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第233回 いよいよ改正道路交通法が施行!認知症適性検査の対象4〜5万人を、かかりつけ医はどのように診ることに?

高齢者の運転における交通安全対策が強化

認知症ドライバーによる事故が増えています。テレビ等のニュースにおいて、その痛ましい事故を見かけることも多いでしょうし、データにおいても実際に増えています。

警察庁のデータによると、交通事故の死者数は年々減っていて、2012年には4,400人程度になっているにも関わらず、その中での高齢者が占める割合が増えています。

交通事故の死者数及び65歳以上が占める割合の推移

詳しくはのちほど見ていくとして、2017年3月12日に、これらを受けて、道路交通法が改正され施行されました。

それとほぼ同時期に、日本医師会が医師向けのガイドラインを発表し、かかりつけ医における認知症検査の手引と、検査だけでなくその後のアフターフォローをどのように行っていくかの目安を公表しました。

75歳以上の高齢者の運転免許更新に際して、これまでは違反時のみだった認知症検査が、通常の更新でも行われることとなりました。これによって新たに認知症検査を受けなければならない高齢者は、4万〜5万人に増える見通しです。

それらの高齢者の認知症を診断するにあたって、かかりつけ医の協力は欠かせません。かかりつけ医は、普段から家族より生活機能などの状況も把握しているため、認知機能や運動機能などを含めた心身機能に加えて、より詳細な診断と指導が可能です。

かかりつけ医の役割が重要

かかりつけ医は、以前より患者が安全に暮らしていけるように見守り、指導を行っていくことが求められています。認知機能の障害が進み、自動車運転に危険が予想される場合、運転をしないように説得していく必要があります。

また、運転免許の更新については、診断書を求められるケースがありますので、それらに対応していく必要があります。運転免許試験場での認知症検査は無料ですが、かかりつけ医での認知症検査は保険診療で、患者の自己負担が発生します

また、診断書を自費で用意するとなれば、それもまた診断書料が自己負担として保険適用外で必要です。これはまた、別の公費の問題を生んでいるのですが、かかりつけ医には認知検査機能の結果がよろしくない高齢者に対して、運転免許証の更新ができないことを懇切丁寧に説明し、運転を断念するよう説得する必要性が生じます。

普段から診療しているわけではない新患の患者や、明らかに認知症のレベルとは判断できない境界域(軽度認知障害:MCI)の場合は、かかりつけ医の手を超えていますので、専門医を紹介し、適切な診療に導いていく義務もあります。

いずれにせよ、かかりつけ医の役割は極めて大きいといえるでしょう。

高齢者の自動車事故がどれほど大きな社会問題となっているか

痛ましい事故は後を絶ちません。前述のデータをみると、65歳以上の高齢者が交通事故死亡者に占める割合は51.3%と過去最悪を記録し、年々高くなっています

高齢者の死亡事故の割合を見てみると、もっとも多いのが歩行中の事故死で49%、続いて多いのが運転中の事故死で26.1%となっています。

高齢者の交通事故死者 状態別割合
  歩行中(49.0%)
  自動車乗車中(26.1%)
  自転車乗用中(16.1%)
  原付・自動二輪車乗車中など(8.9%)
49%8.9%16.1%26.1%
 
出所:警察庁

 

原付以上の車両運転中の高齢者による
主な法令違反別死亡事故構成率
  運転操作不適(15.8%)
  漫然運転(4.7%)
  安全不確認(10.1%)
  脇見運転(9.0%)
  一時不停止(7.5%)
  その他(52.9%)
15.8%4.7%10.1%9%7.5%52.9%
 
出所:警察庁

 

死亡者数4,400人のうち、51.3%が高齢者でそのうちの26.1%が運転中の事故死ですので、4,400×51.3%×26.1%で、実に589人、600人近くの高齢者が年間、運転中に事故死していることがわかります。割合も高く、過去最悪の状況を示していることがデータからわかります。日本が超高齢化していくに従って、この数字は減るどころかどんどん増えていくものだと思われます。

厚生労働省の推計によると、2025年の認知症高齢者の数は700万人を超える見込みです。65歳以上の高齢者のうち5人に1人が認知症患者となる推計であり、運転免許の問題に、早急に手を打たなければ、痛ましい自動車事故の件数は増える一方でしょう。

2016年10月に、神奈川県横浜市南区で、小学生の集団登校の列に認知症患者と見られる高齢男性の軽トラックが突っ込み、小学生ら7人が死傷しました。死亡者も1名出たのですが、運転していた88歳の男性は釈放され、不起訴の見通しが立てられています。

認知症の通院歴がなく、家族も運転を止めなかったことから、事故の発生を予想できなかった不可抗力として、捜査当局によって在宅での待機となり、不起訴の見通しです。これは責任を問われない可能性が高いということであり、誰も幸せになりません。

そもそも認知症のドライバーが運転して死亡事故を起こすこと自体が、社会的損失を加速させることでもあり、なんとしてでも予防しなければ不幸になる人が増えるだけなのです

認知症患者から運転免許を取り上げるだけでいいのか?

運転は日常の範囲を広げてくれ、高齢者の引きこもりの予防になるという側面もあります。運転を生きがいとしている高齢者もおり、そんな人達から、認知症だからといって無条件に免許を取り上げると、引きこもりや買い物難民、抑うつ、認知症の進行など、さまざまな弊害がでてしまう可能性があります。ですが、だからといって免許を与えて死亡事故を起こすまで運転させていいというわけにはいきません。

そこで、かかりつけ医が、運転免許の取消、免許返納後の生活の暮らしぶりを観察し、地域包括支援センターや自治体等と関わっていくように誘導して、高齢者の見守りを続ける必要があります。

高齢者が運転を続ける理由には、認知症の病識がない、運転が移動手段で必須である、楽しみである、などのケースが考えられます。運転を楽しみとしている人には、それを受け入れて代わりの生きがいになるものを見つけてもらうよう、誘導していくことも重要です

かかりつけ医は、患者と信頼関係を結ぶことで、認知症の早期発見、早期治療が可能となります。それには日頃からの適切な診療とコミュニケーションが重要です。信頼関係が構築されているかかりつけ医からの説明であれば、かたくなに運転免許返納を拒んでいる高齢者であっても、抵抗なく運転を断念することができるでしょう。

また、認知症が初期段階であればあるほど、本人の理解を得ることも容易だと医師会は考えています。認知症でもう運転ができないと医師から宣告されると、興奮状態になったり怒ったりすることが考えられますが、それも一時的なもので、腰を据えてじっくりと対応することで、徐々に理解を得ることができます。

そして、運転免許が取り消されたときに、移動手段として公共交通機関や代行サービスなどが考えられます。それらを一緒に導入して、高齢者の移動を支えていく必要があるでしょう。地域包括ケアシステムの中で高齢者を守り、事故を予防し安全を保証するためにも、かかりつけ医の役割は大きいのです。

かかりつけ医の存在と、社会全体で受け止めていく覚悟を

高齢者が運転を楽しみにしているのを取り上げるのがかわいそうだからといって、認知症のドライバーを道路上に放置していては、不幸な事故は増えるばかりです。かかりつけ医に活躍してもらうと同時に、地域社会で認知症の高齢者を受け入れていく必要があるでしょう。

また、自家用車の代わりとなる交通代替手段の開発も急がれます。日本ではUberが解禁されておらず、タクシーなどの業界団体や政府が強硬に規制緩和に反対していますが、諸外国ではUberを使って地方の移動手段が非常に便利になっています。

われわれ日本人も、高齢者に本数の少ないバスや移動が大変な不便ばかりを押し付けるのではなく、便利で格安で使えるUberなどを積極的に利用してもらい、移動できる幸福をわかちあう、そんな社会が必要なのかもしれません。

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匿名
匿名 さん

みんなのコメント

  • 匿名 さん

これで、交通の便が悪い事を盾に、認知症患者から免許や車を取り上げる事に反対する者が劣勢に立たされることになる。
ごくごく当たり前の話しではある。
危険と承知で、運転する事などあり得ない話しですので。
思うのは、法律で規制をしないと、自戒できない者達が如何に多く存在する事自体が、とても嘆かわしい事だと思う。

2017/03/17 00:42 違反報告
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