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「介護対談」第27回(後編)馬場さん「地域の方やご利用者様にも、その場を共有して楽しめることが重要」

「介護対談」第27回(前編)ノンフィクション作家の中村淳彦さんと馬場拓也さんの対談 馬場拓也
神奈川県生まれ。大学卒業後、ファッション業界へ進む。その後、ジョルジオ・アルマーニ・ジャパンに入社。トップセールスとして活躍後2010年に介護業界へ転身。培ったホスピタリティを介護にも生かすべく、人材育成や様々なプロジェクトによる情報発信を行っている。現在は社会福祉法人愛川舜寿会常務理事。著書に「職場改革で実現する 介護業界の人材獲得戦略」(幻冬舎)がある。
中村淳彦 中村淳彦
ノンフィクション作家。代表作である「名前のない女たち」(宝島社新書) は劇場映画化される。執筆活動を続けるかたわら、2008年にお泊りデイサービスを運営する事業所を開設するも、2015年3月に譲渡。代表をつとめた法人を解散させる。当時の経験をもとにした「崩壊する介護現場」(ベスト新書)「ルポ 中年童貞」(幻冬舎新書)など介護業界を題材とした著書も多い。貧困層の実態に迫った最新刊「貧困とセックス」(イースト新書)は、鈴木大介氏との共著。

取材・文/中村淳彦 撮影/編集部

隔てた壁を壊し、ご利用者や地域の方も共有できる場を設けた(馬場)

この数年、介護業界の経営者やリーダー的な多くの方々が「介護職が地域のデザインをする」みたいな話をよくしている。なんかデザインって言葉が抽象的で、正直ピンとこない。馬場さんが考える介護職が手掛ける地域デザインとはなにか、まず教えてほしいです。

中村中村
馬場馬場

今までのうちの施設は壁があって門があって建物がある。例えば文化祭をする際など、今までは壁際に出店してご利用者に向けて開催していた。施設に向かって立っていた。すなわち地域に背をむけていたんです。「ご利用者に楽しんでもらおう」と。それが今までの僕らの正義だったわけです。それを単純に反対向きにするわけです。

壁を取り払うことによって、地域に向かって出店することができる。参加する高齢者は、一度地域に出て、同じ地域住民として一緒に楽しもうとなる。もしくは、出店側として住民を楽しませる側にもなり得ると。なるほど。

中村中村
馬場馬場

従来の文化祭では振り返ると壁があって、その向こうに地域の人が歩いていた。地域の人はイベントがわからない。すごく視野を狭めていた。だったらご利用者だけではなく、地域向きになにかを仕掛けて、地域の人もご利用者も一緒にその場を共有してもらおうと。そういうイメージですね。

共通の場所があって地域の人と高齢者が交流するだけでケアになりますね。介護職が自分たちだけでケアが成立するとは決めつけず、地域を巻き込んでいくってことか。しかし、介護とか福祉がかかわることは多くの場面において、とにかく魅力が感じられない。つまらないことからは人は離れていきます。

中村中村
馬場馬場

みんなお客様のためと言うけど、それはお客様にならないとわからない。例えば誰でも買い物に行けば、お客さんの立場で行ける。逆さの体験ができる。けど、困ったことに介護はお客さんの立場に立つことができない。高齢になり、要介護状態にならないと、お客さんの立場にはなれないわけですよ。だからこそ想像力や、より客観視することが求められる。

高齢者の立場より、地域住民の立場のほうが想像しやすい。単純に自分が地域の祭りに遊びに行くなら、なにが楽しいかってこと。問題あるかもしれないけど、神社に習って特養にプロのテキヤさんとか呼んじゃってもいいかも。たぶん地域の人は集まって超活気がでますよね。

中村中村

ただ教科書通りの介護では危険であり、高齢者の立場を理解することはできない(馬場)

馬場馬場

在宅サービスを受ける立場になったら、歩くとき必要以上に手を引くことは煩わしいかもしれない。転倒リスクがあるって歩行介助するけど、その意識がマイナスに向かうことがある。本来リスクを避けたいなら、四六時中ずっと手を引かないと安全は担保されないわけで。箱の中だけでリスク回避の介助を提供して、タイムカードを切ったら終わりではあまりに無責任。だって仕事としてのケアはタイムカードを切れば終わるけど、その人の生活は自宅に戻っても続くのだから。

そのような一歩踏み込んだ話は、改めて聞くと確かにと思う。介護職が目の前の高齢者の介助に一生懸命になるのは普通のこと。けど、時として介護施設における普通のことは、俯瞰すると決して正しくない。一歩踏み込んで俯瞰して考えるには、経験とか環境が必要ですよ。

中村中村
馬場馬場

そういう気づきを与えるのはリーダーとか経営者の役割でしょう。高齢者の立場に立つことなく、ただただ教科書通りの介護をするのは、すごく危ないこと。一種の思考停止なので職員の成長も、サービスのクオリティーや自立支援という観点もそこでストップしてしまうリスクがあると思う。

一生懸命やっている現状の中で、第三者が働きかけて意識を変えさせる。さらに一段思考を深めることはとても難しいと思いますが、馬場さんの施設では職員になにをしているのでしょうか。

中村中村
馬場馬場

専門的な勉強会は手堅くやってはいるけど、それだけではダメですね。介護に直接関係のないゲストを呼んで話を聞いて、それをレポートにするとか。この前は職員と建築展に行って、空間の在り方を考えた。人間はなぜそこに座るのか?どうして椅子があると腰かけるのかみたいなことはバカみたいに真剣に考えましたね(笑)。

ちょっとレベルが高くて難しい。全員が全員理解をするわけでなく、長期戦覚悟で介護とは別視点の刺激を提供するってことですね。

中村中村
馬場馬場

例えば空間の在り方を福祉的に考えると、人的支援のみならず環境支援というものがある。人ができることにも限界があって、緑がある部屋とない部屋では人はどう変わるのかみたいなことを、結論をだすのではなく、そのファクターを考える機会を持つわけです。これは決して茶番ではなく高齢者を単にケアの対象ではなく、専門家として目の前で起きているシーンにどう興味を持てるかというか。ある意味専門職としての研究対象としての目は必要です。

介護現場でありがちなのは、入浴。認知症高齢者の入浴で熱くて一生懸命な若い職員が声かけしても断固として拒否だったのが、おばちゃんの一声だけですんなり頷くみたいな。

中村中村
馬場馬場

そういう不思議な場面に遭遇したとき、おばちゃんはどう声かけたのかとか、何時にとか、カーテンが空いていたのか閉まっていたかとか。あらゆる視点から考えると面白いわけです。そう思考を広げて考えてくと、ケアってもっと面白くなるんだと思う。

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