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ニッポンの介護学

第197回 デイサービスはすでに供給過多!?「小規模デイ」参入規制の背景を考察する

昨年の12月9日付で社会保障審議会介護保険部会は、介護保険制度の見直しに関する意見書をまとめました。この意見書のなかで、介護保険部会は規模の小さいデイサービスの参入規制を導入するよう進言。地域包括ケアシステムをさらに深化、推進させるためには必要な措置だと結論づけています。今回は、この意見書をひも解きながら、小規模デイサービス(介護保険法の改正により、現在は「地域密着型通所介護」。今回は「小規模デイ」と表記して説明します)の参入規制とそれがもたらす影響について考察してみます。

介護保険法の改正に伴い、小規模デイは市町村が管轄することに

「小規模デイ」とは、利用定員18人以下の通所介護事業所のこと(2016年4月1日までは、「前年度ひと月当たり平均利用延べ人員数が300人以内」)。介護保険法改正により今年4月から新設されました。法改正の背景にあるのは、地域包括ケアシステムの推進です。地域包括ケアシステムは、住み慣れた地域で人生の最期まで暮らし続けるよう高齢者を支援する制度で、介護保険の保険者である市町村を中心にケアマネジャーなどが連携して地域資源を生かしながら構築を図るものです。

厚生労働省によるデイサービス事業所数の推移

下記の図の通り、小規模デイは2016年3月まで都道府県により指定されていました。ところが、地域包括ケアシステムとの整合性を図るため、法改正後においては、市町村が小規模デイを指定できるように。小規模デイは「地域密着型サービスに区分(介護が必要な状態になっても住み慣れた地域で暮らしていけるよう市町村指定の事業者によって介護サービスが提供)」されることとなり、地域包括ケアシステムに正式に組み込まれた形です。つまり、管轄が都道府県から市町村に変わり、小規模デイは市町村との関係性を強めつつ事業を展開する必要があるのです。

厚生労働省による小規模通所介護の移行について

厚生労働省のデータによると、介護事業所のうちデイサービスは約半数を占めています。このうち、小規模デイは約6割を占めるまでに拡大しています。政府は、介護事業者の参入をこれまで後押ししてきましたが、ここに来て会計検査院から異議が出る事態に発展。2016年3月に会計検査院が公表した「介護保険制度の実施状況に関する会計検査の結果についての報告書」によると、デイサービスの供給がすでに過剰である可能性が示唆されました。

この報告書のなかで会計検査院は「各保険者の管内における居宅サービスの提供能力とニーズとの関係について、適切であると判断している保険者及び提供能力が多いと判断している保険者は、(中略)通所介護で102保険者となっているのに対し、提供能力が少ないと判断している保険者は、(中略)通所介護で7保険者となっていた」と説明し、「通所介護事業所が著しく不足している状況とはなっていない」と断じました。

会計検査院の指摘の信ぴょう性は、介護事業者の倒産からも推しはかることができるかもしれません。東京商工リサーチが発表した「老人福祉・介護事業(2016年1〜9月)の倒産状況」によると、老人福祉・介護事業の倒産は77件でした。

東京商工リサーチによる老人福祉・介護事業の倒産 年次推移

このうち「通所・短期入所介護事業」の倒産件数は32件に上っています。前年の同時期を9件上回り、過去最多を更新しました。倒産した介護事業者の大半が小規模であり、競争が激化するなか、倒産を余儀なくされたと推測されます。もちろん、このデータが小規模デイの供給過多を証明するものとは一概には言えませんが、一考に値するものであるといえます。

地域包括ケアシステムのなかで存在意義が問われる小規模デイ

さらに、政府は地域包括ケアシステムを強力に推進するため、「小規模多機能型居宅介護施設」の普及促進を打ち出しています。「小規模多機能型居宅介護施設」とは、高齢者の体調や希望に合わせて通所、宿泊、訪問などのサービスを組み合わせて、住み慣れた自宅で継続して生活できるよう支援する施設のことです。

横浜市が実施している小規模多機能型居宅介護事業所整備促進事業

「小規模多機能型居宅介護施設」自宅での生活を年中無休で支援する施設であり、小規模デイの機能も一部兼ねているため、小規模多機能型居宅介護施設を増やすほうが地域包括ケアシステムの構築が進むと見られています。とはいえ、小規模デイにとって、これはまさに死活問題。報告書では、「一定の条件を満たす場合には、市町村が小規模デイの指定をしないことができる」と表現するに留めましたが、現状、2018年をめどに参入規制が導入される予定となっています。

市町村の関与をさらに高めるため、「市町村協議制」の実効性を確保

介護保険制度が2000年に創設されて以来、国によって在宅ケアが推進されてきました。その結果、介護事業者が増えすぎ、市町村のなかにはすでに供給過多になっているケースが問題視されています。前述した通り、地域包括ケアシステムの構築は市町村が中心となって行うもの。地域マネジメントを推進していく観点から、介護事業者に対し、保険者である市町村の関与を強めるというのが今回の趣旨です。

小規模デイの参入規制のほか、保険者である市町村の関与を後押しする案が登場。それが、現行の「市町村協議制」の実効性を高めようという動きです。先の図の通り、法改正後も都道府県は、「大規模型」および「通常規模型」のデイサービスの指定を行います。これらは、市町村が指定を行う「地域密着型サービス」ではありませんが、都道府県内の市町村で活動する介護事業者であるため、市町村が何かしらの形で関与できるようにすべきという声が上がっています。

現状、都道府県が行う居宅サービス事業者の指定に関し、市町村が関与する仕組みとして「市町村協議制」があります。定期巡回・随時対応型訪問介護看護や小規模型多機能型居宅介護を推進していく観点から、一定の条件を満たす場合に、市町村は都道府県の行う訪問介護、通所介護の指定について、都道府県に協議を求めることができるようになっています。

厚生労働省による地域密着型サービスにおける市町村協議制

とはいえ、実際に協議を実施したのは3市町村(2014年)にとどまっており、そのうち、実際に指定をしないこととしたのは1市町村に過ぎません。現行の「市町村協議制」は、実効性の低さが課題となっており、これが地域包括ケアシステム構築の障害になっていると考える向きもあります。

「運営推進会議」により地域住民などと連携を取る必要もある

法改正にともない、利用者やその家族、地域住民の代表者、市町村職員などで構成される「運営推進会議」をおおむね6か月に一度開催することが義務づけられました。年に2回とはいえ、マンパワーが十分でない小規模デイにとっては、大きな負担です。運営推進会議では、小規模デイから以下のことが報告されます。

  • 事業所の運営方針や特色
  • 運営状況(日々の活動内容、利用者の様子など)
  • 人員体制や人事異動に関すること
  • 地域住民やボランティア団体などとの連携・協力状況
  • 地域において開催された行事や活動への参加・協力状況

地域包括ケアシステムに位置づけられたことで、小規模デイは、こうした取り組みを行う必要に迫られています。

小規模デイの参入規制は、地域包括ケアシステム構築への序章に過ぎない

今回、介護費用の低減と地域包括ケアシステムの構築を目的に、小規模デイの参入規制が持ち上がったわけです。その流れのなかで、保険者である市町村の関与を強めようという動きが出てきました。今回は小規模デイが規制の対象となりましたが、政府が小規模多機能型居宅介護を本格的に推進するとなれば、ショートステイなどほかの形態も何らかの形で規制対象となる可能性もあります。

2025年をめどに地域包括ケアシステムの構築が進められている今、小規模デイの参入規制は、地域包括ケアシステム構築へ向けた政府の本気度の顕れかもしれません。今後もさまざまな施策が打ち出されるでしょう。介護事業者の実務にも関わるものだけに目が離せません。

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匿名 さん

みんなのコメント

  • 匿名 さん

行政が介護報酬で業界の事業をコントロールしている、医療業界でも遠い昔から「マイナス改定」が行われている。必要とされない医療機関は倒産している。
確かに小規模デイ事業所数が増えたけれど所詮小規模の定員は10人が殆どである。 普通規模と比べると3分の1以下。束になっても普通規模には敵わない。 小規模デイの規制には、ほかに目的が有るような気がしてならない。 キーワードは「人が足りない」だと思う。

2017/03/24 13:41 違反報告
  • 匿名 さん

小規模デイは確かに増えました。ただ、小さな地域では行政が地域包括ケアシステムを利用して、地域に根ざした小規模デイ(地域密着型通所介護)を利用することが必要と思います。例えば小規模デイが地域の拠点となるよう、乳幼児、子ども、障がい者、高齢者等総合的に支援できる事業所に移行させるとか。行政からの社会福祉協議会への補助金、助成金等を事業に合わせて色々な地域事業所に分配し、地域のために使用するというのは如何でしょうか? 実際総合的に福祉を行っている事業所も増えていると思いますが。

2017/02/28 20:02 違反報告
  • 匿名 さん

何だか見方を変えると介護保険制度って、特養など施設協会の儲けに合わせているような気がする。
小さな在宅サービスが増えると、特養入所者は伸び悩む。
そのいい例がお泊りデイ。
小規模多機能や特養の利用者を見事に取ったしね。
(特養入所者待ちの溢れた人たちだけど、あのままお泊りデイが増えたら特養不要論まで出たかもね。)

制度はいつも大規模の社会福祉法人の施設に合わせて制度変更してないかな?
だから本来強化するべき在宅サービスが二の次になる。
在宅、在宅と言っていながら施設サービスばかりがやり易い加算が付いていく。

このまま行くと、非課税で丸々太った社会福祉法人の一人勝ち制度の中、その法人の都合に合わせた地域包括ケアが地域に広まっていきそう。
以上でもなく、以下でもない。

そう考えると、発展も未来も無い。
在宅も無い中で、老衰を待つ身になりそう。

2017/01/31 19:30 違反報告
  • 匿名 さん

地域に福祉施設が多くなり、その地域を支えることができているなら社会福祉協議会が介護保険から徐々に撤退していった方が良いと思います。
また、社会福祉協議会の職員の給与は市町村に準じている?(準じていないところもあると思いますが・・・すみません)ため、介護報酬のほとんどが賃金として消えるのではないでしょうか(市町村の持ち出しも多くなるのでは・・・)。私の所在地では、行政が通所介護施設を社会福祉協議会に貸していますし、行政が修繕まで行っています。私たちの税金が使われているようで民間の事業所に申し訳ないような・・・何かおかしな話です。

2017/01/27 18:26 違反報告
  • 匿名 さん

小規模ディの倒産件数が77件というのは経産省の間違いです、もし地域抽出方式なら全国もその傾向と考えるのはあまりも愚かな状況だからです、ぜんこくの事業所にタックシールを送ってセミナーを開催している者なのですが、介護保険が入ってここ5年くらいはデイサービスへのご案内、グループホームへのご案内の中でご案内が多数帰ってきます。次回の講座のご案内ではその帰ってきた事業所は抜いてご案内するのですが、さらに多数帰ってきます。多くは倒産閉鎖事業所だと思います。愛知県の介護保険事業所一覧は倒産、停止している事業所が赤線と黄線で残されていますから、ちゃんと見てみるとその数の多さが解ると思います、ここでも経産省の再度の計算ミスが見えます、東大出身の高額所得者なのだからプライドを持ってちゃんと調査してデータを出していただきたいとおいもます。
また倒産の原因はデイサービスの飽和状態ではなく、小規模ケア特にNPO団体の経営基盤が不安定なのも原因の一つだと思います、退職金掛け金も、住宅、通勤その他手当などが支給できない事業が沢山有ります。これば介護報酬の低さが原因であり今に始まったことではなく慢性的に状態を作って、職員と事業所の貧困状態を作っり・・なんとその小規模事業所に依存してきたのは「国」なのだと思います。
また昨今の人材難雇用難は経済政策のミスとしか言えない状況。無計画なサコー住や有料老人ホームの乱立はさらにお年寄りの確保さえ難しいという状況を作り出しています。これも国の政策の失敗としか言えません。国民やお年寄りの方を見ないでデンマークやスゥエーデンの方ばかり見て同じ轍を踏んでいるとか思えません、つまりデイサービスが飽和状態なのではなく、粗悪な規制緩和が無責任に無計画に行われているからです。
またサコー住や有料また新規の地域包括事業や小規模デイサービスには儲け主義だけで参画のする事業所も増えているし、最も脅威なのは反社会団体が人の弱みに付け込んで震災や災害の地域に蔓延していることは脅威です。
このような報告や行状しい説明は国策の失敗を小規模型デイに押し付けて、安価な地域包括に逃げ込もうとする悪意に満ちた説明に聞こえてしまうのです。

2017/01/05 10:35 違反報告
  • 匿名 さん

大体、産めよ増やせよで、行政側が小規模デイを認可してきたのだから、その責任の所在は行政にある。
過剰供給で、総量規制というのは、実に本末転倒で先読みすら出来ていない証拠と言える。
だったら最初から、ある程度規制した形で認可をする事で良いのでは?
増え過ぎたから絞るというのは、事業者やその従業員が路頭に迷い、何よりも利用者が一番迷惑をする。
絞るというよりも、様子を見ながら徐々に事業者を増やす事が良いのでは?

2017/01/04 18:57 違反報告
  • 匿名 さん

正に失策を、現場に擦り付け。
平成18年の改正で老健局が言っていた言葉はなに?

新ゴールドプランで予定していた数値よりも、介護保険が始まって「2015年の高齢者介護」の認知症高齢者数を報告書見て慌てて平成16年頃から介護予防と合わせて小規模デイを勧めたんでしょ。

民家改築型デイサービスが増え、住み慣れた地域で安心して生活が出来るレールは思いの他コストが掛かってしまって、介護職員の給与問題も出始めた時期だよね。

その後、低い介護報酬の中利用者の囲い込み手段の一つにもなったお泊りデイ。これも一時期勧めようとしたよね。

結局は大規模でコストパホーマンスの良い、大規模施設じゃないと経営が難しいレールにしちゃったよね。

これからのレールが改正なら、平成18年の改正って本末転倒の改悪だったって事じゃないの?

こんな事していたら、これから労働者不足の中で益々尊厳が二の次の施設が増えていくんじゃない?
殺人が有ったサ高住の様に、そして介護業務にストレスを感じこれまた殺人事件と繋がった障がい者施設の様に。
その根本的理由が慢性的人手不足での介護職員のストレス。

国民・人間の生活を支えている制度とは言えない段階になってきているように感じる。
自宅での孤独死に慣れてしまうような近未来を感じる。

どの段階で誤りを認め、予算の在り方を考え直そうとするのか?
それとも、2042年のピークアウトまでこのまま突き進んでいくのか?

今いえる事は、介護保険を頼らない事。
自動車保険で考えるなら、介護保険は自賠責レベルまで成り下がるかも?
本当に必要な介護を受けたいのであれば民間の生保・損保がしている介護保険契約をした方がいいのかも?

なんか、そんな段階に入ろうとしているように感じてしまう。

2017/01/04 18:07 違反報告
  • 匿名 さん

 デイサービスは確かに増えました。
 でも、報酬が見込めないので潰れるところも出てきました。
 今後は安易な考えでデイサービスを始める方もいないでしょうよ。

 私は社会福祉協議会がデイサービスから撤退したら良いと思います。
 社会福祉協議会は、もっと違うところで、民間が手を出せない領域で地域福祉に貢献して頂きたい。
 訪問介護や通所介護は、もう民間企業で十分ですよー。
 居宅介護支援事業も、本当に中立な立場でプランが組めるでしょうしね。
 
 社会福祉協議会は、介護離職防止や地域連携やボランティア構築に向けて、真剣に取り組んでくれたらいいですよ。

2017/01/04 16:02 違反報告
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