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ニッポンの介護学

第200回 特養を建てるための土地を民間から借りられるように…規制緩和で52万人とも言われる入居待ち高齢者は減らせるのか!?

厚生労働省は2016年7月27日に、都市部に限って、特別養護老人ホームを民間からの土地貸与でも建てられるよう、要件の緩和を行うことを発表しました。これまで土地の貸与は安定供給の面から、社会福祉法人および地方公共団体からの貸与のみで運営されてきましたが、この緩和によって、52万人にのぼる特養の入居待機者の入所を促進させることが期待できます。

規制緩和の第一歩となるか。特養の建設が民間からの土地貸与で可能に

この施策は、安倍政権が掲げる「介護離職ゼロ」の実現に向けてのものです。同年6月に閣議決定した「ニッポン1億総活躍プラン」では、規制緩和を行い、都市部での施設整備を促進する方針が盛り込まれていました。特に都市部では、高齢化にともなって高齢者人口の増加が見込まれるからです。

高齢者の推移と未来推計

高齢化にともなう人口の増加によって、特に都市部では慢性的な施設不足に悩まされています。そんな都市部に限り設置要件の緩和を行うことで、より幅広く柔軟に土地を確保することができるようになりました。今までは国有地または都道府県の土地のみにしか建てられなかった、特別養護老人ホームの施設数の増加が期待できるでしょう。

都市部に建てることが可能となったのは、利用者にとっても歓迎すべきことでしょう。なぜならば、これまでは都市部以外の住み慣れた土地から離れた施設に入居せざるをえなかった人もいるからです。都市部であれば利便性が高く、首都圏に住む家族の家から近い施設で介護を受けることも可能となってくるでしょう。このような、利用者にとって便利になる規制緩和であれば推進していくべきです。

都市部に限定されているのは、国勢調査における人口集中地区であり、今後、高齢者人口の増加が見込まれる地域など、「特別養護老人ホームの需要が高いが、土地の取得が困難である」と認められる地域に限ってのことです。

    要件緩和の主な内容

  • 都市部地域であること(東京都、神奈川県、埼玉県、千葉県、愛知県、大阪府、兵庫県、福岡県
  • 入所施設を経営している社会福祉法人であること
  • 定員数が2分の1を超えないこと
  • 賃貸借期間が30年以上となること
  • 1000万円以上の資金があること

既設の社会福祉法人であれば、民間から土地を借りて特別養護老人ホームを建てることが可能となります。また、すでに運営している特養を建て替える場合や、建物の老朽化のために移転する場合などでも、民間から土地を借りて建てることができるようになります。このとき、資産の要件や賃貸借期間が30年以上などの要件は満たさなくてもよいことになりました。

特養が増えれば「介護離職ゼロ」も進む?

これまで社会福祉法人あるいは地方公共団体のみだった土地の工面が民間からも行えるようになったことで、介護業界はどう変わるのでしょうか。

まず、特養養護老人ホームの建設が一気に進むことが期待できます。これまでは土地の工面も大変でした。しかし、規制が一気に緩和され民間から賃貸借できるようになったことで、特別養護老人ホームの数が大幅に増えることが見込まれます。今回の規制緩和は、そうした要請に答えるための一面もあるでしょう。

もちろん、「ニッポン1億総活躍プラン」の中にも盛り込まれた提言であって、介護離職をゼロにするための施策でもあります。介護施設が不足していると、必然的に自宅で介護せざるをえず、職業との両立が不可能になって介護離職が起きてしまいます。

介護離職の推移

介護離職がいったん起きると、今の日本の労働慣行のもとでは、辞める前以上の給与が得られる仕事に復帰することは極めて困難です。働く能力のある人が、介護によるキャリア的ブランクのせいで仕事に復帰できず、生活保護になってしまえば国や地方自治体の負担も大きく増加してしまいます。だからといって、介護問題はもはや超高齢社会の日本で避けて通ることはできず、介護施設の増大と介護人員の確保は大きな課題となるでしょう。

団塊の世代が後期高齢者である75歳に突入する2025年まであと数年あるにもかかわらず、この不足状況なのですから、国も早期に規制を緩和して、介護施設を増やしたいと考えるのは自然な流れと言えるかもしれません。

介護施設を増やすだけでは人材不足を解消できない

一方で、介護施設で働く職員の数も不足している問題があります。2025年には、大幅な介護施設不足・介護人材不足が懸念されています。都心部では高齢者人口の増加にともなって介護のリソースが足りていないのが現状です。

2025年までにかかる介護人材需給推計

本当に「介護離職ゼロ」を実現するのであれば、施設の増加だけでは足りないのです。本格的な大介護時代はもう到来しつつあります。まずは箱モノである特養施設を大幅に増加させ、その後は、人的資源のリソースを増やしていくことが必要です。国は介護施設の規制緩和だけでなく人材不足を補わなくては、根本的な解決にはなりません。

まずは、介護報酬を十分にアップさせて介護職員の給与を安定かつ安心できる水準のものに引き上げることが重要です。今は介護報酬が介護保険制度に依存しているため、自由診療がきかず、各施設間での自由競争もはたらきません。

混合介護によって報酬アップが期待できる

事業者間の競争をはたらかせるためには、「混合介護」をはじめとした自費制度の導入も欠かせません。自費制度を導入して、施設・業者間にサービス競争を導入し、より質の高いサービスを高付加価値で受けられるようにすれば、介護職員の報酬も十分な水準までアップさせることができるでしょう。

そうした混合介護の規制緩和なども道筋が見えつつあります。混合介護によって介護報酬が高くなるだけでなく、介護サービスを受ける要介護者の側にも、高齢者が持つより幅広いニーズに答えてもらえるというメリットがあります。第147回「高齢者間の貯蓄格差は開く一方!?4,000万円以上の貯蓄がある高齢世帯が2割弱の一方で、「老後の貯蓄なし」が4割超え…」で述べたように、日本人がもつ資産の大部分が高齢者に偏っている現状を鑑みると、お金を持っている人が介護保険で限られた介護サービスを受けている現状はもったいないと言えます。

貯蓄高い別の世帯分布

お金を払うことができる人たちには、より介護サービスを自由に使ってもらい、介護を提供する側もより高報酬で介護サービスを行うことができるwin-winの関係になれるよう、規制緩和が求められています。

ここまで見てきたように、特養の土地を民間から借り入れできるようになったのは大介護時代を迎えるにあたっての大きな一手であり、介護業界の規制緩和に対する第一歩であるといえます。

介護保険の範囲内ですべてがまかなわれないため競争原理がはたらかないのでは、介護職員の給与は依然として低いままと言わざるをえないでしょう。特養の土地を民間から借りられることになったのを契機に、介護業界全体の規制を緩和することが、今の日本社会にとって求められていることではないでしょうか。

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匿名 さん

みんなのコメント

  • 匿名 さん

統合再編されて、廃校になった小中学校の後地などをうまく活用できれば良いと思う。
元々、国有地や各自治体の土地や施設なのですから。
ついでに、待機児童の施設なども併設すれば良い。

2017/01/17 22:29 違反報告
  • 匿名 さん

>施設が本当に人手不足ならなぜ56歳位で面接した人を年齢的に無理だと不採用にするのか?
年齢差別で傷つけ年寄り扱いするのも時代錯誤もはなはだしい。

人手不足というけど、頭数を募集しているのではないでしょ。
求められる業務を、理解し、判断でき、適切な所要時間で遂行する事ができ、かつそれらを週40時間継続的に仕事をし続けられる人材を募集するんですよね普通は。

確かに56歳でも経験も有り、ベテランで仕事も他の職員と同レベルでバリバリできる人も居るかもしれないけど、中には資格もなく経験すら内人も居るんですよね。
大抵後者の場合、数週間位で腰痛を訴える。(酷い場合は労災を訴えるケースもある) 体調不良を理由に休み、結果仕事にならない。
そういうケースも雇用側は心配するから採用しきれない。

今の介護報酬では数を雇用できないんですよね。
特に処遇改善加算なんかできたから、その加算部分は現職員に付けないといけない為、基本報酬内で人材に余裕を持つ様な余裕すらない状態。
この辺は人事が分かる人じゃないとわからないと思いますけど。
特に介護福祉士持っていないと加算すら取れない。
少数精鋭的な体制をしないといけないから、当然介護職の方一人一人に掛かる身体的負担も大きくなる。
腰痛などで長期間休まれたら、今いる職員が今以上の負担を負う結果となり最悪今いる職員さんに辞められたらもっと苦しくなるから、リスクを負えないんですよね・・・。

介護職員が全体的に増えない限り、そして人員的余裕を持てる介護報酬にならない限りは続きそうな気がします。

まぁ、今のままでは無理でしょうけど・・・。

2017/01/17 19:18 違反報告
  • 匿名 さん

給与が魅力的な施設であっても人は不足していると言うのに
誰もが内定するわけではありません。
55歳過ぎたら内定する確率は10件応募して1件ひっかかれば
まだ良い方です。

2017/01/17 11:19 違反報告
  • 匿名 さん

施設が本当に人手不足ならなぜ56歳位で面接した人を年齢的に無理だと不採用にするのか?
年齢差別で傷つけ年寄り扱いするのも時代錯誤もはなはだしい。

2017/01/17 11:13 違反報告
  • 匿名 さん

田舎には雑木林や田畑やら空いた土地は沢山ありますよ。
もう水田が出来なくなった高齢者は田んぼが荒れないように土が固くなって作付けができないようにならないように手入れはするけど
これも年齢的に困難になるし空き地は買い取って欲しいと個人的には思います。
うちは稲作の田を人に無償で貸付しているくらいなので買取してくれた方がまだ助かります。
田舎の土地は二束三文で買い取れます。

2017/01/17 11:01 違反報告
  • 匿名 さん

今ある福祉施設の介護職員不足を解決してから次の一手を考えて下さい。
人手不足という理由でネグレクト状態です。

2017/01/12 13:03 違反報告
  • 匿名 さん

大きな特養を作って、また中は電気の節電で薄暗かったり暖房代ケチって寒かったり、というふうにするんですかね。

箱モノばかり作って、職員はいなくてって。

で、また無駄で膨大な経費に社会保障費使われて。

2017/01/12 10:42 違反報告
  • 匿名 さん

規制緩和という割には、諸条件は依然として厳しいと言える。
例えば民間の土地を30年以上に渡り貸与をしてくれるような所は、そうそう無い。
入所施設を経営は、社会福祉法人であることなど。
これら条件の根拠が良く判りません。
それと一番言いたいのは、もういい加減に社会福祉法人はその役割をとうに終えているので、古い制度は変えて行かなければなりません。

2017/01/11 22:56 違反報告
  • 匿名 さん

恐らく問題は入居者ではなく、建築なんでしょうね。
族議員が喜びそう。

特養の場合、空間整備助成金や交付金使って立てるんだろうから建築業界にパイプが残る地方議員は裏で動けるだろうし、社会福祉法人の理事長している地方議員も喜ぶわな・・・。

権力持っている地方議員なら県議会などで整備計画が分かるから、場合によっては親族等に土地を買わせ、そこに誘致活動する事も出来るだろうし。

大きな金が動く事を情報持って事前に動ける立場にとっては濡れ手に粟。
箱さえ建てば金が動く。
悪いのは行政って事で責任転嫁も出来る。

介護職員なんてどうでもいいんでしょうね。
困った人間が集まれば、話を聞く顔すれば票も集まるから。
国レベルの利権よりも、地方レベルの利権が強く出ているように感じるな。

2017/01/11 19:13 違反報告

 何も分かっていませんね。必要なのは「介護施設」ではなく、まずは「介護職員」がいなければ稼働しないでしょう。政府はそんなことも分からないのですか。実は分かっていながら何もしないように感じます。

 介護人材不足はどうするのでしょう。外国人ですか。今の待遇じゃ定着しませんから。

 事業者間の競争させて企業体力を無くすのでしょうか。きちんと運営している小さな業者が倒産して、悪徳業者が生き残るようでは本末転倒です。

2017/01/11 17:53 違反報告
  • 匿名 さん

へぇ〜。
特養作りました。介護職が集まりません。
と、ならなければ良いのですが。
もしかして、今後は求職者が殺到するほどの高待遇の時代がくるんですか。
私の勤務する特養は365日、介護職を募集しております。
総務課長曰く、「これ以上の給料は出せない」らしく、今後開設される特養は介護職を揃えらえる程の給料なのでしょうか。
魅力的な給料なら、採用面接を受けたい。

2017/01/11 17:18 違反報告
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