いいね!を押すと最新の
介護ニュースを毎日お届け
みんなの介護ニュース
ニッポンの介護学

第196回 厚生労働省が掲げる「地域共生社会」は机上の空論か…。“一体的な福祉サービスの提供”のために、縦割り行政システムの改善は実現するのか!?

今年6月に政府が閣議決定した「ニッポン一億総活躍プラン」。経済成長や働き方改革のほか介護の環境整備などに言及したプランのなかに盛り込まれた「地域共生社会」とは、「子供・高齢者・障害者などすべての人々が地域、暮らし、生きがいを共に創り、高めあうことができる社会」のこと。今回は、福祉の概念を根本から変えるとも言われる「地域共生社会」の内容と課題について解説します。

縦割りを排し、高齢者、障害者、子供を一体的にサポートする

今年7月、厚生労働省は塩崎厚労相をトップとする「地域共生社会実現本部」を発足させました。発足に際し、塩崎厚労相は「高齢者に限らない地域包括ケアを構築する。日本がかつて持っていたコミュニティの強さを取り戻す」と発言。さらに、公的福祉サービスを「これまでの縦割りを『丸ごと』に変える。福祉の哲学のパラダイムシフトを起こす」と力説しました。

「地域共生社会実現本部」の設立趣旨には、「『他人事』になりがちな地域づくりを地域住民が『我が事』のこととして主体的に取り組んでいただく仕組みを作っていくとともに、市町村においては、地域づくりの取り組みの支援と、公的な福祉サービスへのつなぎを含めた『丸ごと』の総合相談支援の体制整備を進めていく必要がある」とあります。

まずはじめに、地域住民が「我が事」として取り組む仕組みと、市町村が「丸ごと」相談支援できる体制の2つに分けて見ていきます。

厚生労働省による「地域共生社会」実現の全体像イメージ

【地域住民が「我が事」として取り組む仕組みづくり】

キープレイヤーとなるのが地域包括支援センターです。地域包括支援センターでは高齢者からのあらゆる相談に応えていますが、今後は高齢者だけでなく、障害者や子育て世帯なども含めて相談を受け付けます。また、高齢者の社会参加の推進などを図るため、地域生活支援コーディネーターの配置を進め、関係者間のネットワーク構築や不足しているサービス開発に取り組みます。

【市町村が「丸ごと」相談支援できる体制の整備】

「基準該当サービス」とは、障害福祉サービス事業所としての指定を受けていない事業所のサービスであっても、介護保険サービス事業所としての指定を受けていれば、市町村の判断により、障害福祉サービスとして給付を行うことができる仕組みのこと。ひとつの事業所で介護保険サービスとしてのデイサービスと障害福祉サービスとしてのデイサービスを同時に提供することが可能です。

介護保険には「基準該当サービス」はなく、両制度間の格差が問題となっています。高齢者、障害者、子供の間における福祉サービスの提供が一元化されることとなれば、資格の見直しも必要です。例えば、高齢者介護を担う介護福祉士が子供の面倒をみるケースもあり得るわけです。そのため、医療、福祉資格に共通の基礎課程の創設などが盛り込まれているのです。

現状、高齢者は介護保険法、障害者は障害者総合支援法、子供は児童福祉法などにより福祉サービスが提供されています。しかし、これが制度ごとの縦割りによるサービス提供となっていることが指摘されており、福祉ニーズの多様化、複雑化に適していないという声も上がっています。

厚生労働省による制度ごとのサービス提供

例えば、高齢で障害を持っているケースでは、高齢者と障害者、両方に該当する課題を有する場合もあります。厚生労働省のデータによると、障害者全体における65歳以上の割合は50%。高齢化も相まって、障害を持つ高齢者の人数は年々増えています。

厚生労働省による障害者の高齢化について

障害を持つ人が65歳を超えて介護保険が優先されるようになると(これを「介護保険優先原則」という)、これまで慣れ親しんだ障害福祉事業所を利用できないこともあります。障害福祉サービスの事業所として指定を受けていても、介護保険サービスを提供できないという縦割り行政によるところが多く、この場合は、介護サービスと障害福祉サービスを一体的に提供することが求められます。

地域包括支援センターの役割と意義を見直す必要もある

「地域共生社会」を実現するためには、まずはキープレイヤーとなる地域包括支援センターが地域住民を巻き込んだうえで基盤を作れるかどうかが論点になるでしょう。しかし、第193回「地域包括センターは業務過多で機能不全⁉高齢者や家族の相談ニーズが高まるものの、職員の力量不足が課題に」でふれた通り、センターは膨大な業務を抱えています。

地域包括支援センターは、地域づくりに資する総合相談業務や地域ケア会議といった中核業務にシフトすべきという意見も出るなか、「地域共生社会」の実現に向けて、存在意義を再定義する必要があるのではないでしょうか。

今後の傾向としては地域づくりの担い手はボランティアがメインになりつつあり、どのように育成していくかも課題となるでしょう。高齢者ボランティアの養成などを支援する地域生活支援コーディネーターは、2018年までに全市区町村に配置が義務づけられていますが、実際に育成できるのかといった不安要素もあるようです。

生活支援コーディネーター役割の図

しかし、今年4月時点では、約4割の市区町村に配置されておらず、人手が不足しているという現状があります(詳しくは、第182回「地域生活支援コーディネーター」の配置はなぜ進まない!?2018年4月までの配置を義務付けるも、業務負担の重さは深刻なハードル」を参照)。したがって、現時点では、地域包括支援センターを核とした「地域共生社会」の構築は容易ではないといえます。

厚生労働省内および各団体間の利害調整が課題に

ここまで見てきたように、「地域共生社会」の実現には、介護保険サービスや障害福祉サービスを横断して受けられるようになることが欠かせません。とはいえ、“「丸ごと」の総合相談支援”を提供するためには人の手が必要です。今一度、サービスを提供する側の報酬についても再考する必要があるでしょう。

しかしながら、介護保険は老健局、障害福祉は社会・援護局といったように、厚生労働省内でも担当部署が異なります。厚生労働省としては医療・福祉のニーズが増える今後に備えて、複数の医療・福祉資格を取りやすくすることも検討しているようですが、やはり各団体との利害調整がハードルとなるでしょう。

厚生労働省による共通基礎課程のイメージ

縦割りを排し新しい福祉をつくるという意気込みは評価できる、という声も上がるなか、厚生労働省は上述したさまざまな課題を乗り越えられるのでしょうか。2020年を目途に検討が進む「地域共生社会」の未来から目を離せません。

  • 匿名で投稿
  • ニックネームで投稿投稿後、ログイン画面
匿名
匿名 さん

みんなのコメント

  • 匿名 さん

 この制度は、「介護保険料を全国民から取る為」の一歩となるだけじゃないかな?

2017/02/13 09:25 違反報告
  • 匿名 さん

自分の村は細長く隣の市町村に隣接しております。私の考えとして、地域密着型の施設は、施設の手の届く範囲と考えて、市町村の話し合いで広域化して、ある程度無くしてほしい。本当に今は縦割り行政状態です。

2017/02/08 18:53 違反報告
  • 匿名 さん

地域密着型自体が縦割り行政ではないでしょうか?市町村の壁ができています。

2017/02/06 19:48 違反報告
  • 匿名 さん

先進的なところでは、みんな一緒に看ているところもあります。ある程度、老人が幼少児を間近に見て元気になるとか、幼児が老人と接して親しみを持つとか考えられる以上の効果が出ているという報告もあります。
まず、先進的なところを宣伝し、広めていく、皆で応援することが必要でしょう。有志が集まって民間で先行することが国を動かすのです。行政の批判ばかりしていても動かないのがこの国の現実です。言い出しっぺからやるとか、有言実行の人間を増やすことが肝要です。




2017/01/01 04:32 違反報告
  • 匿名 さん

”介護は儲かるのか”という書籍を見ればとても分かりやすく、指摘も鋭いです。
働く幸福と経済的幸福が、各々の自己実現に繋がるという、本質を赤裸々に綴っているようです。

2016/12/30 12:56 違反報告
  • 匿名 さん

同じ意識を持ち、それを共有する事。
自分が身構えれば、相手も身構えてしまう。
様子を見ながら、心を開くことも大事ですし、より多くの人々と伴に、包括的に巻き込んで同化して行くという様なイメージ。
お互いにどんな人間かが良く判らないから、誤解や憶測や語弊が生じる事になる。
双方、歩み寄る事で、最短で理解が可能と成り得ます。
昔から行ってきた、最も基本的な事柄のように思えます。

2016/12/29 22:53 違反報告
  • 匿名 さん

まあ、世代間の認識の違いがあって、お互いに自分の意見を通そうとする、自らが正しいという主張しかしない者同士がどれだけ同じ場所に住むようになってもむしろ摩擦が多くてぎすぎすした環境になりそう。
どこかのマンションでは子供に知らない人にあいさつされても逃げなさい、とか教えているとか聞くし。

共生社会とかほど遠そうな気がする。

2016/12/29 19:47 違反報告
  • 匿名 さん

>パチンコしている生活保護者がいるとか
確かに悪用する者は存在はするが、生活保護者において、一部限定的。

>高齢者の寝たきりが外国にはいないのに日本には多くて胃ろうがどうたらこうたらと、
どういう統計でものを言っているのかが理解に苦しむ。要は個人的な勝手な屁理屈と言う事に過ぎない。

>果たして「共生社会」という意識が育つだろうか。素朴に疑問に思うなあ。
歪んだ視点観点で疑問に持ったとしても、その結論も歪んだ物にしかなり得ない。

日本社会が、「共生社会」という考えを人々が持つ事には、大いに賛成ですし、とても大事で今必要な事に思う。
しかしながら、これを推進して行くには長い年月を費やさないと容易にできる事では無い事も確かな事です。
ありとあらゆる人々の意識の改革が必要と言う事。

2016/12/29 13:51 違反報告
  • 匿名 さん

>地域共生社会」とは、「子供・高齢者・障害者などすべての人々が地域、暮らし、生きがいを共に創り、高めあうことができる社会

と言いつつ、散々、世代間格差があるだの、生活保護費が社会保障費を圧迫しているにもかかわらず、パチンコしている生活保護者がいるとか、高齢者の寝たきりが外国にはいないのに日本には多くて胃ろうがどうたらこうたらと、何か高齢者や障害者に悪感情を持たせるような世論の雰囲気を作っておいて、果たして「共生社会」という意識が育つだろうか。素朴に疑問に思うなあ。

2016/12/28 15:40 違反報告
  • 匿名 さん

地域包括を公募制なり指定管理者制度で
やり直しては??
事業所の本体(特養、老健)のエースは本体
スピンアウトしたようなスタッフが地域包括センターに
廻されているところも少なくありません
そんな陣容で出来る訳ないと思います

2016/12/28 10:07 違反報告
  • 匿名 さん

今の地域包括支援センターの職員は一応体裁としては「高齢者福祉のプロ」として活動しているが、今後は障害福祉のプロや児童福祉のプロとしても活動していかなければならないのか。
主任介護支援専門員なんて、障害や児童なんか無知だろ。
社福士や保健師だって、試験の時ぐらいしか、まともに勉強しない。
有資格者もゼロから勉強しなおしですね。
それとも、障害福祉や児童福祉のキャリアを新たに雇用できるよう予算をくれるのか。

2016/12/28 09:10 違反報告
  • 匿名 さん

パブリックコメントの募集なども浸透はしているが、各省庁が独自に選別した有識者や権威団体などの意見が罷り通る事から、現場サイドの意見など通らない事に問題がある。
碌に現場も知らない、理論や机上の空論を述べる者達で構成されているので、それこそ、現場叩き上げの百戦錬磨の手練れの意見を聞かないと、本当に時間とお金の無駄になる。
一番利用者に近い人間と、程遠い者達とどちらを優先するべきかはもう既に答えは出ている。

2016/12/27 19:39 違反報告
  • 匿名 さん

行政が予算の取り合いで縦割りを通しているから無理でしょ。
同じ省庁でも課が違えば予算も取り合い。
ましてや省が違えば尚更。

それに族議員が参入して予算の取り合い。

国民・市民の暮らしよりも自分達の利権が第一優先だもんね。
最終的には風呂敷広げただけのぼやけた結果で終わるんでしょうね。

2016/12/27 19:09 違反報告
  • 匿名 さん

>【地域住民が「我が事」として取り組む仕組みづくり】

これが無理。言い出しっぺの厚生労働省の人達は、地域住民として何かするのか? しないだろ。

2016/12/27 17:26 違反報告

介護を提供する場と乳幼児保育などをする場は異なります。しかし、どちらも人材確保が難しい状況になっています。
 
 そのため今回の構想では、福祉サービスを一体的に提供できるような場を構築することも構想に入れられているようです。

 介護職で雇用された人が、保育士業務も行えるというように考えているようです。これって無理があると思うのですが。介護職員は確かに高齢者のことは理解できていても、乳幼児の知識は皆無です。

 とにかく厚労省の考える制度は「?」がつくものばかりです。

これを実現するには介護職や保育士の教育にも大きな改革が必要になります。

2016/12/27 17:16 違反報告
関連記事

厚生労働省が掲げる「地域共生社会」は机上の空論か…。“一体的な福祉サービスの提供”のために、縦割り行政システムの改善は実現するのか!? の関連記事