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ニッポンの介護学

第132回 外国人介護士を受け入れた介護施設の約6割が「満足」と回答。経済連携協定(EPA)は介護人材不足の解決に有効な一手となる…のか!?

介護職員の人材不足に外国人を登用する経済連携協定(EPA)の影響について

超高齢社会に突入し、介護需要は高まるばかりです。こうした社会情勢に対応して、安倍政権が掲げた目標が「新三本の矢(第一の矢「希望生み出す強い経済」第二の矢「夢紡ぐ子育て支援」第三の矢「安心つながる社会保障」)。第三の矢「安心つながる社会保障」では、家族らの介護を理由に退職せざるを得ない、いわゆる「介護離職」をゼロにすべく、首都圏を中心に特別養護老人ホームをはじめとした介護施設の増設を図る方針です。

厚生労働省によると、特別養護老人ホームの入所待機者は約52万人(2013年度)おり、早期解消が求められています。介護施設の入所待機者が減れば、現役世代の介護負担が軽くなり、介護離職も自然と少なくなる、そういう理屈です。

しかし、ここで問題となるのが「介護人材の確保」です。特別養護老人ホームなどの介護施設が増設されても働く人がいなければ、この政策も意味がありません。

政府は、介護人材の確保を急ピッチで進める方針ですが、前途は多難。2025年には介護人材が253万人必要とされているものの、2013年時点での介護人材は171万人に過ぎず、今後10年で80万人もの増員が必要だからです。しかも今後、日本は人口減少に直面し、働き手の数が増える見込みは期待できません。

介護施設勤務だけでなく、訪問介護にも広がる外国人介護福祉士の就労先

こうしたなか、介護現場の深刻な人手不足解消の有効な手段として注目を集めているのが「外国人介護福祉士の活用」です。厚生労働省は2月末、2017年度より外国人介護福祉士の就労の場を介護施設だけでなく、訪問介護にも広げる方針を固めました。

現在は、特別養護老人ホームや介護老人保健施設といった介護施設のみでの就労しか認めていません。利用者宅で個別対応となる場面が多い訪問介護は、安全性に難があるとされてきましたが、介護福祉士試験合格者に限り解禁となります。

政府は2008年度より経済連携協定(EPA)に基づき、介護福祉士となり得る外国人(インドネシア人、フィリピン人(2008年〜)、ベトナム人(2012年〜))を受け入れてきました。受け入れ対象となる外国人は、現地の大学や看護学校などで看護に関する基礎知識を身に付け、日本語能力試験をパスした者です。なお、入国に際し、介護知識の習得は必須ではありません。

入国後は、「訪日後研修(日本語、介護導入研修等)」を受講し、介護施設で雇用契約に基づき就労、働きながら介護福祉士試験合格を目指します。昨年度は、インドネシアから約210人、フィリピンから約220人、ベトナムから約140人が来日しています。

受入れ人数の推移

入国年度 2015年度
インドネシア 受入れ希望人数 260
受入れ人数 212
フィリピン 受入れ希望人数 253
受入れ人数 218
ベトナム 受入れ希望人数 312
受入れ人数 138
受入れ希望人数合計 825
受入れ人数合計 568
出所:厚生労働省

滞在期間は5年間。5年目に介護福祉士試験に合格できなければ、一定の救済措置はあるものの、帰国を余儀なくされます。これまでにインドネシア、フィリピン、ベトナムから2,000人超が来日し、2014年度までに317人が合格しました。

介護福祉士試験合格者数の比較(2011年度入国者まで)

入国年度・国 合格者数
介護 インドネシア 2008年度入国 46
2009年度入国 82
2010年度入国 52
2011年度入国 34
フィリピン 2009年度入国 50
2010年度入国 32
2011年度入国 21
317
出所:厚生労働省

※ 2011年度以外は再受験を含めた累計

日本語の習得が壁であるものの、約7割の候補者は「日本で10年以上働き続けたい」

外国人介護福祉士候補者は、いったいどんな人で、どこで働いているのでしょうか。一般社団法人外国人看護師・介護福祉士支援協議会の「第4回EPA受入施設、看護師、介護福祉士候補者実態調査」の調査結果から勤務先を見ると、特別養護老人ホームが63.1%、老人保健施設が24.6%、病院が8.2%となっています。

年齢は、「26歳以上〜30歳以下」が44.1%、次いで「〜25歳以下」が23.6%でした。20代が大半を占めますが「36歳以上〜」も14.9%と約1割いました。性別は、女性が86.7%と圧倒的多数です。

彼らがEPAに応募した経緯は、興味深いものです。知人や家族に勧められて応募した人は3割ほどで、約半数は「インターネット等で調べて関係機関に問い合わせ」をしたと回答しています。つまり、積極的に情報を収集し自発性を持って、日本に来ていると推測されます。

「不安なことはありますか」という設問に対し、回答が集中したのは「国家試験に関する不安」と「日本語に関する不安」です。別の設問「あなたの今の日本語能力は、どれくらいですか」には、「日本語によるコミュニケーションが困難である」と回答した候補者が約1割おり、就労に際し日本語の習得が壁になっている様子がうかがえます。

とはいえ、約7割の回答者は、介護福祉士国家試験に合格をして、これからも10年以上は日本で仕事をしたいと考えており、今すぐにでも帰国をしたいという人はこの調査のなかではいませんでした。

EPAに基づく候補者として
日本に来たことに満足していますか
満足(40.5%)
どちらかといえば満足(31.3%)
どちらともいえない(25.6%)
どちらかといえば不満(1.0%)
不満(0%)
無回答(1.5%)
40.5%25.6%31.3%
出所:一般社団法人外国人看護師・介護福祉士支援協議会

この調査結果から判断するに、大多数の候補者は現状に満足しているようで、友人や家族にもEPAによる来日を勧めたいといいます。

友人や家族に、EPAに基づく看護師・介護福祉士候補者
として日本に来ることを勧めますか
勧める(47.2%)
どちらかといえば勧める(24.6%)
どちらともいえない(16.4%)
どちらかといえば勧めない(4.1%)
勧めない(4.6%)
無回答(3.1%)
47.2%16.4%24.6%
出所:一般社団法人外国人看護師・介護福祉士支援協議会

受け入れ施設側も「日本語能力」と「資格取得」を問題と捉えている

次に、受け入れ側である介護施設の現状を見ていきましょう。上記調査によると、施設が候補者を受け入れた理由は「国際親善」「人材確保」「将来の人材育成」などさまざま。調査結果から全般的に言えるのは、「満足度が高い」ということ。

約3割の施設は本人の健康や家族に関する理由で候補者が帰国する事態に直面していますが、「総合的にみて、EPA候補者を受け入れたことに満足していますか」という設問に対し、約6割が「満足」と回答(「満足」と「どちからといえば満足」の合計)しています。また、今後も外国人介護福祉士候補者を受け入れたいとする施設は約4割に達しました。

総合的にみて、EPA候補者を
受け入れたことに満足していますか
満足(20.4%)
どちらかといえば満足(38.8%)
どちらともいえない(29.6%)
どちらかといえば不満(6.1%)
不満(4.1%)
無回答(1.0%)
20.4%6.1%29.6%38.8%
出所:一般社団法人外国人看護師・介護福祉士支援協議会

しかし、ここでも問題となっているのが「日本語能力」と「資格取得」。日本語によるコミュニケーションが困難であるという施設は少ないものの、「会話は問題ないが、読み書きには不安がある」と約4割の施設が回答しています。

「資格取得」については、大半の施設が「期間内に取得して有資格者として勤務して欲しい」としていますが「取得して欲しいが無理だと思う」と突き放した回答も一部見られました。

垣間見える「本音」と「建前」。外国人介護福祉士の育成は「人材確保」の一環?

一般社団法人外国人看護師・介護福祉士支援協議会の実態調査を見ると、候補者と施設、両者ともEPAを前向きに捉え、満足度も高いようです。とはいえ、「日本語能力」や「資格取得」など解決すべき課題も見られました。

上述した通り、候補者の大半は現地で看護教育を受けているものの、介護教育は必須ではありません。これに対し、多くの施設は「少しでも介護の教育を受けてから来日してほしい」と望んでおり、制度上の不備が露見した形です。

さらに問題なのは、候補者に対する、政府と受け入れ施設の見解の相違です。政府は、EPAによる受け入れを「介護分野の労働力不足への対応ではなく、二国間の経済活動の連携の強化の観点から、公的な枠組みで特例的に行うものである」としています。言い分は理解できるのですが、「これでは通らない」と大多数の国民は考えるのではないでしょうか。

というのも、現状、施設側は外国人介護福祉士候補者の受け入れを「人材確保」「将来の人材育成」と捉えているからです(もちろん、「国際親善」という目的もあります)。EPAの趣旨と目的がかい離しすぎています。

EPAによる受け入れと混同しがちな制度に「外国人技能実習制度」があります。この制度は、開発途上国等における経済発展の担い手となる人材を育成し、先進国の技能を修得させる目的でつくられました。派遣先の多くは、水産加工場や農家で、人手不足が顕在化している業種。こちらも理屈はわかるのですが、「安い労働力として使いたい」というのが雇用する経営者の本音ではないでしょうか。

今後、EPAなどにさまざまな改善が加えられ、候補者が増えることも予想されます。そのとき、どんなことが起こるのか。今のところ、候補者が在籍している施設は多くありませんが、他人事として捉えるのではなく、動向を注視していく必要があるでしょう。

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匿名
匿名 さん

みんなのコメント

  • 匿名 さん

後進国であるけれど優秀な外国人の方が施設の業務をこなす場合、一緒に働く日本人のレベルが低かったら、優秀な方に精神的弊害が出てきそうです。
水は低きに流れると言いますから。

せめて介護職に従事する人達の卒業学校が偏差値50から55まであたりであってくれればと思います。
なにしろ重版を「じゅうばん」、静脈を「せいみゃく」と読んでる方の卒業学校を聞いて調べてみたら偏差値40でした。なんだかなあ、だ。

2016/04/18 15:31 違反報告
  • 匿名 さん

私もじゅうばん。せいみゃくと読みました。
読めない字なんて沢山ありますよ
自分がたまたま読めても他に読めない字はあるはずです
貴方もそれに遭遇して始めて知るばす自分もその程度なんだと。

ミヤンマー人の平均寿命は64〜65歳だそうです。
お年寄りの介護をすることは功徳に繋がると考える人が多くお年寄りを大切にする精神は日本人に勝るそうです。
日本に来て頑張ろうとする海外の人は優秀な人が多いです。
言葉の壁もすぐにとれるほどですがやはりどの国の人でも性格はそれぞれです。
性格が素直で優しく忍耐強い事が介護には最も望まれるイメージです。

2016/04/15 10:19 違反報告
  • 匿名 さん

経済連携協定に基づく受け入れ枠の要件を見ると、察するにインドネシアもフィリピンもベトナムも優秀な子が日本に来てるんじゃないの?って気になる。
大丈夫なのかなあ、日本の特養で働く若い子の中にはハロワで「兎に角介護の仕事なら仕事あるから」とか言われて介護業界来ました、とかいう子も多いんでしょ? 知ってる特養にも「静脈」を「せいみゃく」と読んだりする日本人スタッフいるし、最近のドラマの「重版」を「じゅうばん」とか言ってる子もいるんだよね。この日本人の子達の学力の低さは相当なものがあるよ。
そういう子達と働いてインドネシアとかフィリピンとかベトナムの子達、心が折れないかしら。心配だわ。

2016/04/13 12:46 違反報告

>彼らは時期が来れば、帰国するよ。

 むしろ、一定期間がすぎても送り出した人材が帰ってこず送った先の国(日本)に帰属してしまったら…EPAの送り元の国(インドネシア・フィリピン・ベトナム)が激怒するんじゃない?

 自国の教育機関で費用と時間を掛けて養育した貴重な”人財”が他国に一時的な貸し出しではなく流出するなんてことになったら、次からは送ってもらえないよ…

 

2016/04/10 19:30 違反報告
  • 匿名 さん

外国人介護士の受け入れには賛成なんだけど

>施設側は外国人介護福祉士候補者の受け入れを「人材確保」「将来の人材育成」と捉えているからです
施設側のこの認識は甘すぎると思う。
彼らは時期が来れば、帰国するよ。

2016/04/10 08:44 違反報告
  • 匿名 さん

インドネシアに旅行に行った時に、入国料として20万ルピアが要ります。
日本円にして、当時の為替レートでおおよそ2千円位。
つまり100分の1という事に成り、日本円はインドネシアでは100倍の価値に成るという事です。
日本で、10万円稼ぐと1千万円に相当することから、仕送りなどをする場合は満足度は高いかもしれません。
ただ、日本の物価で継続して暮らすことは、彼らが貰う報酬としては困難な状況であることは確かです。
ここの部分を衣食住に優遇措置を取ることで、より定着をした安定雇用が可能にはなるかもしれません。

2016/04/05 17:04 違反報告
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