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ニッポンの介護学

第198回 高齢者の自立支援に「インセンティブ改革」の効果は!? 悪質な介護事業者による“儲け至上主義”にも要注意!

政府は12月19日、要介護度の重度化を予防する取り組みで成果をあげている市町村を財政面で優遇すると発表しました。制度の枠組みを2017年末までに決め、2018年4月から適用する方針。介護予防に積極的に取り組むインセンティブを与えることで高齢者の自立支援を促進しつつ、総額10.4兆円にも及ぶ介護費用の膨張を抑えるねらいです。

厚生労働省による介護保険料の推移,2016年度の総費用は10.4兆円

今回は、「インセンティブ改革」の現状と課題を見ていきます。

介護サービスの質をどのように評価するか、議論は迷走中

2015年6月、政府は「骨太の方針(経済財政運営と改革の基本方針)」のなかで、「全国一律に一定の行政サービスを保障する仕組みのもと、コスト意識が希薄化している」などと指摘。「インセンティブ改革」を推進することで、「政府はもとより、国民、企業、自治体などが自らムダをなくし、公共サービスの質の向上に取り組む意欲を喚起し、その量的な増大を抑制する」と打ち出しました。

さらに、「要介護認定率や一人あたり給付費の地域差について、高齢化の程度、介護予防活動の状況、サービス利用動向や事業所の状況などを含めて分析し、保険者である市町村による給付費の適正化に向けた取り組みを一層促す」と書かれています。

厚生労働省による介護サービスの質の向上・改善のためのアプローチ

これは、要介護認定率や一人あたりの給付費の少ない市町村が財政的メリットを受けられる仕組みについて言及したものですが、大きな課題に行き当たります。それは、どのようにして介護サービスの質を評価するかということです。

評価モデルのうち「アウトカム(結果)」指標は設定、評価が難しい

現行の介護保険制度では、要介護度が高いほど介護事業者に支払われる報酬が多くなるため、介護事業者が要介護度の改善に消極的になりやすいといった声も上がっています。つまり、リハビリなどに注力し、要介護度を改善させた事業者ほど報酬が低くなるというジレンマがあります。「インセンティブ改革」は、こうした課題を解消するための施策として注目されています。とはいえ、介護事業者の成果をどのように評価するかが問題です。

現状、介護サービスの質の評価は、以下の通り、「ストラクチャー(構造)」「プロセス(過程)」「アウトカム(結果)」という3つの視点から行われています。この評価モデルは、アメリカの医師であり公衆衛生学者であるアベティス・ドナベディアンによって考案されました。

厚生労働省による介護サービスの質の評価の視点

「ストラクチャー(構造)」とは、医療を提供するのに必要な人的、物的、財政的資源のこと。専門職および医療機関の数や規模、施設さらには医療提供体制や医療保険制度などが該当し、看護職員配置加算や夜勤職員配置加算などが具体例として挙げられます。

「プロセス(過程)」とは、医療従事者と患者の間の相互作用を評価するもの。医療内容の適切性や医療従事者の患者に対する接遇などが該当し、リハビリテーションマネジメント加算やターミナルケア加算などが主なものです。

「アウトカム(結果)」は、医療によってもたらされた健康状態の変化のこと。身体的生理的側面だけでなく、社会的心理的側面の改善や患者の満足度なども評価の対象となっています。在宅復帰・在宅療養支援機能加算や事業所評価加算などが「アウトカム(結果)」指標のひとつです。

介護報酬上の主な介護サービスの質の評価(例)

ストラクチャー評価 プロセス評価 アウトカム評価
訪問リハビリテーション サービス提供体制強化加算(2009年) 短期集中リハビリテーション実施加算(2006年) 社会参加支援加算(2015年)
通所介護 中重度ケア体制加算(2015年)
認知症加算(2015年)等
個別機能訓練加算(2009年)
通所リハビリテーション 中重度ケア体制加算(2015年)等 生活行為向上リハビリテーション実施加算(2009年)等 社会参加支援加算(2015年)
小規模多機能型居宅介護 看護職員配置加算(2009年)等 総合マネジメント体制加算看取り連携体制加算(2015年)
介護老人福祉施設 看護体制加算(2009年) 看取り介護加算(2015年)等
介護老人保健施設 ターミナルケア加算(2009年)等 在宅復帰・在宅療養支援機能加算(2012年)
出典:厚生労働省

このなかで特に問題となっているのは「アウトカム(結果)」。「ストラクチャー(構造)」や「プロセス(過程)」は、人員配置を順守することなどで評価が可能ですが、「アウトカム(結果)」は、“健康状態の変化”を対象としたものであるため、評価が恣意的になりやすいという声も出ています。

高齢者は、身体や精神機能の悪化および改善を繰り返すことが多く、評価する時点によってまったく異なった判定になる可能性があります。また、介護事業所の努力や責任の及ばない要因の影響(本人の努力など)により、健康状態が変化するケースも。この場合、要介護度が変化したとしても、提供される介護サービスによるものなのか一概には判断できず、評価につながらないという意見があります。

岡山市、川崎市などが国に先行して「インセンティブ改革」を実施

政府が評価基準を構築する前に、自治体独自で「インセンティブ改革」を実施している例もあります。岡山市は、政府の「地域活性化特区」政策を活用し、「岡山型持続可能な社会経済モデル構築特区」を実施。このモデルの柱となるのは「デイサービス等への成功報酬制度の導入」です。これは、要介護度が改善した場合に、介護事業所に対し、別途報酬を加算する施策です。

デイサービス事業者のうち、この取り組みに賛同する事業者を対象に、全体の介護報酬のうち半分を成功報酬とし、要介護度が改善した場合は介護報酬を増やす、介護度が悪化した場合は介護報酬を引き下げる、といったように、インセンティブ部分とのトータルバランスを保ちつつ、介護報酬の抑制を図っています。

デイサービス等への成功報酬制度の導入

川崎市では「かわさき健幸福寿プロジェクト」を2016年から実施。7月1日から2017年6月30日までの1年間を1サイクルとして、プロジェクトに参加する介護事業者が、利用者や家族の希望を踏まえて要介護度や日常生活動作の改善に取り組み、一定の成果を上げた事業所に対し、2017年9月にインセンティブ(報奨金や市長表彰、川崎市ウェブサイトへの掲示など)を付与するもの。参加条件は、ケアマネジャーを中心にチームケアに取り組むことです。

成果目標は、要介護度および日常生活動作で、要介護度は、対象者のうち17%以上が改善するかもしくは一定期間要介護度を維持した者が65%以上であること。日常生活動作は、対象者のうち50%以上が改善したこととなっています。

国民が納得できる評価モデルを構築するのは容易ではない

今後は、政府によって現行の「アウトカム(結果)」指標(在宅復帰・在宅療養支援機能加算や事業所評価加算など)の実績データなどが検証され、評価モデルが構築される見込みです。しかし、要介護度の改善のみを評価項目とした、いわば“機械的な介護”がまかり通れば、利用者の人間としての尊厳を無視した介護が行われる恐れもあります。そのため、評価指標は慎重に精査し、導入する必要があるでしょう。

いざ評価指標が導入されることで、介護事業者が高齢者を選別するクリームスキミング(儲かりそうな高齢者だけを受け入れること)が生じる懸念もあります。介護は公共サービスであり、過度な儲け主義に傾かないよう国や行政が管理する必要もあります。そうでなければ、利用者が安心して介護を受けることもできなくなる恐れがあります。

前述した評価モデルを基本として「インセンティブ改革」が導入されたとしても、高齢化の状況や世帯構成、地理的要因、自治体のマンパワー、地域住民の意識などによって成果に差が出ることは言うまでもありません。国民が納得できる評価モデルを構築するためには、一辺倒な施策では十分とはいえないのでしょうか。制度が導入されれば介護現場は変革を迫られるだけに、今後の動向を注視すべきでしょう。

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匿名 さん

みんなのコメント

  • 匿名 さん

インセンティブをすさまじく大きくしなければ毎月の利用料の確保の方が魅力的だから全く意味が無い
インセンティブが無ければ経営できない仕組みの場合は利用者の選別に走る

基本的にやらせることは簡単だけど、やったことを評価するのはすっごく難しいんだよ
事業所の問題だけじゃなくて、本人や家族の考えや病状の進み具合、生活環境なんかにも左右されるからね
それを「デイサービスでのお散歩はいけません」だとか「ヘルパーが電球を変えてはいけません」だとかやたらと規制をかけている状況でさあやってくださいって何?
行き着くところは「これはやっていいか分からないからやめよう」という経営判断で今迄通りのサービス運営だよ
机上の空論でしかないよ

2017/01/18 16:30 違反報告
  • 匿名 さん

どのような立場や立ち位置であろうとも、自分の裁量が良くなければ困難な状況に陥る。
つまり、才能が無いと言える。

2017/01/16 11:12 違反報告
  • 匿名 さん

金儲けのためには法律やいろいろの努力を駆使しないとできないのでは?ただ安いとか善意では良い職員も集まりません。ご承知と思いますが年中求人を出しても、人はあつまらないのでは・・。

2017/01/13 12:49 違反報告
  • 匿名 さん

金儲けに悪質はないとコメントしている人は貴方が悪質経営の経験者かまたは物を知らない人でしょう。

室に食事を運搬してくれるのに100円
洗濯をしてもらうのに100円
取るなどするケアハウスは設け主義とは言えないのですかね。
問題は案内書にはそんな事は記述していない事で質の悪い経営だと思います。
結局は濡れ手に泡をつかむような経営者はいつかは天罰があたるって事。天は甘くはないし何が一番怖いか全てをお見通しの天の裁きです。

2017/01/12 15:45 違反報告
  • 匿名 さん

まず、ケアマネの問題点の一つ。
自立支援と言いつつ、給付管理が出来るサービスを組む。
利用者の喜ばれるサービスを何て言いつつ、結果サービス依存を作る。
そのサービス依存の中、サービスが続けばいい事業所。
サービスに飽きたら、出来ない事業所と判断する・・・・。

中・重度者にはいいかもね。
だけど軽・中度者にも同じ価値観で評価する。

状況が良くなり介護度が軽くなると、「今迄週3回程度使っていたサービスが週2回程度しか使えなくなるから何とかして。」と利用者・家族から頼まれると変更申請しながら特記事項欄にあれこれ出来ない・時間が掛かると記入する。

そもそも、状態が良くなり出来る事が増えた結果サービスがつまらなくなったと感じたのなら、そのサービスを評価するべきなんじゃないの?その上で介護サービス以外の生活面での活動を一緒に考えるのがケアマネの仕事なんじゃないの?

サービスを組んで継続させ、サービス依存を作っているケアマネ多すぎる。
そんな中で、自立支援にインセンティブなんて机上論過ぎないかな?

2017/01/11 17:38 違反報告
  • 匿名 さん

金儲けに悪質はない?競争になれば金儲けは当たり前です。そして金の亡者として努力したとこが優良会社として信頼を勝ち取るのです。客はその後の話。

2017/01/10 15:30 違反報告
  • 匿名 さん

>要支援としていたのは、O区の方針だったそうです。先進都市と思っていただけに驚きました。

要支援が出された後、本人の状況が変わったにもかかわらず、O区在住の内に、認定の見直しを掛けなかったのでしょう。していれば、O区でも要介護4や5が出たでしょう。

2017/01/09 11:24 違反報告
  • 匿名 さん

一生懸命暮らしのサポートをして、現状を維持している場合は良くも悪くもなっていないから評価されないの?すでに納得いかない。

2017/01/08 12:09 違反報告
  • 匿名 さん

>介護事業者が高齢者を選別するクリームスキミング(儲かりそうな高齢者だけを受け入れること)が生じる懸念もあります。

介護保険は、介護を契約と商売の仕組みにしたのだから、当然の結果で、何の問題も無い。それが駄目だというのなら、措置制度に戻せばいい。

2017/01/07 11:57 違反報告
  • 匿名 さん

>介護度が下がれば成功というのもひとつの評価軸でしかない。複数のサービスを利用して効果が上がる場合もある。ケアマネジメントの問題と連動するものであると思うのでインセンィブを入れるならケアマネを独立させてからの議論だと思うのですが・・

正にその通りだと思います。
そもそも、中立公正と言いつつ、実際は自法人の都合に合わせている居宅介護支援事業がきちんとした独立が出来ない様では意味がない。
結果、自法人に都合の良い利用者選びが始まるだけ。

2017/01/06 18:01 違反報告
  • 匿名 さん

>介護士は関係が関係ないように見えてしまう記事。

というより、貴方の感覚がこの業界から関係ない存在なのでは?

2017/01/06 17:58 違反報告
  • 匿名 さん

>要介護認定時の評価(アセスメント)が曖昧すぎる。

えっと、要介護認定はケアマネの仕事ではないんですが(委託されることはあるが)、、

それはそれとして、、、当方、都内A区でサ高住やっていますが、O区の要支援の方を受け入れたら、まさかの寝たきり。A区で区分変更したらまさかの要介護5。要支援としていたのは、O区の方針だったそうです。先進都市と思っていただけに驚きました。

2017/01/06 09:25 違反報告
  • 匿名 さん

リハビリして報酬が下がらんのなら皆介護度を下げてあげます。日本人は賢いので仕組み次第で重度にも軽度にも簡単に出来まっせ。介護度一段階ぐらいは・・・もち介護ロボも積極採用してのことですが・・ハイ。

2017/01/05 23:21 違反報告
  • 匿名 さん

そもそも要介護認定時の評価(アセスメント)が曖昧すぎる。ケアマネの主観的な要素が多く入り過ぎているように感じる。もちろん、適切な評価を行えるケアマネもたくさんいるのだろうが、そうでないケアマネの方が多いように感じる。もっと客観的な評価をしないと、現行の制度を改正していったところで、金儲けのために介護度を上げたり下げたりする行為が横行するだけだと思う。まずは要介護認定の仕組みをもっと検討していくべきだ。

2017/01/05 15:25 違反報告

介護士は関係が関係ないように見えてしまう記事。

2017/01/05 11:32 違反報告
  • 匿名 さん

匿名さん、第三者評価と医療介護技術評価は全く別物です。

医療介護技術評価は、従来はリハビリでは患者さんのFIMが改善するなど患者単位で評価するのです。それを介護に持ってくるのが難しい、というお話です。理由は、高齢者はFIMの点数では改善しないことが多いことと、要介護度は別の方も言っている通りかなり誤差があるため。

これ、まさにケアマネジメントの問題ですね。ケアマネの独立性と言うより、ケアプランたてて達成したら、誰にとっての加算になるのだろう??小規模多機能や施設のように、ケアマネと事業所が一体化している場合はわかりやすいが、複数のデイサービス・デイケアを利用している場合など。

2017/01/05 10:26 違反報告
  • 匿名 さん

介護度なんて認定調査の対応次第で下げられますけど。
あっ・・・これが実現したらプラン料が下がるわけ?
居宅への評価はどうなっているのでしょうか。

2017/01/05 09:17 違反報告

介護度が下がれば成功というのもひとつの評価軸でしかない。複数のサービスを利用して効果が上がる場合もある。ケアマネジメントの問題と連動するものであると思うのでインセンィブを入れるならケアマネを独立させてからの議論だと思うのですが・・

2017/01/05 04:56 違反報告
  • 匿名 さん

正当に評価をする第三者機関などが、本当に機能していない。
事業をよく見せたいという心理はどこも同じで、粉飾したデータや報告書の偽装が横行する事は言うまでもない。
クリームスキミングの様な、いいとこどりするのは、今もこれからも変わることは無い。
社会福祉法人系でも行っている。
新参事業者と言われるところが、問題の有る利用者やあまり儲からない利用者の受け皿となっているのが現状。
老舗と言われている事業者や、権威団体などの社会福祉法人系やNPO法人は、地方議員の息が掛かっていたりするので、質が悪いし、いいとこどりばかりしている。
大体どこも、介護・福祉サービス第三者評価機関は嘘ばかり公表しているようなもの。
捏造された報告書を基に、そのまんま掲載しているのが現状。

2017/01/04 19:06 違反報告

 こんなことをしても何もなりません。ただ違法行為が増えるだけです。

 社会保障費を削りたいならもっと方法を考えましょう。

2016/12/28 17:29 違反報告
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