに80円となっていますが、それ以外の料金に決まりはありません。
介護保険が適用されるのは乗降介助などに限られるため、ケアマネージャーへの確認が必要です。そこで、介護タクシーの1日の動きについても聞きました。
その一方で、まだまだ改善されなければならない問題もあるようです。例えば、障害者手帳の提示で受けられる「障がい者のタクシー料金の1割引き」です。この分が事業者負担となっていることに対しては、「納得いかない」という声があるのも事実です。
もともと介護保険の管轄は厚生労働省で、タクシーの管轄は国土交通省。介護保険のことは厚労省に聞き、運賃などについては国土交通省運輸局に聞かなければなりません。常に指摘され続ける縦割り行政の問題は、介護タクシーのケースにも垣間見えます。
競争に勝ち抜くには事業の「大規模化」が必要
その一方で、すでに介護タクシーをやめてしまった方にも話を伺うことができました。東京都練馬区で保育ルーム・デイサービス・介護タクシーを運営する「ケアステーションぽかぽか」の白石孝次さんは、2種免許のほか、社会福祉主事、ホームヘルパー2級の資格もお持ちです。そのため、資格を活用して介護タクシーのドライバーも兼務していましたが、現在は辞めてしまったそうです。その理由は、意外なところにありました。
介護タクシーの数は確実に増えて、競争もまた激しくなっています。大阪のウィルエイドのように大きな規模で運営していかない限り、小規模の介護タクシーには厳しい時代が続きそうです。