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第257回

明暗分かれる介護タクシー業者。規模の拡大が成功のポイントか

最終更新日時 2021/09/07
こんにちは。終活カウンセラー認定講師でジャーナリストの小川朗です。「介護タクシー」は、2003年の介護報酬改定で項目として付け加えられました。現在ではSNSを活用して大規模な介護タクシー事業を成功させている人もいます。しかし、その一方で小規模な介護タクシー業者は激しい競争に追われて廃業してしまった人も少なくありません。今回は、こうした介護タクシーの現状と問題点について掘り下げていきます。

こんにちは。終活カウンセラー認定講師でジャーナリストの小川朗です。

今回は、介護タクシーの問題点について掘り下げたいと思います。

取材の過程で、介護タクシー現役ドライバーと、辞めてしまった方にお話を伺うことができました。その結果、見えてきたのは、縦割り行政による弊害です。具体的にどのような問題があるのかお話いたします。

介護タクシー業界はイメージチェンジに成功

まず、話をお伺いしたのは、介護タクシー事業を行うウィルエイド(大阪市)の増田景久代表です。現在登録された介護タクシー87台がメッセンジャーアプリのLINEで結ばれ、効率的に配車されています。具体的には、2つのLINEグループ(トークルーム)に流れてくる配車依頼に対して、対応できる者が返信して現場に向かう方法でシステムを構築しています。

大阪市生野区を中心に、天王寺区・東成区・平野区・東住吉区・その他19区で介護タクシーのネットワーク築いており、顧客から受けた「通院」や「ワクチン接種」などのニーズにも応えています。さらに、深夜や早朝、救急車で搬送された後に病院などから帰宅する場合などにも利用可能です。

2015年、増田代表が介護タクシー業界に参入した折には、10年勤めた葬儀業界との違いに心底驚いたそうです。

「何よりも礼儀礼節を重んじる業界から来て、なんてぬるい業界なのかと驚きました。ジャージ、サンダル、首からタオルをぶら下げて、ベルトはかけない、シートベルトはしないでお客様を乗せっぱなしという状態と、それはひどいものでした。それで私はスーツを着て営業に出たのですが、『その格好で仕事をしているの?』といった反応で、3つの病院からすぐお仕事をいただけました。出先では病院の顔として仕事をしているわけですから、服装は大事だと思うのです」

このようにして、介護タクシー業界のイメージチェンジに乗り出したのが第一歩でした。

「そのうち仕事が月間600件にもなって、さばききれなくなったんです。個人タクシーには限界があるんですね。しかし、一度断ってしまえばもう仕事は来ません。そこで増員を検討しましたが、介護タクシーの先輩方は『俺はこのスタイルでやってきたんや。貫くで』と昔のスタイルを変えられません。そこで若手で構成して行こうと考えました。車選びや開業支援もやりましたし、営業に困っているならコンサルもしました」

2000年にスタートした介護保険法に、介護タクシーの項目が設けられるようになったのは、2003年の介護報酬改定のタイミングです。この頃から介護タクシーをスタートしていた古株の皆さんには、もはや時代に沿った仕事を行うのは無理だったのです。

さらに、増田代表はサービスガイドラインを作成します。

「それまで介護タクシーにはサービスガイドラインがなかったんです。そこで『移心の風』という一般社団法人を立ち上げ、『私たちはこういうことができますよ』というサービスガイドラインをつくり、これをしっかり理解するための基礎課程を修了された方を『移送士』として認定しました。やはり、個人事業主というのは、弱いんです。これを提示することで、相手にも安心感を与えることができます。車の台数にしても、大きい病院から『何台でやってるの?』と聞かれたときに『2台です』と答えれば『ああそう、2台』と言われてもう依頼は来ません。仲間とグループラインでつながることで、『ウチは50台以上でやってます』となれば、やはり仕事は来るんです。ケアマネさんにしても、介護タクシーを探すこと自体が大変な仕事です。断られたら次を探さなければならない。こちらが元受けになって常に介護タクシーを送ることができれば、ケアマネさんにも喜ばれます。余計な仕事が減るわけですから」

LINEグループでつながることで運行管理者が不要になるため、人件費が削減できるそうです。

イメージチェンジとSNS活用で事業の大規模化に成功

縦割り行政に足を引っ張られている

ウィルエイドの場合、利用者は「7~8割が病院経由の利用者で、2~3割が個人利用のリピーター」だそうです。個人利用の場合は「買い物同行」や「外食」に使われることも多いと言います。

「施設に入っているとレクリエーションにも参加せず、部屋にこもっている人もいます。結局、家族から置いてけぼりにされているんです。我々でないと連れて行けないケースもありますから、一緒にショッピングモールに行って買い物をしたり、家族で食事をするホテルまで送迎したりと、外出のお手伝いをするケースは多いですね。気晴らしにもなるし、たまには外でおいしいものを食べたい。トータルで1万5,000円~1万6,000円くらいかかることになりますが、それでも『すごくありがたい』と感謝されることが多いですね」

介護タクシーの料金は、時間制の場合だと、大型が30分3,150円(普通車は2,880円)で10分超過するごとに1,050円(普通は940円)がかかります。距離制の場合では、1.7kmで700円(普通は680円)からスタートし、208m(普通は241m)ごとに80円となっていますが、それ以外の料金に決まりはありません。

介護保険が適用されるのは乗降介助などに限られるため、ケアマネージャーへの確認が必要です。そこで、介護タクシーの1日の動きについても聞きました。

「午前は病院さんが中心ですね。午前中にベッドを開けて午後から新しい患者を受け入れますから。午後にワクチン接種の予約を取ってもらっていますから、その送迎もします。そして、夕方に買い物同行という流れです」

その一方で、まだまだ改善されなければならない問題もあるようです。例えば、障害者手帳の提示で受けられる「障がい者のタクシー料金の1割引き」です。この分が事業者負担となっていることに対しては、「納得いかない」という声があるのも事実です。

もともと介護保険の管轄は厚生労働省で、タクシーの管轄は国土交通省。介護保険のことは厚労省に聞き、運賃などについては国土交通省運輸局に聞かなければなりません。常に指摘され続ける縦割り行政の問題は、介護タクシーのケースにも垣間見えます。

競争に勝ち抜くには事業の「大規模化」が必要

その一方で、すでに介護タクシーをやめてしまった方にも話を伺うことができました。東京都練馬区で保育ルーム・デイサービス・介護タクシーを運営する「ケアステーションぽかぽか」の白石孝次さんは、2種免許のほか、社会福祉主事、ホームヘルパー2級の資格もお持ちです。そのため、資格を活用して介護タクシーのドライバーも兼務していましたが、現在は辞めてしまったそうです。その理由は、意外なところにありました。

「私の場合、デイサービスとの兼ね合いが大きかったですね。例えば、朝のお迎えです。当初は送迎のポイントが介護保険にありましたが、これが削られて継続が厳しくなったんです。タクシーは午前中、特に9時前後の病院への送迎に依頼が集中します。私の場合、デイでは11時30分~12時20分頃まで弾き語りをやって、利用者さんに歌ってもらいます。歌うことは、嚥下(えんげ)機能の維持に効果があるようです。さらに15時過ぎから16時30分ぐらいまではデイサービスの送り迎えがありますが、病院から帰宅する際のタクシーの依頼と重なります。一時はデイのお客様がそれほど多くなかったのでタクシー優先でもやれていたのですが、今は厳しくなりました」

介護タクシーの数は確実に増えて、競争もまた激しくなっています。大阪のウィルエイドのように大きな規模で運営していかない限り、小規模の介護タクシーには厳しい時代が続きそうです。

競争が激しく小規模事業者は厳しい状況が続く

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