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ニッポンの介護学

第199回 介護療養型医療施設の廃止が延長!?厚生労働省が計画している新類型の中身を検証する

厚生労働省は2006年に「療養病床」を、2011年度末をもって廃止すると決定しました。しかし、療養病床を有する介護療養型医療施設は介護老人保健施設などへ思うように転換されず、その期限を2017年度末まで延長していました。こうしたなか、厚生労働省は2016年12月、高齢者が長期入院する介護療養型医療施設を介護施設などに転換する計画をまとめました。

受け皿となる新しい施設は、高齢者の容態に応じて3つに分けられ、2018年4月から移行を促す方針です。今回の特集では、議論の只中にある介護療養型医療施設の在り方について現状と課題を整理します。

介護は必要だが医療の必要性は低い高齢者が入所している

まず「介護療養型医療施設」の現状を整理します。「介護療養型医療施設」とは、長期の介護および医療のケアを必要とする高齢者のための介護施設です。厚生労働省の「病院報告」によると、療養病床は約33.2万床。療養病床は、医療保険を根拠とする医療療養病床と介護保険を根拠とする介護療養病床に大別されます。このたび、約33.2万床のうち介護療養病床約6.1万床が2017年度末をもって転換期限を迎えます。

厚生労働省による医療介護サービス提供の全体像

 介護療養型医療施設に入所ししているのは、病状が安定期にあるものの、長期間にわたる療養や介護が必要な高齢者。介護老人保健施設などと比較して、要介護度の高い高齢者が入所していることが特徴のひとつ。公益財団法人全日本病院協会の調査によると、介護療養型医療施設(病院)においては、要介護度5の高齢者は約半数にも上ります。介護老人保健施設では、要介護5の高齢者は約2割に過ぎず、重篤な症状を抱える高齢者が多いとわかります。

公益社団法人全日本病院協会調べの入院患者,入所者の要介護度

入所者の「ADL区分(自立度を表すもの。ADL区分は1〜3まであり、数字が大きくなるほど自立度が低くなる)」を見ていくと、介護療養型医療施設(病院)は「ADL区分3」の者が約半数を占めていることから自立度が低いことがわかります。

一方、医療区分(医療の必要性を表したもの。医療区分は1〜3まであり、数字が大きくなるほど医療が必要になる)に目を転じると、介護療養型医療施設(病院)においては、「医療区分1(医療の必要性が低い)」の高齢者が8割を占めます。

このように介護療養型医療施設には、自立度が低く(介護が必要)かつ医療の必要性も低い高齢者が入所しています。そのため、介護療養型医療施設は、介護サービスを中心とした介護老人保健施設などへ転換すべきという声が上がっているのです。介護療養型医療施設に高齢者がいる場合、医療へのアクセスが簡単であるため、不必要な医療も受けているという厳しい声もあります。これが国民医療費の膨張を招いているという意見もあり、療養病床の転換が急務となっています。

独居や老老介護により、自宅に戻れない高齢者が介護療養型医療施設に留まっている

前段で介護療養型医療施設には、医療の必要性が低い高齢者が多数入所していることがわかりました。介護療養型医療施設は基本的に病院であり、医療の必要性が高い高齢者が入所している状況が望ましいものの、高齢者が退院できない理由はどこにあるのでしょうか。

厚生労働省が行った「入院医療等の調査(2014年)」によると、「家族等による介護は困難であり、入所先の施設の確保ができていないため」がトップ。次いで「家族の希望に適わないため」「在宅介護(訪問介護など)の確保ができていないため」などが続きます。

厚生労働省による医療療養病棟の入院患者が退院できない理由

たとえ急性期を過ぎても、独居高齢者や老老介護などが問題となるなか、結局、施設に居続けたほうが安心であると考えている高齢者やその家族が多いことが見てとれます。

2018年4月以降、介護療養型医療施設は形態転換を迫られることに

厚生労働省は先月7日、先に書いた通り、高齢者が長期入院する介護療養型医療施設を介護施設などに転換する計画をまとめました。ここからは、その内容を紹介しつつ、介護療養型医療施設の課題について見ていきましょう。受け皿となる新しい施設は、「医療機能を内包した施設系サービス」と「医療を外から提供する居住スペースと医療機関の併設」に大別されます。

「医療機能を内包した施設系サービス」は、さらに下記の表の通り二分されます。

厚生労働省による医療機能を内包した施設系サービス

「T型」の利用者像は、重篤な身体疾患を有する者および身体合併症を有する認知症高齢者など。2015年度介護報酬改定において新設された「療養機能強化型A・B(Aは入所者4人に対し介護職員1人を、Bは入所者5人に対し介護職員1人以上を配置した施設)」は、看取りやターミナルケアを中心とした長期療養の機能や啖呵吸引、経管栄養などの医療処置を実施する施設としての機能を有しています。

「T型」での医師および看護職員、介護職員の配置基準は現行の介護療養病床と同程度となる見込みです。一方、「U型」の利用者像は、容体が比較的安定している高齢者です。医師および看護職員、介護職員の配置基準は、介護老人保健施設並になる予定です。どちらの形態も要介護高齢者の長期療養に配慮したもので、生活施設としての機能重視を介護保険法のなかで明確化するとしています。

「医療を外から提供する居住スペースと医療機関の併設」は、介護サービス経営者の多様な選択肢を用意する観点に立ち、居住スペースと医療機関の併設型を推奨したもの。「居住スペース」とは、特定施設入居者生活介護の指定を受ける有料老人ホーム等を想定されており、この施設の利用者像は、容体が比較的安定した高齢者。医師および看護職員、介護職員の配置基準は現行の特定施設入居者生活介護と同程度となる見込みです。

2018年4月以降、介護療養型医療施設は「T型」「U型」または有料老人ホーム等を想定した「医療外付け型」のいずれかに転換を迫られることになります。

医療機関など関係者との利害調整が課題のひとつ

厚生労働省は今回の療養病床の特別部会で「T型」「U型」および「医療外付け型」を提案したわけですが、名称を変えただけで内容は現状と変わらないと考える向きもあります。国民医療費を削減するために行っているものであるにもかかわらず、内容が変わらないとなれば「骨抜きの計画」と批判されても仕方ないでしょう。療養病床には、医療機関など厚生労働省の利害関係者が多く絡んでいるため、配慮が行き過ぎているという声も上がっています。

こうした新たな施設類型を創設する場合には、所要の法整備が必要であることは言うまでもありません。そのため、療養病床の転換期限は2018年4月以降にずれ込む見通しです。

今後のスケジュール

現在、国は地域包括ケアシステムを推進するため、医療の必要性の低い高齢者を「施設から在宅へ」転換しようとしています。しかし現状では、先に見たように「家族による介護は難しい」「在宅介護の確保ができない」といった困難を抱えた人が少なくありません

今後の課題としては介護療養型医療施設のような医療施設から退院後の生活に困難を感じている要介護度の高い高齢者であっても、住み慣れた地域で自分らしく暮らせるような社会基盤の整備を進めていかなければなりません。国民医療費削減と地域包括ケアシステム構築を意図とした療養病床の削減が今度こそうまくいくのか、注視する必要があるでしょう。

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匿名 さん

みんなのコメント

  • 匿名 さん

政府や行政が、何でもかんでも首を突っ込みすぎるし、横槍も入れ過ぎ。
昔あった、専売公社をどんどん民営化して成功したように、半民営化をする方が余程現状よりかは、こういう要領で行えば良くなると推察できる。
話しは簡単で単純な話では無いと思うが、的は突いていると思う。

2017/01/15 23:51 違反報告
  • 匿名 さん

なんか細分化しすぎて、かえってコストがかかるようになっているような……

2017/01/14 19:12 違反報告
  • 匿名 さん

元業界さんの言う通り。ごもっとも。

2017/01/12 15:08 違反報告
  • 匿名 さん

世界に誇る長寿国日本!長く意識障害〜植物状態でも延命延命で生かされて長寿と言ってる現実も!?尊厳死や安楽死の法整備なかなかできず、超高齢者への無理な延命治療で医療費ザルって、そこ考えようよ!
消極的安楽死は目立たずそそっとしているらしいが・・・。

2017/01/12 15:08 違反報告
  • 匿名 さん

医療の必要性の低い高齢者といっても、医療がいらないわけではないの。在宅介護もだけど、在宅医療、特に往診や訪問診療の数が圧倒的に少なすぎる。通院することが困難になったら、やっぱり入所を考える家族がいても仕方がないと思う。それに、自宅で看取るには家族や周囲が腹を括る必要もあるし…。それならいっそ、延命治療そのものを見直したほうが良いのではないかと思う。どこで線を引くかをは難しいかもしれないけれど、回復の見込み(何を回復と呼ぶかも難しいけど)がない場合に、延命治療を望むなら全額自己負担とか。(根治が難しい難病は別ね)国の制度もだけど、国民一人ひとりがもっと真剣に「死んでいくこと」に関心持たないと意見は深まらないと思う。

2017/01/12 12:10 違反報告
  • 匿名 さん

療養病床で勤務したことがないから分からないけど、
>>>国民医療費削減と地域包括ケアシステム構築を意図とした療養病床の削減が今度こそうまくいくのか<<<
いかないような気がする。
現場レベルでこの記事の内容を議論してない。
と言うよりも、議論できるほどの見識を持ってないんだけどね。


2017/01/11 17:29 違反報告
  • 匿名 さん

一年中ホントに大変だが、この時期の介護療養型医療施設の利用者は特に大変!風邪〜インフルエンザ、発熱は日内変動幅驚くほど大きく、乾燥で加湿器常備しても粘稠痰だらけ、酷い時には二桁亡くなる事も。一体どこの誰が医療費喰い施設だと言ってるんだか・・・。

2017/01/11 14:16 違反報告
  • 匿名 さん

2014年の調査ってどこの?病状安定期って何?脳梗塞etcの原因疾患は落ち着いても、それに伴う誤嚥性肺炎etc二次疾患で安定などしません。
熱発多く37度台は日常、38度中熱も多く、39度〜40度の高熱も度々で3点〜5点クーリングも日に数回換え、院内製氷機だけでは間に合わず氷買いに走る程、解熱薬〜抗菌薬〜DIV治療、頻回粘稠痰がらみの吸痰処置etc。
平均年齢89〜90歳で、当然70歳超えの家族もいて、歳を取ると知らず知らずのうちに調子悪い所も出て来るもの、在宅サービスなんて限界だらけでしょ!
落ち着いてるとはいえ再発性否めない重症疾患と付随症状、易急変性の二次疾患と付随症状、寝たきりで24時間体制の要介護状態etc、受け入れ施設も無いのに廃止って・・・。
医療費削減!?他にあるっしょ!   
介護療養型医療施設の現場の声です。

2017/01/11 12:02 違反報告

 「特養待機所」化しているのは変わりないですね。在宅から施設に入所するのは簡単ですが、その逆は難しいですね。家族も一度施設に入所させると安心してしまって、在宅介護の話をするとすごく嫌な顔をするか、無理だと泣きつくかです。

>国民医療費削減と地域包括ケアシステム構築を意図とした療養病床の削減が今度こそうまくいくのか

 医療費削減なら、無駄に薬を出すことをやめる、延命治療の廃止を真剣に考えないといけません。絶対医師会が反対するでしょう。

 地域包括ケアシステム?地域包括も機能していないのに、できるはずないでしょ。

2017/01/10 17:37 違反報告
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