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「賢人論。」第33回(中編)安部敏樹さん「年金はそもそも、長生きして働けなくなるリスクに対する保険。そう考えれば、支給される年齢が決まっているのはおかしい」

介護施設への入居の決め手として、「職員からのホスピタリティを求めている本人」と「自宅からの距離の近さで選ぶ家族」といったようなミスマッチが生じている、と問題を指摘した安部敏樹氏。いざ介護が必要となる前に双方の価値観を明確にしておく必要がある、ということを再認識した方も多いのではないだろうか。中編では「そもそも年金ってどういうものだっけ?」という“そもそも論”を伺いながら、さらに話題は「なぜ若者が選挙に行かないのか?」という現代社会が抱える問題へ…。20代を代表して氏が語ってくれた、その理由とは?

取材・文/猪俣ゆみ子(編集部) 撮影/公家勇人

年金は長生きに対する保険ではなく、長生きし過ぎて働けなくなったときのリスクに対する保険。

みんなの介護 前編「経済が衰退している現代で、「殿(しんがり)」を務めるのは誰?今の日本は、みっともない話、子どもがそれを務めている」では、高齢者施設は特例措置として始まったということを伺いました。そういうことをふまえると、最初の制度設計に問題があったとお考えですか?

安部 あくまでひとつの要素として、ですけど。ただ私は、過去の一部分だけを批判したいのではありません。一見、特例的に出ている、“ちょっとしたひずみだろうな”と見ていたら、気づけば多くのステークホルダーに変わりうるものになっている。社会問題って、こうなりがちなんです。“高齢者の終の住処をどこにするか問題”とか保育園の待機児童の問題って、例外的ではない。我々にとって、実は身近にある問題なのかもしれません。

例えば人口減少社会に関しても、悲観的になってもしょうがないじゃないですか、人口は減っていくんだから。すべてに対して「おしまいだ」「絶望だ」ではなくて、その時代に合わせたチャレンジの仕方があるわけだし。でも正直なところ、制度としては“40年くらい前からもっと何とかできたでしょ”という思いはあって、当時の人たちに頑張ってほしかったというのはありますけどね。

みんなの介護 それで、これからどうしていくかという話なんですが、年金について伺ってもよろしいですか。今、60歳から年金を受給できたのが段階的に65歳に引き上げられています。ゆくゆくは70歳になるのではないか?という意見もあるのですが。

安部 働いている人はできるだけ「年金をもらわなくていい」「年金はいらないです」と言える状態にすべきです。そもそも年金って、人生において長生きして働けなくなるかもしれないときに備える保険なんですよ。長生きそのものに対する保険というよりは「長生きして、働けなくなるかもしれない」ときの保険なわけです。本来の設立の背景から言うとね。

みんなの介護 国民年金に関してはおっしゃる通りです。

安部 そうなんです。ということは、働ける人はずっと働いて、その年金受給年齢を遅らせれば遅らせるほど、その分もらえる年金に1.2掛けするといったインセンティブをつけてあげたらいいじゃないですか。

健康な人はできるだけ頑張ったほうが、のちのち自分が働けなくなったときに受け取れる年金が増える。こういう考え方でやるべき。一律に70歳以上、とか、65歳以上、というやり方よりは“働いている人には年金を出さないかわりに、頑張って働けば働くほど、あなたの老後そのものが楽になっていく”という仕組みをつくっていうほうが建設的ですよね。

65歳からもらう人と90歳からもらう人がいて、90歳からもらう人は明らかに受け取れる額が多い。そういう制度設計のほうが、それぞれの人に合った制度になっていいと思うんですよね。

みんなの介護 現在の制度では70歳までは年金受給を引き下げできるのですが、それ以降は受け取ることになっています。

安部 人々が、できるだけ長期間もらわないようにしたいな、と思うような制度設計にしたほうがいいですよね。本当に生活に困っている人もいれば、現役世代以上にもらっている人もいるのに、まんべんなく配るというのは、そもそもの趣旨と違う話。何度も言いますが、年金は長生きして働けなくなったときのリスクに対する保険なので。

年金が制度化されたときの平均寿命は66歳くらいだった。現代に置き換えて考えれば、受給開始年齢の理想は80歳 ▶